ボクと契約してギターヒーローになってよ! 作:QB
「お願い! ボクと契約して!」
「あっ、え?」
私、後藤ひとりは目が点になった。突然見知らぬ小動物にそんな事を言われたからだ。
ここはいつもの帰り道。私はいつも通り、家路に向かって歩いていた。そしたら、いきなり目の前に見知らぬ小動物が現れたのだ。
白くてふわふわとした毛、三角形の耳、くりくりとした大きな目。羽でパタパタ浮いてて可愛いなぁ。
それに喋ってるし……
「……どどど、動物が喋ったァ!?」
「ボクをその辺の動物と一緒にしないで欲しいよ!」
「あっ、ご、ごめんなさいっ」
つい驚いてしまった。それにしても、喋る動物なんて初めて見た……
「それよりもお願い! ボクと契約して、一緒に戦って欲しいんだ!」
「え、ええと……?」
「ボクと契約して、魔法少女になって欲しいんだ!」
「ふぇっ!?」
私は更に混乱する。いきなり変な動物に出会って、急に魔法少女にならないかと言われたのだ。当然の反応である。
(ど、どうしよう……この子、何言ってるんだろ? それともこれって全部夢? 昨日ふたりと女児向けアニメ見たから?)
私は必死に考える。だが、答えは全く出てこない。
「あっ、あの……」
「た゛の゛む゛か゛ら゛さ゛ぁ゛〜゛! ゛! ゛! ゛」
「……わ、わかりました」
私はついに折れた。とりあえず話だけでも聞いてみようと思ったのだ。
(きっと、友達が居ない寂しさでこんな変な夢を見てるんだ……)
そう思ってこの光景を必死に受け入れることにした。
「ほんとに!? やったぁ! ありがとう!」
すると、小動物は飛び跳ねながら喜び、私の背負っていたギターケースに触る。
「よしっ、じゃあギターを構えて〜?」
「えっ、は、はいっ!」
言われるがままギターをケースから出して構える。
「"変身"って叫びながら弾くんだ!」
「は、はい! ……へっ、"変身"!」
すると、私のギターから放たれた光が身体を包み込む。
「な、なんじゃこりゃー!?」
光が収まると、私の服装はさっきまで着ていたジャージではなく、黒を基調としたフリフリの衣装に。そして、持っていたギターもボディの周りが刃物の形に変形していた。
それに何だか身体の底から力が湧いてくる。
「こ、これは一体……!?」
「とっても似合ってるね! カッコイイ!」
小動物は嬉しそうに飛び跳ねながら言う。確かに言われた通り、私は魔法少女に変身していた。
「さぁ、敵が来るよ! 準備はいい?」
「えっ、ててて敵!?」
すると、どこからともなく不快な音が鳴り響く。まるで、楽器が故障しているような音。
遥か頭上を鳥の影が通る。その影は空中で旋回し、こちらに勢いよく突撃してきた。
「ひっ、ひぃぃぃぃっ!?」
私は思わず目を瞑る。しかし、小動物が叫ぶ。
「怖がらないで! 君に宿る音楽の力があれば、絶対に勝てるよ!」
「で、でも……」
「大丈夫! ボクを信じて!」
そう言って小動物が私の手に触れる。すると、頭の中に音楽のイメージが流れ込んできた。
「これは……」
「さぁ、その音楽で攻撃するんだ!」
「……わ、分かりましたっ! ……えっと、こんな感じで……」
私は頭に流れ込んでくる音楽に合わせてギターを弾く。すると、ギターから衝撃波が放たれた。衝撃波は影に命中し、そのまま地面に墜落する。
「す、すごい……これが私の力……」
「まだまだ! 敵はまだ倒せていないよ!」
見ると、影は起き上がろうとしていた。私は再びギターを構え、音楽を奏でる。すると、影の周りに無数の音符が現れ、その身体を切り刻んでいく。
身体をばらばらにされた影は甲高い鳴き声と共に消滅した。
ほっと一息つくと変身が解け、小動物と改めて対面する。
「お疲れ様! すごいよ君! やっぱりボクの目に狂いは無かったってことだね!」
「あ、ありがとうございます……」
「取り敢えず今日の活動はこれでおしまい! 次からも一緒に頑張っていこー!」
「あっ、はい。……じゃあ、疲れたので帰ります……」
