機動なる銃器に花束を   作:神埼梨花

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七話:悪魔の取引

思えば、カルマと出会ったのは何気ない偶然だった。

自分から話しかけたのか、カルマから話しかけられたのか……だが関わっていくうちに、意気投合したのは覚えている。

 

息をするように人を騙すカルマ、息をするように悪逆を尽くすアリー・アル・サーシェス。

 

―――犯した罪の方向性は違えど、犯罪者同士惹かれあったのかもしれない。

 

だが―――――鞘師遊麻という女が現れてから、何かが変わった。

 

手を組んで彼女を拉致し、徹底的に叩くことまではまだよかった。そもそもカルマが鞘師遊麻を好きにしていいと言ったから、彼女を徹底的に蹂躙しただけ。

傷つけて、殴り、そして―――――彼女の尊厳を破壊するかの如く凌辱した。

首を絞め、痕をつけ、少女から大人にさせるための行為としては人形を床に叩きつけるように乱暴な行為。

 

だがそこから、カルマはアリー・アル・サーシェスに対してよそよそしくなった。

態度もどこか冷たくなった気もした。

 

一体どこから違えたのだろうか。そもそも好きにしてもいいと言ったのは彼なのでは。

考えても考えても、彼の本心は掴めずじまいで終わった。 

執着ではない、かといって惚れているわけでもない。

ただの同族意識で親近感を抱いているというのに――――――――。

 

 

薄寂れたアリー・アル・サーシェスの部屋のベットに座るカルマ。ネクタイを緩め、結んだ髪を解いた彼は呆れるように呟いた。

「どういう手のひら返しだ?あんときは何も言わずに出て行っちまったと思えば、ビジネス持ち込んできやがって………」

「冷たいなぁ……そもそも悪魔というのは気まぐれなものだけどね」

「気まぐれの次元じゃねぇぞ……まぁいいさ、悪魔の取引に応じてやるだけでも感謝しろよ」

椅子に座って足を組んだサーシェスは、カルマの方を見つめる。

おそらくは今話題になっている正体不明の生命体―――――先ほどの少女の言葉を借りるなら機械生命体(・・・・・)とやらに関することなのだろうか。

彼としてもソレスタルビーイング(なんとか)のせいで狂った予定に拍車をかけた疫病神と戦えるのは万々歳だ。そもそもこの悪魔から何でもありな世界(異能世界)の話は聞いてはいる……彼らの世界の代物なら、対策がないわけではないだろう。

 

カルマはふとカルマは少女が持っていたタブレット端末よりは一回り小さい物を取り出し、ある映像を見せた。

 

―――――モビルスーツにも匹敵する体躯をした銀色の生き物、そしてそれと戦うモビルスーツ………ユニオンの機体にも見える。

その映像は下手なスナップフィルムよりも残酷で、一方的に機体が蹂躙されている様子だった。

 

―――――腹の底から湧き上がる愉悦に、笑みがこぼれそうになる。

―――――世界が侵略戦争(インベーダーゲーム)に巻き込まれそうになり、アリー・アル・サーシェスの周りの環境も滅茶苦茶になっているのに。

―――――一方的な暴力に、機体が駆逐されているのを見て。

―――――憐れみと嘲笑にも似た笑みが零れて仕方がない。

 

そしてその途中でカルマは映像を止めた。

「確かこれの個体名は――アルギュロスってさ。知らないけど。まぁとりあえず……勘のいいアリーなら察してると思うけど………これと戦争してくれるぅ?」

「これを含めた……の間違いだろうが」

「さっすがアリー!勘がいい~」

「そこまで言うもんなら、勝ち筋はあるんだろうな」

「もちろん!実をいうとこっちの世界にもモビルスーツみたいなのはあるんだよねー。名前は戦術機兵ってなってるけど」

戦術機兵……脳裏で仙波杏理咲が言っていたことを思い出す。長ったらしく前置きみたいなことをぺらぺらと何とか喋っていたのは覚えている。

「…仙波杏理咲が言ってたことか」

「あ、いつの間に会ったんだ」

「付き添いの男に追い出されたけどな……」

「たしかそのお嬢ちゃんが一機作ったとか何とか言ってたけどー……」

けらけら笑いながらしゃべるカルマを見て、サーシェスは呟いた。

「だがあのガキは嫌いじゃなかったぜ」

「へぇ………どこが?」

「ああいうガキはメシの種になるからな」

サーシェスは口角を上げながらつぶやいた。

 

アリー・アル・サーシェスは戦争屋だ。人間の原始的な感情で動く最悪の人間が、世界を救うヒーローというのには興味がない。

―――だが散々場を引っ掻き回したその生き物にストレスをぶつけるのも……悪くはない。

「正義の味方になるつもりはないが――――

――――この戦争、乗ったぜ」

その言葉を待ってたと言わんばかりに、カルマは意気揚々としてベットから立ち上がる。

しかし――――サーシェスには、まだ聞きたいことがあった。

自分が壊した、女の所在を

 

「最後に一ついいか…………あの女は来てるのか?」

 

その言葉を聞いた途端、カルマの気配が不穏なものに変わる。

「……………来てるよぉ?」

「……………そうかい」

「………興味ないなら、不正入手した連絡先いらないよね?捨ててもいい?」

「何かに使うかもしれねえからよこせ」

 

そういいカルマは、サーシェスの方を向かず。公安の女の連絡先を受け取る。

 

 

―――――――薄汚れた部屋で、スーツの女を徹底的に痛めつけた。

―――――――女の強情な瞳に、得も言われぬ醜い感情と破壊欲が沸き起こり、彼女を凌辱した。

―――――――あの強情な瞳が絶望に揺らぐのは耐え難いほど愉悦だった。

―――――――泣き叫びもせず、必死に理性を保とうとしていたが。

―――――――暴力的な快楽を知ったからには、もう戻れないだろう。

―――――――あぁ、あの女を壊してしまいたい!

―――――――犯して、辱めて、膝をつかせ、蹂躙してやりたい!

 

 

二行の文章が書かれた紙を見て、戦争屋は狂笑の笑みを浮かべた。

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