人間ってのは寿命を迎えたら死んでしまうような、そんな儚い生命体さ。
だけど、『ヒューマンミュータント』ならどうなるかな?
ゴブリン村の守護者となったプロス=テンペストは、見事に初変身と初戦闘を終えることが出来たのだった。
その後、村に戻った彼は変身の代償からか、すぐに寝てしまう。
それじゃあ、今回は彼の夢のお話から始めようか。
ガタンガタン……と、回り続ける車輪が奏でる通奏低音と、レールの継ぎ目を乗り越える単調なリズムが、俺の耳を通り抜ける。
本来なら眠気を誘うような素晴らしくも憎たらしい音だが、今の俺にはその気が起きないのだ。
何せここは俺の夢の中。
そもそも電車に乗った覚えなんてのは毛頭なく、この世界に電車というものが存在するのかすら怪しい。
だと言うのに俺は今電車に乗っている。
となれば、ここは夢の中という他無いだろう。
「なぁんでこんな事に……ネクス、今どうなってる?」
取り敢えず現状の再確認をすべく、先程から一言たりとも話していない悪魔の名を呼ぶ。
が、反応はない。
「…………ネクス?お前まで寝てんのか?」
ほんの少しだが声量を上げて声を出しても反応はない。
「何が起きてるんだ……?」と疑問を持つよりも先に、何者かが俺の肩に手を置いた。
「ッ!!」
走る衝撃。
圧や覇気、さらには殺意を感じ取れなかった、言ってしまえば死角からの未知なる者との接触に驚き、跳ね上がる。
跳ね上がった勢いで身体を宙で横に半回転させ、接触してきた存在を確認する。
「黒い……デモンズ?」
そこに居たのは、赤い目をした真っ暗なデモンズだった。
その首には赤いマフラーが巻かれており、その片手には見たことのない剣が装備されていた。
明らかに敵……としか言えない見た目なのだが、殺意だけは感じ取れない。
俺の感覚が可笑しくなっているだけなのか、ホントに敵じゃないのか。
取り敢えず警戒だけはしておくべく、デモンズドライバーだけは創造し、片手に持つ。
「……そう警戒するなプロス=テンペスト。コッチが傷付くだろ」
「ッ!?」
再び走る衝撃。
リムルのときのような、耳にキーンと来るような騒音ではないのだが、異様なまでに強い圧を感じる。
リムルみたいな、ぽっと出の強さなんかじゃない、歴戦の強さってものを感じる。
それこそ、何かデカい過去を抱えてなきゃ出せないレベルの強さだ。
「……あぁ、すまんね。出力を間違えた。こうやって誰かと話すのは久し振りだったもんで」
俺が怯える様を見て察してくれたらしく、黒いデモンズは軽い謝罪を述べた後、ロングシートに腰掛ける。
「ホラ、お前さんも座りな。せっかく席が空いてるんだ」
「……おう」
そう促され、俺は黒いデモンズの正面の席に座る。
静寂がその場を支配する。
うん、気まずい。
何故に俺は名前も知らなければ、素顔も知らないようなやつと対面で座っているのか。
その上、相手はどうやら俺のことを知ってるようだったし。
そんなお相手、黒いデモンズの方は……案外そうではなさそうだ。
仮面のせいでどんな顔してんのかわかんねぇけど。
「あー……そういや名乗って無かったか。そりゃ気まずくもなるか。すまんね、配慮が足りなかった」
どうやら顔に出ていたのを読み取られたらしく、黒いデモンズはまた謝罪を述べる。
俺よりも圧倒的な強者、上位存在がこうも謝ってばっかになるのも可笑しいもんだ。
「あーいや、そんな謝らないでくれ。如何せん、俺がこういうケースに慣れてなかっただけのことなんだ。んで、アンタの名前は?」
「ああ、俺の名は……」
黒いデモンズが名を名乗ろうとしたその時、耳を劈くような汽笛の音が響く。
何処かで聞いたことのあるような、そうでもないような、そんな汽笛の音が。
「……っと、そろそろ時間のようだ。また会おう、プロス=テンペスト」
そう言い終えると黒いデモンズは席から立ち上がり、この車両から離れようとする。
「おい、それってどういう……」
去ろうとする黒いデモンズを追うべくして、俺も席から立ち上がる。
その時、俺の言葉を遮るように辺り一面を光が覆い、俺は目を瞑った。
光が無くなったのを感覚的に感じ取り、重たい瞼を無理やりこじ開け、寝ていた身体を起こす。
「ようやくお目覚めか。寝坊助め」
目覚めてすぐ目に入ってきたのは流動形のスライムボディ。
そう、リムルだ。
「……寝起き一発目で見る顔がよりによってテメェとはな。まるで悪夢みたいだ。死ねよ」
