機動なる銃器に花束を   作:神埼梨花

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一話:歪んだ世界でも笑う君

「そういえば、明日葉達はどこにいたっけ?」

「今は作戦会議中だ。連中と接触するかについて……だな。幸い余計な前降りもあったお陰で少しばかり円滑に進めているのが幸いってもんだよ」

霧仁の言葉を聞き流して、杏理咲はオレンジジュースを飲みながらタブレット端末を広げていた。

タブレット端末の画面には正体不明の生命体による侵攻や、生命体による被害など物騒な話がでかでかと載っている。

しかし、杏理咲達はこの生命体には何も動じなかった。むしろどうすればいいのかと考えあぐねていた。

三つに分かれた世界で、下手に動いたら大事になるのは目に見えている。

十三階段と十二門徒―――――二つの勢力のいがみ合いを中立の立場で見ていたのもあり、この世界のシビアさがひしひしと感じる。

 

───東京都内では最先端の技術が学べるとして有名な中央工匠技術学舎。工学技術やプログラミング教育だけではなく、機械兵装や魔導工学なる杏理咲達の世界にしかない事も学べる。それに___ここで言うガンダムと類似する大型ロボットだって存在している。

 

魔法と科学が融合したなんでもありな世界。

しかしそこは楽園ではなく――――きれいな皮を被った地獄。

滅びを目論む者がいて、常に世界の危機は訪れている。

 

そんな世界の厄介者が、この世界に来てるということだ。

 

―――――その事実を憂うようにため息をついて杏理咲は呟いた。

「とはいえ......いきなり実戦配備とかちょっといきなりすぎるよー...」

「仕方がねーだろ。あの戦術機兵はおめーのモンに近いだろ」

「違うよー!霧ちゃん!」

杏理咲はニュース画面をオフにして、大型ロボットの設計図と難しいプログラミング用語等が書かれた画面に切り替える。

「確かにあの戦術機兵の内部構造やらなにやらは私が設定したんだけど〜設計や構造自体はクラウゼ社のヤツだからぁ〜実質企業案件で産まれた産物なんですよ〜。

地方の自衛隊でも汎用戦術機兵が使えるように回路設計とか魔力配線の配列系統とかやっただけですって〜。私が指さしてるココだけ」

「言われてもわかるか」

気だるげそうに話す杏理咲を見て霧仁は呆れたようにため息をついた。

汎用戦術機兵の根本的仕組みは機械に疎い霧仁でも頭の片隅にはある。

大型魔獣などに対抗できる、戦闘機と同等の火力と馬力を持つ人型戦闘戦車____それだけしか彼には分からない。

技術学舎最高の工学士とも言われる仙波杏理咲と付き合うようになってからはある程度構造的なものも覚えたとはいえ、未だに分からずじまい。

でも―――――確かに言えることはある。

 

無邪気な子どものように語る杏理咲は、陽だまりのように暖かいということ。

機械に疎い霧仁でも、つられて笑ってしまうような笑顔。

 

「………とはいえ、少し声のボリュームは落とせ。配慮してると思うがさすがに聞かれたら―――――」

 

「少しいいですか?」

 

二人の席に、一人の男が話しかけてきた。

霧仁は呆れたようなため息を吐いた。しかし杏理咲はその男の方に視線を向ける。

 

「あっ……!!さすがに声が大きかったですか……?」

 

「いえ、そういう訳ではなくて………」

男は笑みを浮かべた。霧仁は彼の言葉を聞くな否や視線を向ける。

癖のある赤い髪に翡翠色の瞳。皴のない黒いスーツは、不気味すぎるほど整っていて―――――。

「不躾ながら、貴方達の話を小耳に挟んでいましてね……戦術機兵、という言葉が気になり話しかけたまでです。お邪魔でしたか?」

「いえいえ!そんなことはありません!!えーーーっとお名前は……」

「あ、失礼しました………私はこういうものでして」

 

そうして男は杏理咲に名刺を渡し、杏理咲も男に名刺を渡した。

「中央工匠……技術学舎に在籍の――――仙波杏理咲、さんですね」

筆記体の文字で書かれた名刺を受け取り、彼女はすかさずタブレットで翻訳をした。

そして―――名前と顔を一致させるために、杏理咲は彼の顔の方に視線を向ける。

 

 

 

「……AEUフランス―――第4独立外人、騎兵連隊………ゲイリー・ビアッジ………さん?」

 

 

首をかしげる杏理咲に、男は端正な微笑みを浮かべた。

「ええ―――――以後、お見知りおきを」

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