姉がVになりまして。   作:大妖怪おたま

1 / 1
プロローグ

 平成が終わり、令和の時代。ネットは普及し、スマホは子供から大人までが生活の必需品となった時代。文明の発展と共に、人と時代は今日も歩を進める。個人から企業まで幅広くの人々がネットの海に情報を流し、新たな可能性が日々生まれ続ける。

 

 

 世はまさに、ネットの大航海時代!!

 

 

 

 

 

 

 

 気が付けば令和も五年を過ぎた頃、青年は今日も配信サイトを巡回する。

 七海陽彩(ななみひいろ)は生粋のV推しであった。

 

「いやぁ~今日の【船主】も良かったぁ...」

 

 ヘッドホンを頭から外し、陽彩は溜息を漏らす。終わったリアルタイム配信の余韻に浸りつつ、次の配信スケジュールをチェック。スマホを弄りカレンダー機能への入力を済ませ、通帳の残高を見つめる。

 月末、給料が振り込まれて半月弱。気が付けばスパチャに溶けて消えていた。

 

「マズいな、コレはマジでヤバい。」

 

 目をそらしていた現実に引き戻され、頭を抱える。計画性がないとか、そういう次元を超えて本当にマズい。生活できるかの死活問題にパソコンの前で項垂れる。

 そもそもの発端は給料日直後だった推しのバースデー配信。その後の雑談ゲーム配信、ASMR配信。食事に行ったらお金を払うが如く、買い物をしたら精算するが如く、配信視聴にスパチャする。その癖で気が付けば半月持たずに破産する。いい加減に現実を見据えたい所ではあるが、推し無くして生活なしを座右の銘に掲げる青年にとって投げ銭こそ人生。

 

 

 陽彩は考えるのをやめた...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻。 

 

 配信を終えた【船主】こと七海柚希(ななみゆずき)は鼻歌交じりに本日の成果を確認していた。

 

「うわっ、同接人数負けてる...」

 

 同業他社との比較に少しだけ落胆し、ページを閉じた。

 ここ最近、同接人数は減りスパチャ額もメンバーカーストになりつつある。この現状を打開するための一手を考えなければ先はない。

 とはいえ誰か話せる相手が居る訳もなく、柚希は思案する。子供のころの夢だった芸能界を諦め、ずっと続けてきた営業職。過酷な環境に嫌気がさしてやめ、偶々手にした配信業。Vtuber黎明期、無名時代の毎日配信に努力の末の登録者数100万人。ようやく波が来ているハズなのに、後追い連中に徐々に抜かれ始めている。早く次の一手を模索しなければ、この世界でも居場所が無くなってしまう。

 それはマズい。家族にお金を借りて買ったPCに、配信機材。防音素材も高かった。まだ半分しか返してないのに、こんな所で躓いている暇はない。

 

「次の配信はサプライズでコラボ企画?いや、まだ弱い...もっと誰もが見たがる内容、テレビでやる様なネタは即切りされる。何か、何か新しい策を練らないと...」

 

 

 目を閉じ、柚希は思考する。

 

「いっそ顔バレ配信とか、ASMRで過激なの行っとくか?...いやいや、それヤったらアウトだわ。でもメン限なら1チャン有り?」

 

 

 柚希はデスクに頭をぶつけた。

 

「馬鹿な事考えるな、私!」

 

 邪念を払い、柚希は椅子を立った。

 

「まずは、次配信被らない様に時間調整しよう。ついでに他メン呼べる子誘ってぶっちゃけ裏トークとか...」

 

 

 スマホを弄り、柚希は布団へと倒れた。

 

 

「とりあえず、一旦寝るか...」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。