教師「可愛い教え子たちから失望されたいンゴねぇ……せや!」   作:羽虫の唄

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エアプボンドルド過ぎてオールマイトみたいになってしまったので初投稿です。


あとすみません、後編ではなく中編になってしまいました。


(|)「アービッビッビッ! ハンデスに苦しむ姿は可愛いですねェ!!」

 ──男の名前はボン()ルド。

 

 凄腕の決闘者(レガリスト)にして、勝利の女神に愛された、今なおレガリアの歴史を進め続けている、文字通りの生ける伝説──表向きはそうなっている──である。

 

 

「なんと、なんと──っ!」

 

 

 発する声は震えていた。

 それはつまり、彼が。ボンボルドが、涙を流して嗚咽を漏らしていることを意味している。

 

 ──人々に失望され、ハリボテの評価を脱ぎ捨て去り、等身大の自分を知ってもらいたい。

 

 その願望を叶える為、男はある計画を立てる。それは、とある『度し難い存在』を模倣し、禁忌とされている闇属性のカードを扱う……文字に起こせばそれだけの、簡素な作戦だ。

 

 しかして、その効果は絶大である。

 

 ドローフェイズを終了し、モンスターの召喚や呪文の発動・エリアカードの展開を行う、コールフェイズ。そこで初めて露見する、闇属性のカードと、それをふんだんに使用した、闇のデッキ。

 

 生ける伝説のレガリスト。彼のプレイを一目見ようと周囲を囲っていた少年少女たちは、召喚されたその漆黒のカードに悲鳴を上げた。

 叫び、恐れ、忌避する。

 

 誰も彼もが、召喚された1枚のカードに──その召喚を行った人物に、視線を注ぎ続けていた。

 

 その者の名はボンボルド──()()()()

 

 

(どっ。どうしてこうなった!?)

 

 

 仮面に隠されたその中で、彼は小さく悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

 ▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

(──どうしてこうなっちゃったんだろう)

 

 

 小柄な体躯に、2つのおさげ。

 少女の名前はアルハンブラ。この日、レガリアの名門・スビアへとやって来た、うら若き、レガリストである。

 

 場所は、広大なスビアの敷地を、大胆に使って建てられた、巨大なリング状の決闘場。その内の1つ。

 

 スビアは基本的な方針として、年齢や学術でのクラス分けを行っていない。

 

 その生徒がどの様なプレイングを理想とするか。どんなデッキ構造を至高と考えるか。どんなカードの組み合わせを。どんな種族を、属性を、効果を──それらを突き詰めつつ、実際に、教師やそのクラスの生徒のレガリアの腕前を見学・体験するのが、転入生の歓迎後の恒例らしい。

 

 本日入学となったアルハンブラも、例外では無い。

 一通りの校舎の説明と案内を終え、案内を行なっていた教師・ボンボルドの合図を皮切りに、他の入学生たちは一斉に駆け出すと、皆、思い思いに目を付けた人物に、決闘を申し込んで行った。

 

 

「──どうされましたか。もしや、どこか具合でも悪いのでしょうか? でしたら医務室へとお連れしましょう。申し訳ありません、気付くことが出来ませんでした」

 

 

 他の転入生と異なり、俯き加減でその場から動こうとしない彼女に、声をかける人物が現れる。

 ヘンテコ仮面男、ボンボルドだ。

 

 

「あ、い、いえっ! そういうわけでは、ないんです、けど……」

 

 

 慌てて答える。

 尻すぼみな声に、ボンボルドは、ふむと呟いてから。

 

 

「──どうでしょう。私と一戦、よろしければ」

 

「えぇっ!?」

 

 

 突然の申し出に驚いたのは、アルハンブラだ。

 生ける伝説と呼ばれている存在からの、直々な対戦のお誘いである。驚かない方がおかしい。

 

 

「あ、あのっ。えっと、あの、私あの、デッキがっ。ええと、あうぅ……!?」

 

「デッキの構築に不安がおありですか? では、実際にバトルをして動きを確かめて見ましょう。丁度、私も確かめてみたいデッキがありまして」

 

「そっ! そんな、()()ボンボルドを、デッキの試運転にだなんて、そんな…っ! い、いやそうじゃなくて! あの私、わたっ、カードが! カード、が……う、うぅ」

 

 

 少女が、誰かに声をかけるのが苦手だったんだろうと判断し、自らバトルを申し出た、ボンボルド。

 

 そうではなく、何か事情があるらしいアルハンブラは説明をしようとするものの、ボンボルドがバトルをすることを察知したらしい周囲の生徒が声を上げたことで、遮られてしまう。

 

 

『おい! あの転入生、ボンボルド先生とレガリアやるっぽいぞ!』

 

『まじ!? 相当な自信家だな!』

 

『えー、どんなデッキ使うんだろー!』

 

(うう、人が集まって……!?)

