第?話 柴関ラーメンの看板娘
やっほ。私だよ。超不死身異世界系健康美少女主人公の私なんだよ!
何処かのハッカーさんみたいな自分語りになったけど、そこは気にしないで。よく会う人の口癖が移っただけだから。
さて、謎の声さんたちが気にしてるのは、この世界に来てからの私についてだよね?わかってるわかってる。説明するからもう少し待っててね。今は絶賛お仕事の最中だから。
頭の中に現れた謎の声に一言告げると、私は目の前の扉をノックした。中から足音が近づいてくるのを確認すると、片手で簡単に髪を直して身だしなみを整える。
そのタイミングで扉が開くと、中からは女の子が一人顔を出した。私と同じ、頭に天使の輪っかを付けた女の子。
「お待たせしました!柴関ラーメンで〜す!」
ニコッと笑いながら、私は手にした
見ての通り、私はこの世界で自分探しをしながら、出前サービスのお仕事をしてる。学園都市、キヴォトスって言う世界でね。
---------------
「ふんふんふふ〜ん。ふんふふ〜〜ん」
出前を終えた私はルンルン気分で帰宅中。行きと違って帰りは
「こんにちわ。今日も配達ご苦労様ね」
「よぉ!またラーメン注文するからな!」
「この後雨になるかも知れないよ。折りたたみの傘は持ってるかい?」
石畳の舗装された道を歩いてると、周りの人たちから声を掛けられる。この辺だと私はそこそこ名前が知られてる。神出鬼没の出前サービス、柴関ラーメンの看板娘とは私のことなんだよ?
……ん?それよりも気になることがある?何かな、謎の声さん??
頭に響く声に耳を傾けると、自然と視線が誘導されて、街行く人たちの背中や腕に視線が向く。あぁ、なるほどね。謎の声さんが気になるのはみんなが手にしてる『銃』についてだね。
街の女の子たちは大きさに違いはあるけど、なかなかに物騒な物を手にしてる。小銃や爆弾。中にはロケット砲を背負ってる子もいるね。
私も初めて見た時は驚いたよ。街に二足歩行の犬や猫、意志を持ったロボットが出歩いてること以上にビックリしたもん。
どんな殺伐とした世界に来たのかと慌てたけど、別にそんなことは無かった。この世界の人たちは、みんな当たり前みたいに銃を持ってるよ。コンビニで手軽に買えるくらいには自然なことみたい。
それに所構わず野蛮な行為がされてるわけじゃないよ。ちょっと裏路地の奥まで進むとガラの悪い人たちに絡まれることもあるけどね。ここは案外平和な世界だと思うよ!
「……おい、お前。ちょっとツラかしてくれよ?」
あ、言ってる側からヤバぁな展開になったかも。背中に硬い物が当てられてる。チラッと振り返ったけど、銃口が当てられてるね。私の信用が揺らぐから秒でフラグを回収しないでほしい。
いつの間にか私の周りにヘルメットを被った人たちが数人囲むようにして立ってる。ちょうど人がいなくなったタイミングで絡まれたみたい。
私は誘導されるままに、人気が無い裏路地に連れ込まれちゃった。あぁ、早くもバイオレンスに呑み込まれそうだよ〜
---------------
「わかってるとは思うが、財布の中身を全部寄越しな?」
やだな〜。せっかく脳内で楽しく会話してたのに、少し気を抜いたら背中に銃口からの裏路地コースだもん。この世界、キヴォトスってやっぱり殺伐とした怖い世界かも(ガクブル)
ヘルメットにゴーグル、それにマスクをしたチンピラたちにメンチ切られてる。おぅおぅ!って感じでね。顎で刺されるってこんな感じなのかな?(知らない)
さっき空に逃げても良かったんだけど、銃口当てられたままだと、この人も巻き込んで一緒に空へ移動させそうだったから出来なかった。今ならどうかと思ったけど、見上げると屋根とか電線が邪魔で無理そう。路地に連れ込まれたのは不味かったね。
「な〜にシカトしてんだ?舐めてるとマジで撃っちまうぞ!?」
一人がズカズカと前に出てきて私の顎の下から拳銃を突きつけてきた。うぐ、ちょっと気道を阻害してきて苦しいかも。この体はそこそこ頑丈だけど、今は不死身じゃないから撃たれると痛いし苦しいからやめてほしい。
顎下をグリグリされて
