「それでは、所定どおり最終確認として会議を執り行います」
「あ、その前に一分だけ時間をください。灰になった杏理咲をザオリクしてきます」
望月明日葉は奥に行き、椅子に座って真っ白に燃え尽きたようにうなだれた仙波杏理咲の方に駆け付けた。
先ほどのゲイリー・ビアッジとの対面の事で、霧仁にこっぴどく叱られたのだろう。杏理咲本人は本題に取り入れていないから大丈夫だと言ったものの、彼は彼女の言い訳を生き入れず厳重に注意して、最後には拳骨を食らわせた。
いくら自分の技術に誇りがあるからとはいえ、声を大にしていう話題ではない。
そして明日葉に引きずられて何とか気を元に戻した杏理咲もプロジェクターの前に座る。
杏理咲の隣にいたアリアドネ・キャルト・k・グローセはうなだれる彼女の方を見て、霧仁の隣にいたロジーナ・バッカニアはそっぽを向いた彼の方を見た。
「………まぁ彼女のことはさておき、最終確認として会議を改めて執り行います」
凛とした声が照明の落とされた部屋に響く。
しなやかな黒髪を持つ長身の男が慣れたノートPCを操作しプロジェクターに世界地図を映し出した。映し出された地図には赤いバツ印が多く書かれている。その中でも米国は特に多く……ある一点に集合するように襲来しているのがわかる。
「………この印が今回の特異点の正体、ですよね」
「はい……現時点において《未確認機械生命体》の発生場所とその数はご覧の通り――――従来の生命体では想像もつかない範囲拡大です」
『Unidentified Mechanical Organism』―――――和訳すると『未確認機械生命体』
『
その尋常ならざる正体不明の生命体は、世界的に被害を出しながらその身を潜めたり、移動をしたりを繰り返しているようだ。
「まるでありきたりなSFの展開であります……」
戦刃壱理は背負っている学生鞄をぎゅっと抱きかかえる。
そんな壱理の様子を見て、明日葉は大丈夫と声をかけた。
幸いにもUMOに対する対策は練られており、急遽の対応を迫られながらも準備を推し進め、最終調整段階にまで至った。
「技術顧問三名、モビルスーツの再現型と戦術機兵二機の具合は如何ですか」
「既に三機はいつでも発進させられますが、あと一機の戦術機兵は最終調整段階です」
「統括主任が作った再現型太陽炉も問題なさそうです」
「そこまで出来上がっているとは、無理を押し付けたのによく遂行をしてくれました、感謝します」
技術顧問の
その様子に黒髪の男は表情を柔らかくしてから、すぐさま引き締める。
未確認機械生命体は従来品の航空機用のレーダーにも、当然ソナーにも引っかかることはない。どうやら肉体の機械部位から現状研究段階の《電磁魔力》を発生させることでレーダー電波を無効化させるという非常に厄介な性質を有していた。
だからこそ、彼ら専用のレーダーを作成しなければならなかったが如何せんあまり時間が無い――――それゆえ未完成だということだ。
だが幸いにも、レーダー製造の手立てはある。それに協力者の交渉も着々と進んでいる。
「ジャック・ベルドッド、彼から連絡は?」
「ついさっき接触をしたらしい、これから交渉に入るとの事だ」
ジャック・ベルドッドと呼ばれた男は淡々と答えるが、どこか苛苛としているように見える。
そんな彼の正面に座る鞘師遊麻も、なにかを考えているのかその瞳はどこか遠くを眺めているようだ。
まるで自分を睨むような瞳を、ベルドッドはよく思わなかった。
「それにしても公安四課の副課長様がわざわざ来るなんざ、何か企んでるとしか思えねぇがな」
「…私はあくまで壱理の護衛よ、それに……あの『東京革命組合』のツートップが来てるなら私がいてもおかしくないんじゃ無いかしら?」
「はっ、俺たちを捕まえるのに痛手を負ったあんたがよく言う――――」
会議机を、杖で一度叩く音がした。
「………遊麻。これが終わってからになさい」
鞘師燈火の一言も相まって、二人は言葉を継ぐんだ。
「話はそれましたが………現状の状況を踏まえてみてもそろそろ第一段階に入る頃合いと見ました、ソレスタルビーイングのトレミーとこちらの研究所を『鍵』で繋げコンタクトを取った後に第一段階を始動します、異論は」
「戦刃分家を代表して、鞘師燈火からは異論はありません」
「中央工匠技術学舎を代表して、望月明日葉からも異論はありません」
「東京革命組合からも異論はなしだ」
「では、作戦方針を踏まえ各自行動に移ってください。燻は同席できなかったハイドと雨露淵に、ジャック・ベルドッドはカルマに内容を伝えておいてください」
各々がそれぞれの行動に移る中、王たる紫炎は何かを見据えるように目を細める。
この世界の癌を、オーバーテクノロジーで満ちた世界に問いかけた。
「さて、この世界はどう動く」