「お目覚め早々、その火力で暴言放てるなら問題なさそうだな。あと、これは夢じゃなくて現実だ」
「んなことわかってる。アッチ行け!」
「はいはい……っとそうだ。直ぐに広場部分に集まれよ?色々とやらなきゃいけないことがあるんだから」
「うい」
超大雑把な返事を聞き届けると、リムルは俺が寝ていた家から抜け出していった。
未だかすかに残る眠気を吹き飛ばすべく身体を伸ばす。
実際、これが眠気覚ましになるかと言われたら「はい、そうです」と自信満々に言うことはできないが、そんな事はどうでもいい。
要するは思い込み、プラシーボ効果が必要なのだ。
現に俺はこのおかげで眠気がぶっ飛び、今この部屋の中で起きている異変に対処する勇気が湧いた。
さぁ、行こう。
「……ネクス。お前何やってんの?」
『んえ?』
先程からずーっと視界の隅でチラッと見えていた俺の悪魔が、今何をしているのかを確認する。
俺の目が狂ってなければ、俺の悪魔は何故か土で出来た地面を一生懸命手で掘り、何かの苗を植えている。
いったい何してやがるってんだコイツは。
『ほら、お前が夢見てる間俺ちゃんも寝てたんだよ。その夢で出場した甲子園に負けちまってさ〜?』
「ほう?」
『それの腹いせでここにミント植えてる。来年になりゃ豊かな緑で埋め尽くされるはず』
「ちゃんと経緯を知った上でなんも理解できなかったわ。なんの脈絡もない行動ってバカみたいに怖いな」
ってな感じで自分の悪魔の奇行に多少の恐怖を覚えながら広場へ向かう。
そこに居たのは村長を始めとするゴブリンと、牙狼族がいっぱい居た。
「……?」
無論、昨日村の表であった戦闘の内容を全く知っていない俺はフリーズ。
取り敢えずの感覚でデモンズドライバーだけ作り出した。
「あー……リムル?なんでここに牙狼族が?」
「あれ、言ってなかったか?コイツ等、俺の配下になったんだよ」
「弱肉強食か……可哀想だな、こんなスライムの下に就くことになるとか」
目の前に居る牙狼族が敵ではないということは理解できた為、デモンズドライバーを魔素に還元しつつ、近場の切り株に腰掛ける。
権力者になるなんて真っ平御免だ。
「文句は受け付けてねぇぞ。てか、そんな事言うならお前もなるか?この村の長に」
「ハハッ!死んでもお断りだね。そういうのは全部お前に任せる」
「……へいへい」
そんなやり取りの後、リムルの話が始まった。
簡単に纏めると『「昨日の敵は今日の友」だから、これからは二人一組で生活してね♪あと君達に名前つけるお☆』ってこと。
まぁそこら辺は全部リムルに任せ、周りにゴブリン達が居ないのを確認した上でタバコを吸う。
そろそろアルコールも接種したい所。
「はぁ……酒飲みたい。ビール5、6杯位は飲みたい」
『へいへ〜い、そんなんじゃあの機械っ娘に叱られちゃうゾ☆』
「機械っ娘……セロの事か?」
『そうそう。あの娘のハカセ兼マスターとして、しっかりせんと』
「いーんだよそんなの。アイツもこの世界にはこんやろ」
『……どーだろうなー?』
そんなこんなでタバコの火が消えるまでネクスと話し合いつつ、リムルの方を見てみる。
アレだけの数をネタが尽きぬように名前をつけなけりゃならんとなれば、そうとう手こずっているのでは?
「ゴブチ……ゴブツ……ゴブテ……お前はゴブゾウな」
……順調そうだわ。
あんなクソ雑名付けで良いなら俺でも手伝えたろうに。
まぁ俺が全力で断ったからこうなってんだけど。
哀れ、あはれってね。
って感じでゴブリン達全員に名を与え、牙狼族の長の息子と思わしき個体に『嵐牙』の名を与えたとき、リムルの身体に異変が起きる。
「ぐっ!体が……動かなく……なる」
「リムル様!?」
突如として苦しみだしたリムルと、それを見て慌てふためくゴブリン達と牙狼族共。
正直俺もビビって声を出しそうになったが、ここで慌ててちゃかっこいい男にゃなれん。
俺がなにかせずとも沈静化するのではと思ったのだが、どうやら村長……もといリグルドも焦ってるから、止めれそうな奴が居ない。
……しゃーない。
ここで俺の貫禄ってもんを見せてやろう。
「貴様等、鎮まれッ!」
さて、慌てるのを治める事は出来たがそれからのことをまったく考えていなかった。
なぜリムルはこんな事になってるのだ。
なぜ急に意識がなくなってしまったのか。
こんな時はアイツに聞いてみよう。
教えて!ネクス先生!