う〜ん。柴関ラーメンの大将にも、危ない目に遭ったら余計なことはせずにお金を渡して穏便に済ませなさいって言われてるし、ここはそうすることにしよう。それに、あんまり長引かせてると『あの子』が来てまた大暴れしそうだし……。
私はチンピラたちに抵抗しないことと、お金を渡すから酷いことはしないでほしいってお願いした。向こうも無駄に弾を使いたくないみたいで、ちょろい奴だ。みたいな顔で私が財布を取り出すのを眺めてる。でも、銃口は相変わらず私に向いてるし、いつ撃たれて痛い思いをするかわからないのはちょっと怖いね。
「ほらッ!チンタラしてないで、さっさと出しなよ!!」
ひぃん!わかったから、そんなに大声出さないで。この体は脅されるのに慣れてないのか頻繁に変な声が出ちゃうんだから〜
私は諦めてポケットから財布を出そうと渋々手を伸ばす。………でも、突然頭の上から大きな銃声が響いて、その手が止まった。
「うわっ!?」
「ぎゃあ!!」
私の正面に立つチンピラリーダーの背後。そこにいた数人の取り巻きチンピラが一斉に倒れた。あぁ、やっぱり来ちゃった。私が危なくなると、すかさず現れる正義の味方……。
「くそッ!上からか!?」
チンピラのリーダーはマシンガンを頭上に乱射する。その考えの通り、奇襲してきた相手は屋根にいた。でも、その弾は掠ることもなく対象は素早い身のこなしであっという間に地面に飛び降りた。
すかさず次のマガジンに切り替えようとしたチンピラさんだけど、相手が瞬時に間合いに飛び込んできた上に、ショットガンをゼロ距離からお腹に撃ち込んできた。うわぁ〜すごく痛そう………。
素っ頓狂な声を上げて大きく吹っ飛んだチンピラさんは、先にやられた取り巻きたちの上にドシャっと重なって倒れ込んだ。その衝撃でノックアウトされた取り巻きたちの目が覚めたみたい。リーダーがKOされたのを察したのか、のびてる彼女を抱えてスタコラサッサと逃げていった。ふぅ、売り上げを取られずに済んで良かったよ〜
「………何してるんですか?」
あ、私がため息を吐いたタイミングで助けてくれた子が振り返った。桃色のショートカットに左右非対称の色をした瞳の女の子。怒ってるみたいだね。実はつい先日にも同じような場面に遭遇してて、その時にも助けられたばっかりだったりする。この体は不幸体質なのかな?面倒ごとが次々に飛び込んでくるんだけれど?
「あれほど言いましたよね!?出前の時は行きも帰りも安全に『瞬間移動』を使うようにって!!」
さっきのチンピラと同じようにズカズカと私の前に進んできた。私よりもずっと背が低いのに圧がすごい。チンピラの比じゃない。鋭い目付きがなんだか獰猛な鷹に見えるかも。
「聞いてるんですか?まったく、あなたと言う人は、あの時も………」
………あれ?急に黙っちゃった。返事をしないから本当に怒っちゃったのかも。だとしたらヤバぁだね。厄介ごとに巻き込まれたのは私の注意不足が原因だし、ここはちゃんと謝らないと!
「えへへ、ごめんね。ホシノさん。また助けてもらっちゃって」
「いえ、良いんです。ユメ先……、
……あ、この流れは良くないかも。ホシノさんまた泣いちゃうかも。初めて会った時みたいなことはもう最近ないけど、今でも時々溢れるみたいに泣いちゃうことがあるからその流れだ!
ホシノさんに泣かれるとすごく動揺しちゃうんだよね。私は不死身の純白幼女だけど、今はこの体───梔子ユメさんの体に居候してる訳だし、きっとユメさんの体がホシノさんに泣かれることを拒絶してるんだと思う。
私に背中を向けて俯いてるホシノさん。そっと側に寄り添って、その頭を優しく抱き寄せてみる。泣かないでの意味を込めて、イーソイーソ。と、違う世界で仲良くなった男の子に教わった大鷲を宥める呪文を唱えながら頭を撫でて……。
しばらくの間、裏路地に立ったまま頭を撫で続けてあげた。その間、泣き声は聞こえてなかったけど、ホシノさんが私から離れた後、私の服には少しだけ涙の跡が付いていた。
この世界はキヴォトス。何気ない日常で、ほんの少しの奇跡を見つける為の場所。そんな世界で、今日もラーメンを出前する