―――馬鹿で単純そうなガキ。
仙波杏理咲の第一印象は極めて単純だった。
名前からして日本人ではあると分かるが、短い銀髪にターコイズを埋め込んだようなくもりない瞳は、ゲイリー・ビアッジ………もといアリー・アル・サーシェスが知る日本人の見た目とは大きくかけ離れている。
それに中央工匠技術学舎という聞きなれない名前。学校と思しき機関の名前に見えるが―――深追いは無用だと、彼は判断した。
「こっちは私のパートナーの――――」
「衛宮霧仁だ。あいにく名刺は持ってねぇ」
「おや。そうでしたか……」
衛宮霧仁と名乗る赤毛の青年は訝しげにゲイリーと名乗る男を見つめた。
先ほどの会話から察するに
――――――勘のいいガキは嫌いだ。
――――――ならこのガキをどうやって消そうか。
適当に仙波杏理咲をそそのかして利用する方が良さげか。
彼女が言う戦術機兵とやらで、この女の前で、嬲り殺してやろうか。
我ながら歪んだ思惑に思わず口角が上がりそうになる。しかし社交的かつ物腰柔らかなゲイリー・ビアッジを崩させまいと、仙波杏理咲の長ったらしい戯言を聞き流した。
「それで……仙波さんは仰っていた戦術機兵というのはどのようなもので……」
「あ、それに興味がおありですか?」
「えぇ。ちなみにお二人はおいくつでしょうか?」
「私は17歳です!11月11日のポッキーの日に―――――」
「そこまで聞いてないだろうが……俺もこいつと同じ17だ」
本題に入る前振りで年齢を聞いてみたが―――――正直驚いた。例のソレスタル
クルジスの少年兵の瞳が鋭利なナイフであるならば、彼女の瞳は曇りのない宝石のようだ。
うっとおしいほど眩しくて、呆れるほどに輝いている。
だがそんなきらびやかなものが壊れるときほど―――愉悦感に浸れるものはない。
だがここで食いついてはいけない、焦ってしまっては赤毛の少年に怪しまれる―――慎重にゲイリーは話した。
「そうでしたか……では今現在での現状はさすがに把握できて―――」
「正直言って、ちょっと無理がありますねー……」
今までのおちゃらけた態度からうって変わり、杏理咲の目の色が少しだけ真剣さをはらませた。
「そもそもあの生命体……便宜上『未確認機械生命体』と称しましょうか。その生命体の根本的原理はまったくもって違うんですよ。私が研究テーマに持ち上げている物質を自生する事が出来てる……研究テーマはさすがに言えませんが、正直言って、そちら側が所有しているモビルスーツでは太刀打ちできません………でも手段はあるんです」
そういい杏理咲はタブレットの画面をゲイリーに見せる。例の戦術機兵の画像―――ではなく、長ったらしい論文の中身だった。
『未確認機械生命体の対策プレゼン!』―――いかにもなタイトルだったが、ざっと見るだけでとても筋か通っている内容だった。
これにはアリー・アル・サーシェスも想定外で、ただふざけている訳ではないことが分かる。文章の内容もだが、ちゃんとビジネスとして通用できるほど中身がしっかりしていて―――。
[異次元生命体の存在証明]・[電磁魔力の発生原理]―――など理解できない内容ではあったが。
「各国も未確認機械生命体にうんざりしているはずです。なんと今なら――――!」
大げさすぎるリアクションは、小さいタブレット端末からなった通知音で遮られた。
杏理咲はわかりやすく驚いた表情を浮かべ「電話にでてくる!」といって去っていった。
「………随分と感情表現が豊かなお嬢さんですね。ですが驚きました、我々でも太刀打ちできないような生命体の対策方法も思案しているなんて、とんでもない逸材―――――――――」
「それは違うな」
先ほどまで沈黙を貫いていた霧仁が呟いた。
「てめぇ――――杏理咲を馬鹿なガキとか思ってるだろ」
そこで彼は気づいた。今まで黙っていたのではなく。
衛宮霧仁の視線は―――――ゲイリー・ビアッジという