「また明日ね〜!」
私はそそくさと家に帰った。夢だと思っていたが、妙にリアルな感触だった。
(……また明日、か)
明日の約束をするなんて初めてかも。夢でも、ちょっと嬉しいな。私は布団の中でそう思った。
「おーい! 起きてひとりちゃん! もう朝だよ!」
「んむぅ……あと5分……」
「ダメダメ! 学校に遅刻しちゃうよ!」
「むにゃぁ……って、え!?」
目が覚めるとそこはいつもの私の部屋。そして、目の前には夢の中にいた小動物が。
「ど、どうして!? 夢じゃないの!?」
「夢じゃないよ! 現実だよ!」
「……え、えぇー!?」
小動物はえっへんと胸を張り、得意げに名乗った。
「ボクの名前はビート! 音楽を愛する妖精だよ! これからよろしく、ひとりちゃん!」
これは、私が高校に入ってから二週間頃の出来事だった。
◇
「ひとりちゃんって友達とかいないの?」
「う"っ!」
昼休み。階段下の物置スペースでお弁当を食べる。ビートがグサリと私の心に突き刺さる言葉を放った。
私は、ぼっちである。昼休み、ご飯を一緒に食べる友達はいない。教室だと一人で食べづらいので良い場所が見つかってよかった。
「そ、そんなストレートに言わなくても……」
「ひとりちゃんはさ、どうして友達作らないの?」
「だ、だって……人と目合わせられないし喋るのだって苦手だし……」
「でも、ボクとはこうやって喋れるでしょ?」
「ビートは人というかイマジナリーフレンドに近いというか……」
普通に学校までついてきているビートだが、他の子には見えないように魔法を使っているらしい。
「まぁ、ひとりちゃんがそれでいいならいいけどさ。クラスでは目立たない女の子が、裏では魔法少女として戦っているって、カッコイイ設定だよね!」
「か、カッコイイ……うへへ」
「……チョッロいなぁ」
その後、二時間の授業をこなして学校が終わる。ギターを持ってきたり、バンドグッズを身につけたりと色々試行錯誤してみたが、結局今日も誰一人話しかけてはくれなかった。
帰り道。人通りの少ない道をとぼとぼ歩く。
「他力本願じゃ何も解決しないよ? 自分から話しかけに行かないと」
「わ、わかってるよぉ……」
ビートがまたグサリと刺さることを言う。でも、その通りだ。いつまでもこんな調子じゃいけないのは分かっている。しかしそんな勇気があれば私はぼっちになってない。
「……他力本願って言うなら、ビートだって私に戦わせたし」
「それはそれ、これはこれだから」
「そんなぁ……」
他力本願なのはお互い様というわけだ。
帰り道にある公園に寄って、ブランコでひと休みする。ビートは隣のブランコにちょこんと座っていた。
「……もう学校行きたくないなぁ」
「おっ、じゃあノイズ狩りに専念してもらおうかな?」
「……やっぱり学校行こ」
ノイズというのは、昨日相手にした黒い影のことらしい。私は、そのノイズを倒すために魔法少女にさせられた。
アレは人間の負の感情から生まれてくる存在らしく、放っておくと危険なんだとか。ノイズは普通の人には見えなくて、音楽の力を使う魔法少女にしか倒せない。……全くもって現実味のない話だけど。
「君が一番ノイズを生みそうだね。魔法少女にしといて正解だったよ」
「魔法少女からはノイズは生まれないの?」
「うん。ボクとの契約でその辺は福利厚生はしっかりしてますから」
魔法少女にも福利厚生ってあるんだ。
私は背負っていたギターケースを下ろす。ケースの真ん中にはビートの顔を模したマークが付いていた。
「そのマーク可愛いでしょ! ボクのお手製だよ!」
「……私の好みじゃないかも」
「そのギターが無いと変身出来ないから、普段から持ち歩いてないとダメだよ?」
「なるほど……」
そろそろ帰ろうかと立ち上がったその時、
「あっ! ギターッッ!!!」
大声と共に一目散に駆け寄ってくる金髪の女の子。そして固まる私。
後藤ひとりの明日はどっちだ!
ビートの容姿はプ○キュアの妖精的な感じで想像してください