【第1章完】お嬢様はゴールキーパー!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第4話(2)お嬢様、食す

                 ♢

 

「……というわけで断られてしまいました」

 

「まあ、ヴィンテージジーンズを買ってもらうのはさすがに恐縮するわな……」

 

 しょんぼりとする最愛に真珠が顎をさすりながら答える。

 

「……でも! お揃いの服は買えました!」

 

 最愛が顔を上げ、笑顔を浮かべる。

 

「へえ、そら良かったな」

 

 真珠も笑顔で応える。

 

「はい! 今度、その服を着てお出かけするのです!」

 

「お嬢様のカジュアルファッションね……わりと興味深いな……似合うか? いや、案外ミスマッチ感がいい方向に作用して……」

 

 真珠が最愛の体をじろじろと見ながらぶつぶつと呟く。

 

「あ、あの……御幸さん?」

 

「は⁉」

 

「何かわたくしの服に付いていますか?」

 

「え?」

 

「いえ、体の方をご覧になっていたので……」

 

「あ、い、いや、なんでもないぜ、うん……」

 

 真珠は慌てて首を左右に振る。

 

「はあ……」

 

「それで? なんでオレのところに来たんだ?」

 

「たった今、ご説明したではありませんか」

 

「あれ、そうだっけ?」

 

「そうです」

 

「いや、ウン十万もするヴィンテージジーンズを一本買って、なおかつそれと同じやつを円にも買おうとして、ひたすら恐縮されたって話があまりにもインパクトが強すぎてな……」

 

「そうですか?」

 

「ああ……」

 

「ええと……百合ヶ丘さんから、チームメイトのことをよく知るべきだと言われまして」

 

「なるほど、恋の差し金か……」

 

 真珠が頷く。

 

「それで、オフの時間を御一緒させて頂ければと思いまして……」

 

「……」

 

「どうぞお願いいたします!」

 

 最愛が丁寧に頭を下げる。

 

「う~ん……」

 

 真珠が腕を組んで考え込む。

 

「……駄目でしょうか?」

 

 最愛が顔をわずかに上げる。

 

「いや、駄目ってわけじゃねえけどよ……」

 

「それならば……」

 

「なんていうか……アレだぞ? ……大して面白くねえと思うぞ?」

 

「ああ、それは大丈夫です」

 

 最愛が顔を上げ、再び笑みを浮かべる。

 

「だ、大丈夫?」

 

「御幸さんのことですから、エンターテイメント性とはベクトルが異なっているオフタイムだろうというのは予想がついています」

 

「予想?」

 

「ええ」

 

「どんな予想だ?」

 

「ヴァイオレンスでロックンロールな……」

 

「バ、バイオレンスだあ⁉」

 

「ヴァイオレンスです」

 

「発音はどうでもいいわ! オレにどんなイメージ持ってんだよ⁉」

 

「え……だって、一人称が『オレ』ですし……」

 

「一人称への偏見がエグいな!」

 

「違うのですか?」

 

「違えよ、暴力なんか振らねえよ、それになんだ、ロックンロールって……」

 

「そうですか……『力こそが全て!』という方かと思っていましたが……」

 

「どんな悪役だ……むしろ逆だよ」

 

「逆? では、『友情・努力・勝利』なオフタイムを……」

 

「少年〇ャンプの具現化⁉」

 

 真珠が困惑する。

 

「ジャ〇プ? あまり詳しくはないですが、近年は『才能・血筋・勝利』の傾向が顕著なような気がいたします。主人公が実はすごい血統の持ち主だったというストーリー展開は、正直少し冷めてしまいますね……」

 

「生粋のお嬢様がそれを言うかよ……」

 

 真珠が少し呆れた視線を最愛に向ける。

 

「……ああ、話が逸れました。御幸さん、あらためてご同行をお願い出来ないでしょうか?」

 

「え? う~ん……」

 

 真珠が後頭部をポリポリと掻く。最愛がより真剣な表情になる。

 

「わたくし自身の成長はわずかでも必ずやチームに還元することが出来るはずなのです!」

 

「チーム強化に繋がるってことか……分かったよ、着いてきな」

 

「は、はい!」

 

 真珠の後に最愛が続く。真珠が店の前に立つ。

 

「……ここだ」

 

「このお店を買収……」

 

「しねえよ。飯を食うだけだ……腹減ってるだろう?」

 

「え、ええ。空腹です」

 最愛が頷く。

 

「じゃあ、奢ってやんよ……今日は並んでなくてラッキーだったな。邪魔するぜ」

 

 真珠と最愛が店に入る。L字型のカウンター席が設置された小さなラーメン屋である。

 

「こ、これは……ラーメン屋さん?」

 

「へえ、お嬢様もそれくらいは知っていたか。まあ、座れよ」

 

 真珠と最愛が席に座る。店員が真珠に尋ねる。

 

「いらっしゃい! ご注文は?」

 

「カタメ、ニンニクマシ、ヤサイカラメ、アブラマシマシ」

 

「承りましたあ!」

 

「⁉」

 

 最愛があっけにとられる。店員が問う。

 

「ご注文は?」

 

「え……」

 

「ははっ、無理すんな……教えてやるから……」

 

「カタメ、ヤサイチョモランマ、アブラカタブラ、ニンニクドラキュラ!」

 

「はい、承りましたあ!」

 

「なにっ⁉」

 

「ふふふっ、この次郎系ラーメン、一度食してみたいと思い、リサーチしておりました」

 

「チョモランマはともかく、ドラキュラは初耳だったぜ。かなり調べたみたいだな」

 

「はい、御幸さんとのラーメン屋での食事をエンジョイしたいと思いまして……」

 

「……真珠で良いぜ、その代わりこっちも最愛って呼ぶからよ」

 

「! ほ、本当ですか⁉ それはこの上ない喜びです!」

 

「大げさだって……」

 

 それから十数分後……。

 

「ドラキュラも卒倒するニンニク……流石です」

 

「待て、最愛! まだ麺まで全然辿り着いていねえぞ⁉」

 

「後は……真珠さん、お願いします……シェア、しましょう……」

 

「食いかけのラーメンをシェアはしないだろう!」

 

 真珠の言葉がラーメン屋の店中に響く。

 

 

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