【第1章完】お嬢様はゴールキーパー!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第7話(4)横浜中華街にて

「……横須賀は楽しかったようですね」

 

「ええ、とっても楽しかったわ、ねえ、最愛ちゃん?」

 

「はい」

 

 ヴィオラの問いに恋と最愛は揃って頷く。

 

「三笠公園以外も行ったの?」

 

 雛子が尋ねる。

 

「色々行ったわ、ハンバーガーも食べたし」

 

「ああ、あれ美味しいよね~」

 

 恋の答えに円が頷く。

 

「……最愛さん。やけにお荷物が多くありませんこと?」

 

 魅蘭が指摘する。

 

「ああ、そうです。横須賀のお土産をお渡しするのを忘れていまして……」

 

「横須賀のお土産?」

 

「そうです」

 

「せっかくだからここで配っちゃったら~?」

 

「良いのですか?」

 

「良いんじゃない、もったいつけるものでもないし♪」

 

 恋がウインクする。

 

「そ、それでは……皆さん、道の脇に寄って頂いて……」

 

 最愛が皆を促す。ヴィオラが首を傾げる。

 

「なんでしょうか……?」

 

「これです!」

 

 最愛が皆に配る。魅蘭が驚く。

 

「こ、これは……虎さんの刺繍が入った服⁉」

 

「ス、スカジャンというものです!」

 

「それは知っていますが……」

 

 ヴィオラが目を輝かせる最愛に戸惑う。

 

「こ、これをチームジャージにしませんか⁉」

 

「えっ⁉」

 

「いいじゃあねえか、超イカすぜ!」

 

 驚く円の横で真珠がスカジャンを広げながらうんうんと頷く。

 

「それはどうかと思います……」

 

「そうね、横須賀のチームじゃないんだし」

 

 ヴィオラの言葉に雛子が同調する。

 

「だ、駄目ですか……」

 

 最愛が肩を落とす。ヴィオラが頭を軽く抑える。

 

「そんなにがっかりされると、こちらも心が痛みますが……」

 

「それなら今日はこの服を着て街を歩かない?」

 

「いいな、それ! 着ようぜ!」

 

 恋の提案に真珠が頷く。

 

「こ、これを皆で……?」

 

「いいじゃない、魅蘭ちゃん。たまには皆でお揃いっていうのも~」

 

「は、はあ……まあ、たまには良いかもしれませんわね、こういうのも」

 

 魅蘭も同意する。

 

「ヴィオラちゃん」

 

「……分かりました」

 

 恋に促され、ヴィオラがスカジャンに袖を通す。

 

「スカジャンを着た女が七人……な、なかなか気合の入った集団だね……」

 

 円が苦笑する。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

「どうかしたの、雛子ちゃん?」

 

 恋が首を傾げる。

 

「き、着るのはやぶさかではないけど、なにもこの街で着なくても良いんじゃないの⁉」

 

 雛子が街の入口を指差す。そこには『横浜中華街』と書かれた門がある。

 

「いいじゃねえか、逆にありだぜ」

 

 真珠が笑みを浮かべる。

 

「ぎゃ、逆にってなによ!」

 

「なんだよトサカ? ひょっとしてビビってんのか?」

 

「ビ、ビビってなんかないわよ!」

 

 雛子が勢いよくスカジャンを羽織る。

 

「よっしゃ、行こうぜ」

 

 真珠が恋に視線を向ける。恋も頷く。

 

「ええ、参りましょうか」

 

 スカジャンを着た川崎の女たちが横浜中華街に颯爽と乗り込んでいく。

 

「あ、チャイナドレス試着体験だってよ」

 

「ワタクシ、着てみたいですわ!」

 

 円の指し示した先に魅蘭が興味を示す。

 

「良いんじゃない、雛子ちゃんも着いて行ってあげて」

 

「スカジャンもう脱ぐの⁉」

 

 恋の言葉に雛子が驚く。

 

「……わ~二人とも似合うよ~」

 

「ふふん、ざっとこんなものですわ!」

 

 円の言葉に魅蘭がドヤ顔を見せる。

 

「きゃ~!」

 

「ん?」

 

 声援が聞こえたかと思うと、真っ赤なチャイナドレスを着こなす短い黒髪の女性が、道行く人々に囲まれて、ギャラリーを作っている。

 

「な、なかなかスタイルが良いわね……」

 

「ぐぬぬ……」

 

 雛子と魅蘭が悔しそうな顔を見せる。その後……。

 

「中華街と言えば、やっぱり料理だ! このメニューを食えば無料だってよ!」

 

「無料ならばやるしかないわね……」

 

 真珠と恋が大食いに挑戦する。最愛が戸惑う。

 

「百合ヶ丘さんまで参加されるとは……」

 

「奥様の血が騒いだのですかね……ん?」

 

 ヴィオラが視線を向けると、長い金髪をなびかせた女性が、大食いメニューをあっさりと平らげて、周囲の客が騒然とする。

 

「なっ⁉ は、早ええっ⁉」

 

「なんと……」

 

 驚く真珠の隣で恋が顔をしかめる。その後……。

 

「レアでかわいいパンダさんのぬいぐるみ! なんとしてもゲットしてくださいな!」

 

 ゲームセンターのクレームゲームコーナーで魅蘭が声援を送る。

 

「任せてよ、こういうのは結構得意なんだ」

 

「腕が鳴りますね……」

 

 円とヴィオラが腕まくりをして、順番を待つ。店員の叫ぶ声が聞こえる。

 

「おお~パンダコンプリートね~!」

 

「ええっ⁉」

 

「なっ⁉」

 

 円たちが先頭を覗き込むと、長身でがたいの良い、コーンロウカットの女性がパンダのぬいぐるみを全てゲットしてしまっていた。女性は両手一杯にパンダのぬいぐるみを抱えながら、さきほどの黒髪の女性と、金髪の女性とともに、最愛たちの横を通り過ぎて呟く。

 

「……横浜で好き勝手はさせん。前哨戦はこちらが勝たせてもらった……」

 

「⁉」

 

「あ、あの三人は今日対戦する、超強豪チーム、『横浜プレミアム』のメンバー……!」

 

「「「「ああっ⁉」」」」

 

 恋の言葉にヴィオラ、真珠、雛子、円がハッとなる。

 

「いや、ここまで誰も気が付かなかったんですの⁉」

 

 魅蘭の声がゲームセンター内に大きく響く。

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