 

 

 終ぞ、話す機会を得られなかったアルハンブラ。

 

 既に対面に立つボンボルドは準備を済ましており……もうどうしようもないと、半ば、自暴自棄な調子で彼女もデッキを取り出した。

 

 シャッフルをしてから、それを目前に。

 

 差し出されたそれは、発生した()()によってやや右上側に固定されると、次いで、LP分の10枚を上から捲り、それが左手側へ配置。最後に、手札分の5枚が手元へ運ばれて──準備完了である。

 

 

「コイントス。──先攻は、アルハンブラさんですね。ご自由に、お好きなタイミングで構いませんよ」

 

 

 その声に、彼女は。

 

 

「…──わたっ、私はぁっ! …手札から、〝低級霊・ホロ〟を召喚──っ!!」

 

 

 

低級霊・ホロ
属性:闇 種族:ゴースト

分類:召喚 PP:1000

▪︎このモンスターは攻撃を行えない。

 

▪︎このモンスターがバトルゾーンに出た時、若しくは、他の自分の、名前に〝霊〟・種族に「ゴースト」と無いモンスターがバトルゾーンに出た時、このモンスターを〈憑依〉させても良い。

 

▪︎〈憑依〉

対象のモンスターにこのモンスターのPPを+し、更にLPのブレイク数を+1する。(〈憑依〉した対象のモンスターが破壊された時、このモンスターも破壊された扱いとなる)

 

 

 

 

 

 ▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 ──悲鳴に似たどよめきが直後、辺りに広がった。

 

 

『な……っ、闇属性のカードだって!?』

 

『使ってる人、初めて見た……』

 

『馬鹿な。「闇」は禁忌とされている属性だぞ──?!』

 

 

 召喚されたのは、ぷかぷかと浮かぶ、タオルケットの塊の様な小さなモンスター。

 だが、それでも闇は闇。ホロから──アルハンブラから後退り、距離を取った彼ら彼女らが、思い思いに言葉を。無遠慮に、言い放っていく。

 

 

「馬鹿な──何を考えているんだ!」

 

 

 怒気を孕んだ声の主は、トウテツ。ドーナツ状になった人のその中心で、肩を震わして俯いている少女の様子に、彼は怒りを露わにする。

 

 事前に、話はあったのだ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()により。……よりにもよって、禁忌である闇属性のカードを手にしてしまった少女が転入する、と。

 

 ──神からの贈り物として現れたそれは、言わば自身の魂と結び付いた、運命の1枚。人は、その1枚を使わなければならない──使()()()()()()()()()()

 

 それが、少女・アルハンブラは。誰もが唾棄する、闇属性のカードだったのだ。

 

 彼女が今までに受けてきたであろう迫害は、想像に難くなく、きっと、そんな想像より遥かに辛く、苦痛に塗れていた筈。

 

 にも関わらず。

 あの男は、ボンボルドは。なんて残酷なことを──!

 

 

「──待ってくださいっす、トウテツ先生」

 

「……止めないでいただきたい、フウラン先生。こんなことは、如何に伝説と称される者であったとしても、到底許されることではない! こんなもの、公開処刑と同義ではないか!」

 

 

 横合いから伸びた華奢な腕。トウテツは、自身に待ったをかけたフウランを睨み、声を荒げた。

 その気迫は、悪鬼もかくやと言うほど。しかしながら彼女は、怒髪天のトウテツに怯むことなく、続ける。

 

 

「や、ここは様子見と行きましょう。お相手は、()()ボンボルドっす。伊達や酔狂で、人は伝説にはなれねっすよ」

 

 

 

 

 

 ▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

(ばっ、馬鹿なッ。私の完璧な作戦がァあああッ!!?)

 

 

 ──蛇蝎の如く嫌われている闇属性をドーンっ。それでみんながワーっ。えー、あの人闇属性使うのー? からの、評価がズドンガターンっ。

 

 ……そんな、不本意極まり無いが、生ける伝説と評される男の恐るべき頭脳が導き出した、ウルトラパーフェクトな計画は、風に舞う、砂塵の如き儚さで瓦解した。

 

 ──あー。なんかそう言えばこの前の職員会議の議事録に闇属性がどーたらこーたらの生徒が居るってあったけなー、黎明卿の真似と闇属性のデッキ構成に浮かれてすっかり忘れてたなー、と。

 

 ……そんな思考を巡らせても。全ては、正しく後の祭り。

 

 今ここで、ボンボルドが闇属性の──それも、()()()()()()()()()調整されたデッキを披露することで、何が起きるのか。

 

 それは想像に容易い。

 

 ……きっと、目前の少女を庇う様に映ることだろう。守る様に、覆い隠す様に、(たす)ける様に映るのだろう。

 しなくとも、彼には分かった。なんやかんやが巻き起こり、自身の意図しない結果へと、自然に結びつくのだ。断言出来る。だって、彼は今の今までそれに遭って生きて来たのだから。

