教師「可愛い教え子たちから失望されたいンゴねぇ……せや!」   作:羽虫の唄

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デュエプレで5000GTが全然来てくれないので初投稿です。



評価・感想・お気に入り、ありがとうございます。


(|)「我がアビスの属性は『闇』ッ!」

「失望されたい」

 

 

 妙ちきりんな発言をするのは1人の男。

 名を、ボン()ルドと言う。

 

 彼の呼び名は実に様々だ。

 その腕前からレガリアの申し子と呼ばれることもあれば、勝利の女神に愛された者、なんて呼ばれたこともある。

 

 

「ただ運が良いだけなんですよね」

 

 

 誰もが憧れ、誰をも並び立たせない、生ける伝説の決闘者(レガリスト)

 しかしその実態は、恐ろしく運が良いだけの人間であった。

 

 欲しいカードが欲しい時に手元に訪れる。試しに組んだデッキが偶々相手のメタとなってしまう。「おもしれーなこのコンボ」と思った組み合わせが、実は世紀の大発見レベルだったり……などなど。

 

 伝説と謳われようとも、本人としてはただただ運が良い『だけ』である。物心が付いた……レガリアを始めたその時から、等身大の自分を見られない、周囲の認識とのズレからくるストレスによって、その精神は、ある時から1つの願望を抱く様になっていた。

 

 

「……失望されたい」

 

 

 本当は大したことなどないのだ。伝説と呼ばれる様な存在とは程遠い、ちっぽけな、どこにでも居る、それだけの存在なのだ──。

 

 

「ふむ」

 

 

 試しに思考を巡らせてみる。

 

 実際の実力が知れ渡り、今までに築き上げられた、不当な──言い方はあれだが──地位や評価が全て崩れ去り、人々から落胆の視線を向けられる、自身の様を。

 

 

「…──ちょっと興奮しますね」

 

 

 男の精神は既に限界を迎えていた。

 もうダメかも分からんね。

 

 

「失望をされたい……。しかし、それをするにはどうすれば…」

 

 

 レガリアで態と手を抜いたり、意味不明なプレイングをするのは、既に試したことがある上、寧ろ悪手である。

 

 誰が見ても分かる様に手を抜けば、対戦相手が激昂するどころか「まだ自分は貴方と戦うレベルには至っていない──そう言うことですね」とか言い出して何かを悟ったかの様に突然負けを認めたかと思えば、周りも周りで「当然」みたいな反応をとっていたのを見て、頭を抱えたのは記憶に新しい。

 

 では逆に、ふざけたプレイングをしたらどうなるか。

 必要な時に必要なカードを出さず、要らない時に要らない呪文を発動する。そんなことを繰り返していたら、結果としてそれが相手のプレイの妨害に繋がり勝利してしまったのだ。

 

 

『まさか、初めからこうなることを読んで──!?』

 

『馬鹿なっ。未来が見えているとでも言うのか!?』

 

 

 ……あの時の。対戦相手と見物人の反応は軽くトラウマになっていたりする。

 

 

「もうこんなの呪いじゃないですか……。…ん、呪い?」

 

 

 溜め息を吐き出すボンボルドは、ふと、その単語をきっかけに何かを思い出したらしく、近場の棚を漁り始めた。

 

 

「そうでしたそうでした。えぇっと、確かこの辺りに──ああ、ありました」

 

 

 取り出したのは、幾つかの紙束である。

 

 古い時代の書物の蒐集を趣味にしているある友人が、ちょっと怪しい目つきで「読んでみろ、トぶぞ」と勧めて来た代物だ。

 

 

「気分転換に、読んでみましょうか。えぇとタイトルは──メイドインアビス…ですか」

 

 

 ぺらり、と。紙を捲る音が静かに響く。

 

 

 

 

 

 ▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 自身の人生を振り返った時、男は語るだろう。

 間違いなくこここそが、転機であったと。

 

 

 

 

 

 ▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 さて、数時間後。ある程度、書物を読み進めた男は──。

 

 

「ぷ、プルシュカァアア!!!」

 

 

 脳にちょっと異常をきたしていた。

 

 

「よくもミーティを。よくもプルシュカを。よくも子供たちを! 度し難い。度し難過ぎるぞ、ボンドルドぉ!!」

 

 

 自身と一字違いの名前の男。

 登場したかと思えば、目を背けたくなる所業を繰り返し、こちらの精神をゴリゴリ削っていきやがった。

 

 あれは人では無い。偶々人の皮を被って生まれた、異形である!

 

 

「な、なんと恐ろしい。何を思えば、この様な存在を生み出せると言うのですか…?」

 

 

 その問いかけに答えられる者は居ない。

 居るとすれば、それはつ◯し卿だけであろう。

 

 数日……いや。数週間は()()()となって残るであろう存在に、すっかりと意気消沈の様子となるボンボルド。

 

 もう今日は何もする気になれない。寝てしまおう。そう考えて、寝巻きへと着替えようとした彼は──

 

 

「………」

 

 

 置いた書物をふと手に取り、ペラペラと捲る。

 捲る。捲る。捲り、

 

 

「──あれ。この方を真似れば良いのでは……?」

 

 

 それは、正しく天啓であった。

 

 失望されたいと言う、奇妙奇天烈なその願望。

 生半可な行動は、却って逆効果となる。

 ならば、そう。極めて至極、()()()()行動を取れば──!!

