プロローグ:運命の特異点
「紛争はおろか、世界全部が滅ぶと言ったら………お前たちはどうする?」
いきなり画面に現れた男は、突拍子のないことを呟いた。
「………随分とふざけた話だな。世界が滅ぶなど、作り話にしては三流以下だ」
男の台詞に、紫の髪をした眼鏡の青年は言った。
「でもさっき僕たちが戦ったの……あれは明らかに僕たちの世界のではないようにも見えた」
「だからと言って、それが世界が滅ぶかどうとか関わるわけがないだろう」
前髪が伸びた青年は、眼鏡の青年をなだめるように呟いた。
画面の男は、眼鏡の青年の態度を見て不満げな表情を浮かべる。
しかし―――――茶髪の伊達男は端末を見て呟いた。
「………どうやら、そうとは限らない話になって来たぞ」
端末に映っているものには、正体不明の生命体による襲撃が各地域で発生しているとの大々的に取り上げていた。
どこの所属にも属さない生命体は、紛争まみれの歪んだ世界を関係なく蹂躙するように―――人類を駆逐していた。
無慈悲に、残酷に、淘汰していた。
「…………この正体不明の生命体は、倒せるのか」
少年は問う。
「私たちと協力すればな」
画面の男は言った。
そうかとつぶやき、少年は一呼吸おいて見つめる。
「――――――いいなその目。せっかくだから名前を聞いてやる」
少年は他の三人に目線を移した後、画面の男に宣言した。
「刹那」
「刹那・F・セイエイだ」
——————————————————
銀髪の少女は、ホテル近くのカフェで朝ご飯を食べていた。
西洋風のモーニングプレートも丁寧に切り分け、頬張っていく姿は、まるでハムスターかのようだ。
「ん~~~~!三日ぶりのまともな朝食は身に染みるわ~~~~~」
モーニングプレートをおいしそうに食べる銀髪の少女を見て、赤毛の青年はため息をついた。
「おめぇまたごはんをまともに食っていなかったのかよ……また開発にでも手を付けているのか?杏理咲」
「それもあるし~~~新しい技術論文の添削が来たからそれを修正していた!ほら、霧ちゃんには言ってる電磁魔力による汎用戦術機の機動力向上及び―――」
「馬鹿か。ここでべらべらしゃべるなって、あとフォークは人に指すな」
「はーい……てか霧ちゃん全然食べてないじゃん!早く食べないと杏理咲ちゃんが横とるぞ?」
仙波杏理咲は、反対側の席に座っていた衛宮霧仁に額をデコピンされた。
おそらく霧仁が頼んだ朝食のごはんがいまいちだったからだろうか、あまり食指が進んでいない。しかし杏理咲が霧仁のプレートのベーコンを取ろうとしたら、反対側のベーコンを霧仁のフォークが抑えた。
霧仁も完全に食指が進んでいない、というわけではなさそうだ。
「ぐぬぬぬ……あっ」
―――――ふと、霧仁の反対側の席から視線を感じた。
癖のある赤い髪を結び、黒いスーツを身にまとった男がこちらに視線を向けていた。おそらく自分の声が大きくてうるさかっただろう、口元で自分たちのことを言っているようにも見えた。
「………おい杏理咲、食うならとっととしろ」
「え、いいの!?」
「ただし半分だ」
「どケチ!」
――――先ほどの視線は、無駄だったようだ。