Q.(何でリムルはこうなっとるん?)
A.『名付けで魔素をアホみたいに使ったからだゾ☆その結果、体内の魔素残量が一定値を下回った事で
ありがとう!ネクス先生!
……ちなみにだが、この間約0.1秒である。
ご都合主義ってやつかどうかは曖昧だが、まぁこういうのはホント素敵なもんだ。
許されるなら反応してやりたい。
「まぁそんな慌てんな。リムルは寝てるだけだ」
「プ、プロス様、寝ているだけというのは……?」
「言葉の通りだ。魔素の使いすぎで活動停止してんだ。まぁ3日もすりゃ起きるさ」
今はもう動かないリムルを片手で鷲掴みにし、リグルドにリムルを投げ渡す。
「こいつは適当な家にでも運んでいてくれ。んで、このバカが起きるまでの指揮は……リグルド、お前に託す。任せたぞ」
「……っ!!ははっ!」
俺のあまりにも㋰責任な発言に、何故かリグルドは感激や感動に似たような感情を隠さずに受け止める。
そんなに喜ばしかったのか、リグルド。
……とまぁ、リグルドに責任を全て押し付けた俺は「ちょいと休んでくる」とだけ伝え、先程までぐてーっと寝ていた家へと足を速める。
『へいへいプロス〜。リグルドに任せるってのはまぁわからんでもないがお前は何すんだよ?また寝んのか?』
「バカ言え。あんだけ寝て尚且つ超久しぶりに夢見れたんだから良いんだよ……まぁだいぶ変ではあったけど」
そう言い、多少時間が経ったせいも相まって曖昧になりかけている夢を思い出す。
謎の電車の中で謎の黒いデモンズに会って……結局アイツの名前、なんだったんだろ。
『ほへ〜お前でも夢見るんだな』
「俺のことなんだと思ってやがる」
『え?バケモン』
「悪魔如きにバケモン扱いされるの不服でしかないんだが」
ネクスに言われた言葉に少々腹を立たせながらもタバコを一本取り出し、火をつける。
『まぁ日頃の行いだわな日頃の行い。懺悔しとき』
「お生憎、無神論者だから懺悔する対象居ねぇんだワ」
『俺ちゃんが……居るだろ☆』
「何が悲しくて悪魔に祈らにゃならんのだ」
そんな感じで他愛のない話をしながら家にたどり着く。
中に入って早速体内の魔力を多少消費し、今あるバイスタンプを並べる。
『ほほ〜ん……こりゃまた案外大量にあんな』
「だな。デモンズが劇中ゲノミクスで使用したバイスタンプが計5個。まぁインペリアル含めたら計7個になるわけだが……そのバイスタンプが今あるわけだ」
『バリエーションがあると戦闘の幅が広がるから便利だよな〜。まぁその分寿命持ってかれるけど』
「覚悟の上だから良いんだよ」
生成したバイスタンプを回収しながらネクスと駄弁る。
いつかこいつらも実戦で活用を……なんてことを考えてるうちに、あっという間に日が落ち、夜が明ける。
如何せん昨日馬鹿みたいに寝たもんだから眠気が全く来なかった。
そのお陰である程度今あるバイスタンプ達の活用法を思いついたもんだ。
策が練れたことを喜ぶべきか、一睡もしなかったことを悲しむべきか……まぁ最悪それはどうだって良い。
そう。
今この俺に訪れている問題と比べれば、どうだって良いことなのだ。
「おはようございます!プロス様!」
「あー……うん、おはよう……?」
俺の居た家に突然入り込んできた、筋肉モリモリ、マッチョマンのゴブリンが何者であるかを考えるほうが、よっぽど重要なのだ。
現れたもう一人の黒いデモンズは一体何者なのか……!
そろそろコラボの事も考えないとねぇ
やりたい人いたらメッセージでも何でも送ってクレメンス
なんならアイデアもメッセージで随時募集してます
みんなの案、待ってるぜ☆
プロス=テンペストの寿命
変化なし