 

 

「そうか。私に足りなかったのは、度し難さだったのですね……っ!」

 

 

 その様相は側から見れば狂人のそれだが、当の本人からすれば、砂漠を彷徨い歩いた果てに、遂にオアシスへ辿り着いたと同等の感動だったのだ。

 

 自身と一字違いの、架空の存在・ボンドルド。

 この人物を模倣し生きることこそが、己の願いを成就させることなのだと、ボンボルドは理解する。

 

 

「しかし、とは言っても。まさか人体実験を行う訳にもいきませんし……」

 

 

 天啓は得たが、さてどうするか。『度し難さ』を人々に思わせる手は何かないものか。

 そう思考を巡らせていたボンボルドは、何かを閃いた様子で自宅を駆け回り、暫くし、両手一杯に分厚い資料を抱えて戻って来た。資料の正体は、レガリアの歴史と、今現在確認出来ている、全てのカードの図鑑である。

 

 

「203、203ページ…。──あった、『闇属性』!」

 

 

 レガリアは、幾つかの『属性』でカードを分けることが可能である。

 

 生命の象徴であり、LP(ライフポイント)の補充やモンスターの〈復活〉などの能力に長ける火属性や、深く広大な海での生存競争を表し、単純なPP(パワーポイント)の高さ、その強化効果に長けた水属性、などだ。

 

 ──その中の1つ、闇属性。

 

 そのルーツは、遠い過去、どこからか現れた侵略者たちの恐ろしき力であるとされ、忌避され、唾棄すべきものと認識されている。

 

 基本的な能力は、モンスターの破壊や相手手札を墓地へ送る妨害行為。その他にも、自陣のモンスターすらも破壊して利用する為、悍ましいとされ、この属性を利用する人間は殆ど居ない。

 

 

「〝苗床の少女〟。──効果は、召喚時に種族:パラサイトを持つモンスターをデッキから……手札にある場合は、このカードを素体に召喚、ですか。…──おお、なんと。なんと素晴らしい……!」

 

 

 他の属性ではまず考えられない効果の数々。犠牲を前提としたデッキ構成を強いられるカードたち。

 迫害され、悪とされてきた闇属性。これらを扱えば、それこそ正に、メイドインアビスに登場した、ボンドルドそのものとなれるだろう。

 

 

「…作戦は決まりました。早速、明日から──いえ、今から行動するとしましょう」

 

 

 分厚い幾つもの冊子に、一通り目を通し終えた彼は、居ても立っても居られない様子で行動を開始した。やらねばならないことは多い。即断即決。それを体現するかの様である。

 

 

「先ずは──そう。特注になってしまいますが、服と仮面を至急作らねば。この時間に開いている仕立て屋となると……」

 

 

 彼は形から入るタイプであった。

 

 

 

 

 

 ▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

「おはようございますボンボルド先生……何がどうしたのですか、その格好は」

 

 

 そこはスビアと言う名の学園であり、「レガリアを学ぶのならばスビアだろう」と言われる程の名門である。

 

 その学園の職員室にて。今し方、入室者に挨拶をしたのは、トウテツと言う名の男性であった。灰銀の髪を短く切り揃えた、筋骨隆々の彼の視線の先に立つのは、なんと言うかこう、不審者極まり無い人物である。

 

 色調を統一された、仮面とスーツ。背には、カードやデッキを保管・運搬する為のカートリッジが幾つか備わっており、どことなく重苦しい印象を受けた。

 

 

「おはようございます、トウテツ先生。この格好についてはお気になさらず。ちょっとしたイメチェンとでも思って下さい」

 

「は、はあ。それはまた、随分と思い切りましたな」

 

 

 何か細工がされているのだろうか。頭部をすっぽりと覆っているにも関わらず、彼の声はよく通った。反響音こそするものの、それもそこそこなもので、余り気になることはない。

 

 

「おざーっす。って、うわぁ不審者!」

 

「不審者ではありませんよ。私です、ボンボルドです。心外ですね」

 

 

 続けて入室して来たのは、赤い髪を腰まで伸ばした、眼鏡をかけた女性だった。

 名を、フウラン。トウテツやボンボルドと同じく、ここ、スビアにて教師を務める人物である。

 

 

「どうしたんすか、ソレ」

 

「少し、イメージチェンジをと思いまして」

 

「さ、さいで」

 

 

 普段の落ち着いた格好からは、到底想像出来ない今のボンボルドの格好に、トウテツと似た様な反応となるフウラン。

 

 

「──そう言えば、今日でしたね。()の生徒が来るのって」

 

「ああ、()()…」

 

 

 どんな心境の変化が起きればこうなると言うのか。今日、あれなら飲みに誘って聞いてみよう──そんな考えを巡らせていたフウランは、今はあまり触れないで置こうと、別の話題を振ることにした。

 

 そうして彼女の言葉に続いたのは、トウテツの呟く様な声。

 両者の反応は、居心地の悪そうな、どこか暗さの感じられるものであった。「ボン先生はどう思います?」とフウランが話をふると、しかし当の本人は、

 

 

「……はい。はい? すみません、どうかいたしましたか?」

 

「え、えーと。ホラ、今日、新しく来る転入生居るじやないっすか。先生的にはどうなんかなーって」

 

「転入生──ああ。そう言えば、今日でしたか」

 

 

 すっかり忘れていた、と言いたげに、仮面の頬にあたる部分に指を走らせるボンボルド。そんな彼の様子を見て、トウテツとフウランの2人は、言葉を交わした。

 小さく、こそっと。

 

 

「…(どうしてしまったんだろうか、ボンボルドさんは)」

 

「…(変……っすよね。格好もすけど、どこか浮ついてるっつーか)」

 

 

 訝しげな2人分の視線の先。そこに居る男は、確かに、どこか浮ついた雰囲気がある。

 それこそ放っておけば、その内に、鼻歌でも歌い出しそうな様子だ。




ちょっと長くなっちゃったので前後編に。続きは今日中に投稿予定です。
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