【第1章完】お嬢様はゴールキーパー!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第2話(3)サークルの姫

「来ましたね……」

 

 数日後、川崎ステラの練習しているコートに相手チームがやってくる。

 

「雰囲気あるわね……」

 

「なんだよツンツン、ビビってんのか?」

 

「ビ、ビビってないわよ!」

 

「ちょっと年上の方たちかな?」

 

 真珠と雛子の言い合いをよそに、円がヴィオラに尋ねる。

 

「ええ、そうです。溝ノ口さんとあの……鷺沼さんが通われている学園に付属する女子大学の学生さんたちです」

 

「だ、大学生⁉」

 

「はい」

 

 ヴィオラが頷く。

 

「JD……フットサル部か?」

 

 真珠が問う。

 

「いえ、そこまで本格的なものではないようです。いわゆるサークル活動ってやつですね……ですが……」

 

「ですが?」

 

 雛子が首を傾げる。

 

「それなりの実力はあります。現時点での私たちよりは間違いなく格上と見ていいですね」

 

「どうやって試合を?」

 

「ちょっとしたツテがありまして、お願いをしてみたら受けて下さいました」

 

 ヴィオラが円の問いに答える。

 

「でもよ、いきなり試合なんてちょっと急過ぎねえか?」

 

「それには同意ね」

 

 真珠の言葉に雛子が頷く。ヴィオラが首を傾げる。

 

「そうですか?」

 

「そうだよ」

 

「溝ノ口ちゃん、まだ素人じゃないのよ……」

 

 真珠と雛子が最愛に聞こえないように小声で話す。

 

「だからこそですよ」

 

「え?」

 

「練習だけじゃ退屈でしょう? やっぱりゲームをするのが一番楽しいですよ」

 

「それは……まあ、そうかもしれねえな……」

 

 真珠が笑みを浮かべる。

 

「そうでしょ?」

 

 ヴィオラが笑顔でウインクする。

 

「逃げずに来たようですわね……」

 

 魅蘭が最愛を見上げる。

 

「いや、別に逃げませんが……それにしても……」

 

「? 何ですの?」

 

「髪型、ツインテールに戻されたのですね」

 

 最愛が魅蘭の頭を見て笑顔になる。

 

「! こ、こうすれば……貴女がワタクシのことをきちんと認識するでしょう?」

 

「はい、忘れません」

 

「まったく……子供っぽいのはそろそろ卒業しようと思っていましたのに……」

 

 魅蘭が自らの髪を撫でながらブツブツと呟く。

 

「でも……」

 

「え?」

 

「とてもよくお似合いですよ」

 

「!」

 

 魅蘭の顔がポッと赤くなる。最愛が首を傾げる。

 

「どうかされました?」

 

「べ、別に! なんでもありませんわ! 試合ではけちょんけちょんにして差し上げますから、覚悟なさい!」

 

 魅蘭がその場から離れる。ヴィオラが声をかける。

 

「溝ノ口さん、ミーティングをしましょう」

 

「はい」

 

 最愛がヴィオラたちの下に近づく。ヴィオラがホワイトボードを手に説明を始める。ボードには丸いマグネットが貼ってある。

 

「私たちはほとんど立ち上がったも同然のチームです。本来は相手の出方などを伺ったりすることが大事になってくるのですが……今日のところは勝敗を度外視して、楽しむことに主眼を置きましょう。よろしいですね?」

 

「……」

 

 最愛たちが黙って頷く。ヴィオラが続ける。

 

「それでは、ポジションを発表します……ピヴォは真珠さん」

 

「おう!」

 

「アラは左が雛子さん」

 

「ええ」

 

「右が円さん」

 

「うん」

 

「フィクソが私……ゴレイロ、ゴールキーパーは溝ノ口さん」

 

「はい……!」

 

「……それでは行きましょう! 新生川崎ステラの初陣です!」

 

「おおっ!」

 

 ヴィオラの言葉に応え、全員がポジションにつく。

 

「ピィー!」

 

 審判――相手チームの控え選手が担当――が笛を吹き、試合が始まる。

 

「ヴィオラ!」

 

 雛子がヴィオラにボールを繋ぐ。

 

「それっ!」

 

 ヴィオラがダイレクトで前にポジションを取る真珠に鋭いパスを通す。

 

「よっしゃ!」

 

「ふん!」

 

「うおっ⁉」

 

 真珠が相手選手にショルダータックルを食らい、簡単に吹っ飛ばされる。

 

「そらっ!」

 

「はっ!」

 

「よっと!」

 

「は、速いパス回し!」

 

 円が戸惑う。

 

「任せた!」

 

「!」

 

 雛子とヴィオラの間を通され、相手の選手が抜け出す。雛子が舌打ちする。

 

「ちい!」

 

「溝ノ口さん、前に出て、シュートコースを狭めて!」

 

「ええ!」

 

 ヴィオラの指示に従い、最愛が素早くゴールを飛び出し、相手選手との距離を詰める。

 

「それっ!」

 

「‼」

 

 相手選手が横にパスを出す。そこには魅蘭が待ち構えていた。

 

「ふっ、上出来ですわ……」

 

 魅蘭が冷静にボールを流し込む。ステラ川崎はあっという間に先制を許してしまった。

 

「やったあ、さすが! わたしのパスですよ!」

 

「その前の私のパスで勝負ありでしょ!」

 

「まあまあ、ワタクシの為にケンカしないで……皆のお陰です」

 

「は~い♡」

 

「なるほど、その存在感……さながらサークルの『お姫様』と言ったところですか……」

 

 ヴィオラが呟く。

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