 

 

(嗚呼、嫌だ。私は、失望をされたいのに──)

 

 

 きっとそうなれば、また新たに、自身の株が上がり、向けられる人々の評価が爆上がりするのは、確実だ。

 

 

(失望されたい)

 

 

 いつの頃からか強く思う様になった、その願い。

 ……だが。

 

 

(…──それは。今目の前で。泣いて苦しんでいる少女を、見殺しにしてまで手にしたいものではないんですよ)

 

 

 深く、長く。誰にも聞こえない溜め息を吐き出してから、彼は──伝説は、動く。

 

 

 

 

 

 ▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

「なんと──素晴らしい。素晴らしいですよ、アルハンブラ!」

 

「……え?」

 

 

 突然。

 

 ボンボルドが、感嘆の声を上げ、その場に居た全員の視線が、そちらに向けられた。

 

 

「素晴らしい。実に素晴らしい。闇属性のカードを扱うだなんて。実に──」

 

「何を、言って…?」

 

「…ああ。年甲斐もなくはしゃいでしまいました。申し訳ありません。…アルハンブラ。貴方はきっと、闇属性のカードを手にしていることによって、辛い思いをして来たのでしょう」

 

 

 一呼吸挟み、続ける。

 

 

「ですが、もう大丈夫。それも、終わりです」

 

「──ど、どうして。そんなこと、が。言えるんですか?」

 

 

 声は震えていた。アルハンブラの両目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。

 闇属性カードを持っていた、故に彼女が受けた迫害の苦しみを、ボンボルドは想像することは出来ても、完全に理解することは出来ない。

 

 彼の言葉は、何も知らないのに、知ったふりをしている者の、軽率極まりない言葉だ。

 

 だけれど。

 

 何故だろうか。

 彼の、「大丈夫」と言う言葉は。

 

 世界一根拠の無い──けれど。

 世界一、信じられる言葉だった。

 

 

「…──私は常日頃より考えていました。禁忌とし、誰もが忌避する闇のカードたち。それらを使った時。一体、どの様なコンボが生み出されるのでしょうか、と」

 

 

 ──呼び名の1つ、「新しきボンボルド」。

 常に研究を続け、その止まることを知らない探究心(こうきしん)によって、レガリアの歴史を、1人で何十年と進めて来た男。

 

 彼は語る。

 

 

「私が闇属性のカードを扱い、世に広める……()()()()()()()()()()。『ボンボルドだから扱える』・『ボンボルドならば問題ない』──その様な認識を人々が持つ。それでは何も変わりません」

 

 

 ですので、と。一呼吸挟み、

 

 

「闇属性は禁忌である──世界共通のその認識を変えるのは。未だ暗く、一寸の先も見えない闇夜に、夜明けをもたらすのは、アルハンブラ。私ではなく、貴方の様な人間でなければならないのです」

 

「そ、んな…。私には…」

 

「私1人では、とてもとても……。──どうか、力を貸してくれませんか」

 

「──出来ま、せん。私に、は。そんな、こと…」

 

 

 即答だった。

 日差しに溶けて消えるだけの雪の様な声に、「出来ますよ」と。ボンボルドは、迷うことなく返した。

 

 どうして。

 アルハンブラが、問う。

 そして。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ──それは、どれだけの勇気を必要としたのだろうか。

 

 誰もが忌避し、禁忌とする属性。闇。

 祝福によって、彼女が得たその1枚は、そんな闇属性の内の1つであった。故に、彼女は迫害され、辛い過去を経験することになってしまう。

 

 それでもなお。祝福とは名ばかり、呪い同然のその1枚を見限ることは無く。彼女はこの日、多くの人間が見ている前で召喚して見せた!

 

 

「…──祝福と呼ばれる現象があります。どの様な人間であろうと、祝福によって得たカードを手放すことは出来ません。そのカードを主軸に、レガリアを()()()()()()()()()()。……貴方もそうだったんでしょう、アルハンブラ」

 

「は、はい……っ」

 

「迫害され、虐げられてきてなお。それでも、()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()

 

「──はい…っ!」

 

 

 それは、レガリストであれば。祝福を受けた全ての人間が抱える欲求。

 

 アルハンブラもそうだった。

 迫害を受け、傷つけられ。

 

 まるで、呪いそのものの様な、この闇のカード。

 このカードと一緒に、レガリアをやりたかった。勝ちたかった。喜びたかった。

 

 ()()()()()、彼女はこの場に立っている。全てを乗り越えて。

 

 

「──さあ。これ以上は野暮というものです。後は、バトルで語るとしましょう。アルハンブラ、貴方のレガリアを魅せて下さい」

 

「はいっ。…はい!」

 

 

 両者が構えを取る。

 言葉は不要だ。改めて、2人は宣言の為に声を張り上げた。

 

 

「「──デュエル!」」

 




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