【第1章完】お嬢様はゴールキーパー!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第9話(4)やっぱり……

                 ♢

 

「着いた~♪」

 

 恋がグラウンドに到着する。

 

「はあ、はあ……何故貴女が先に⁉」

 

 やや遅れて到着した魅蘭が問う。

 

「それは追い抜いたからよ」

 

「ど、どうして⁉ スタートはワタクシが圧倒的に引き離していたはず⁉」

 

「食後の運動が大切だとはいえ、いくらなんでもハイペース過ぎるわ」

 

「なっ⁉」

 

「そんなに驚くこと? ……あら?」

 

「よっしゃあ! ゴール!」

 

「くっ……」

 

 真珠と、わずかに遅れて雛子がグラウンドに到着する。

 

「はあ、はあ……どうだ! オレの勝ちだぜ!」

 

 肩で息をしながら真珠が雛子に勝ち誇る。

 

「はあ、はあ……なにが勝ちよ……いきなり走り出した癖に……」

 

 同じく肩で息をしながら雛子が呟く。

 

「なんだよ、負けたからって言い訳か?」

 

「まあ、いいわ……ゲーム下手なアンタに一つくらい譲ってあげるわ」

 

「ああん? あれで勝ったつもりになるなよ。……ん?」

 

「はあ、はあ、はあ! 私が先にゴールですね……」

 

「あ~負けた~」

 

 ヴィオラとほぼ同時に円がグラウンドに到着する。

 

「……なにもここまで走ってくることはなかったのでは?」

 

 ヴィオラが冷静になって呟く。

 

「い、いや、なんかテンション上がっちゃって……ノリでさ……」

 

 呼吸を整えながら円が応える。

 

「ノリって……うん?」

 

 ヴィオラが恋たちに気が付く。恋が笑う。

 

「ヴィオラちゃん、結局皆、今日の練習に参加するみたいよ?」

 

「そのようですね……キャンセルしておかなくて良かった……」

 

「い、いや、恋、ヴィオラ、スマン!」

 

「ごめん……」

 

「ごめんなさい!」

 

「別に構いませんよ。さあ、グラウンドに入りましょう」

 

 頭を下げる真珠、雛子、円に対し、恋は優しく微笑む。

 

「申し訳ありません……」

 

「……もう良いですよ」

 

 頭を下げることに慣れていない魅蘭の謝罪をヴィオラは受け入れる。

 

「練習には全力で取り組みますわ!」

 

「それは結構……とはいえ、練習着は持ってきてないですよね?」

 

「動きやすい服装ではありますが……」

 

 ヴィオラの問いに魅蘭が答える。真珠たち三人も同調する。

 

「まあ、今日は簡単な練習だけにしましょうか」

 

「ウォーミングアップは皆出来ているけどね」

 

 恋が笑みを浮かべる。

 

「柔軟運動の後、軽くランニングしたら、ボール回しでもしましょうか」

 

 ヴィオラが指示を出す。

 

「……ええっ⁉ ラーメン小次郎初めて行ったのか⁉」

 

「ええ。吉田屋も……」

 

「吉田屋も⁉」

 

「アルナイゼリアも……」

 

「アルナイゼリアも⁉ さすがは姫様ね……ってか、どんだけ食べてきたのよ……」

 

 魅蘭の発言に真珠も円も驚く。雛子も驚いたが、冷静に突っ込みを入れる。

 

「真珠と雛子は何をしてたの?」

 

「え? な、なんつーか……」

 

 円の問いに真珠は鼻の頭をこする。

 

「いつもの感じ?」

 

「いつものって何よ! ゲームセンターに行っただけよ」

 

「へ~ゲームセンターか」

 

 雛子の答えに円が頷く。

 

「ゲーセンでドラムの名人、ウマ女、別拳をやってきたぜ」

 

「ああ、その辺は定番だよね」

 

「あの辺は定番なの⁉」

 

 真珠の言葉に頷く円に雛子が驚く。

 

「ヴィオラちゃんがカラオケだなんて珍しい」

 

 恋が笑みを浮かべる。

 

「なんとなくその場の流れで……」

 

「何を歌ったの?」

 

「いや、ほとんど円さんが歌っておられましたから……『フニクリ・フニクラ』くらいです」

 

「ど、どんな選曲⁉」

 

 恋が困惑する。

 

「ってか、アイツは来なかったな……」

 

「本当ですわ。ワタクシの連絡には、十回に一回は返信をよこしますのに……」

 

「……本当にライバルなのか?」

 

 魅蘭の言葉に真珠が首を傾げる。

 

「まあ、負けに慣れているアタシたちでもショッキングな敗戦だったし……」

 

「遠征は調子良かっただけにね……」

 

「ええ、その分、堪えたんでしょうね……」

 

 雛子と円が頷き合う。

 

「どうします?」

 

「どうしますとは?」

 

 ヴィオラに恋が問い返す。

 

「連絡がつかないのは本当です。このままだと……」

 

「フェードアウトもあり得るわよね~」

 

「! 言い辛いことを……」

 

「でも、よくあることじゃない~?」

 

「まあ、それは確かに……」

 

 ヴィオラが顔を俯かせる。恋がポンと両手を叩く。

 

「そうだ、今日は皆でキーパー練習をしてみましょう~♪」

 

「え?」

 

「それじゃあ、真珠ちゃんから。ヴィオラちゃん、予備のグローブ持っていたでしょ? 貸してあげてちょうだい。何、ほんのレクリエーションよ、気楽に行きましょう~♪」

 

 恋が笑顔で声をかける。

 

「おっしゃあ!」

 

「……気合いの入り方は良いけど、冷静さに欠けるかしらね~。次、雛子ちゃん」

 

「ええい!」

 

「……反応も悪くないけど、パンチングがもうちょっとかしら……。次、円ちゃん」

 

「それっ!」

 

「……頑張っているけど、判断力がややもの足りないかしら……。次、魅蘭ちゃん」

 

「はははっ!」

 

「……自信たっぷりなのは買いだけど、基本技術が今一つかしら……」

 

「一長一短といった感じですね……」

 

 ヴィオラが呟く。恋が苦笑気味に、魅蘭たちには聞こえないように囁く。

 

「やっぱり、もしもの時はヴィオラちゃんにお願いするわ……」

 

「もしもの時は、ですか……」

 

「ええ、やっぱり川崎ステラの正ゴールキーパーは溝ノ口最愛ちゃんだわ」

 

 恋がヴィオラに対し、ウインクする。

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