訓練生はルビコン川を渡ることが出来るか?   作:明田川

13 / 20
連携

「見つけたぞ、シュナイダーの軽量機!」

 

「本当に居やがった、よく見つけたなテメェ」

 

数回のトライアンドエラーを重ね、遂に警報が鳴る前にヴェスパーⅣを補足することに成功した。相手は軽量機、機動性ではこちらが劣るが耐久性は低い。

 

『発見されたか、中々やれる相手のようだな。悪いがこちらは先に始める、君は壁を目指してくれ』

 

「お前を先に片付ける、これで調整までの時間は稼げる筈だ!」

 

背中のミサイルを発射し、接近してからマシンガンで弾幕を張る。相手は回避をするものの、それに追い縋るようにブースターを動かす。

 

『こちらの戦型を読まれている…?』

 

「そのまま抑えろ、これでェ!」

 

リニアライフルのチャージショットはその弾速故に回避困難だ、横槍として撃ち込まれるそれは非常に鬱陶しく厄介だろう。しかし反撃しようにもパルスシールドと中量二脚の機動性が厄介だ。相手は固く、そして回避も反撃も行える余裕が常に担保されている。

 

『厄介だな、スティールヘイズとでは相性が悪いと見た』

 

「ハンドガンにライフル、下手に撃ち合うより近距離で押したほうがいいか」

 

イグアスを撃とうとすればわざとパルスシールドに撃たせた後でG7が接近し、敵の弾薬を浪費させる。対してシナノではマシンガン二丁という武器構成で撃たれたとしてもそれ以上に撃ち返す、体力で劣る敵にとって単純な削り合いというのは避けたい筈だ。

 

「お前は壁の中に入る前に、潰す!」

 

侵入されたが最後、G4は死ぬ。彼が死んだら純粋な火力担当が居なくなってしまうだろう、それは絶対に避けなければならない。

 

『レッドガンのG13、いや7か。あまりに早い昇進だとは思ったが、やはり出来る相手らしいな』

 

「それはお前が言える立場かッ!」

 

マシンガンの弾幕が機動力で勝るヴェスパーⅣの機体を絡め取り、確実にダメージを蓄積させていく。元々シュナイダーの機体は装甲を軽視しがちだ、果敢に攻め立てればいずれ…

 

「馬鹿野郎、計器くらい見ろ!」

 

冷却が終わり、パルスシールドを再展開したヘッドブリンガーがループザループを庇う。そして冷静になったシナノの耳に聞こえて来たのはACSの負荷が危険域に達している際に発せられる警告音だった。

 

「ハンドガン、か」

 

衝撃力に優れ、相手のACSに負荷を溜めやすい武装だ。火力こそ低いものの、他の武器による追撃を考えればおつりが来る。

 

「何やってんだ、頭冷やせ!」

 

「すみません!」

 

しかし状況はレッドガンが優勢だ、流石のヴェスパーⅣも攻めあぐねているように見える。

 

『立て直しも早い、厄介だな。こちらも2機で叩こう、そちらに合流する』

 

『621、市街地の脅威は排除した。ヴェスパーの番号付きと合流して目標を撃破しろ』

 

軽量機特有の身軽さで飛び上がった敵機は市街地へ向けて飛行し始めた、レイヴンと合流するつもりなのだろう。そうなれば手が付けられない、ここで倒し切れなかったのは不味かった。

 

「追撃します!」

 

「それしかねぇな、ヴォルタが出られるようになるまでは死ぬなよ!3機であのクソ傭兵共々ぶっ殺してやる!」

 

『まだ少しかかる、俺だけになるのは御免だぜ』

 

「お前との連携前提で機体組んでんだ、サッサと出て来やがれェ!」

 

市街地に向け砲撃を敢行するベイラム・ジャガーノートは健在だ、このルートであればヴェスパーⅣを野放しにせずに戦えると分かったのは大きい。キャノンヘッドが動けるようになれば火力差は一気に開く、勝ち筋が見えて来た。

 

「やれるか新入り、相手はお前より強いぜ」

 

「数合わせ程度なのは分かってます、ですが犬死にする気はありません」

 

「無駄に熱くなりやがって…損だぜ、その考え方はよ」

 

レイヴンにはG7が、ヴェスパーⅣにはG5が応戦する。二丁のマシンガンは探査用ACの装甲を削り飛ばすが、有効射程の短さを念頭に入れて戦う必要がある。少し距離が離れれば元々集弾性の低い砲弾はばらけ、急速に運動エネルギーを減らしてしまう。

 

「本当に探査用ACなのか、ジェネレータを載せ替えただけでこうも…!」

 

青い噴射炎を輝かせ、巧みな回避機動でマシンガンの弾幕を最小限の被弾で掻い潜る。やはり一筋縄ではいかない相手のようだ、弾が切れる前に決着を付けなければ。

 

「分かってる、お前はこのタイミングでこっちに来る」

 

空になった弾倉を取り外し再装填を行うまでの間、ループザループは射撃兵装が封じられる。その瞬間をレイヴンが見逃す筈も無く、パルスブレードを構えて一撃を叩き込むために接近した。

 

「俺からすれば何度見せたか分からないが、そっちからすれば初見だろう?」

 

幾度となく見た動きを読み切り、後の先をとった完璧に近いカウンター。機体の背部ハッチが開き、ヒートシンクが飛び出し光る。

 

「自爆以外に使えるんなら、万々歳だ!」

 

アサルトアーマーによって引き起こされたパルスの奔流が敵機を襲い、ACSをダウンさせる。その先を逃さず、一気に接近してから渾身の蹴りを叩き込む。しかし流石は探査用、中々の剛性でコックピットを守って見せた。

 

「まだ倒れないか…」

 

損傷した双方がリペアキットを使い、機体が青白く輝いた。これで装甲はまだ機能するが、マシンガンの弾薬はあと少しといったところだ。対する相手は弾持ちの良いライフルにパルスブレード、息切れするまでには自分があと数機必要だろうとG7は試算した。

 

「なら短時間で終わらせるまでだ!」

 

機体がぶつかるような距離で撃ち合い、四肢を使った格闘攻撃すら合間合間に叩き込まれる。機体胸部のセンサが割れ、手がひしゃげ、装甲が割れて飛び散る。

 

「新入りィ!」

 

『硬いが、それだけだな』

 

「んだとテメェ、舐めんじゃねぇぞ!」

 

損傷が次々と重ねられていく凄惨な戦闘を見たイグアスが援護しようとするものの、振るわれたレーザースライサーがパルスシールドを削り取る。相手はよそ見を許さない攻撃でイグアスの機体に傷を増やし続けている、やはり一対一ではヴェスパーⅣの方が上手らしい。

 

「ダメージはそっちも…相当らしいな」

 

「…」

 

睨み合うループザループとLOADER4だが後者の方が被弾箇所は限定されている、装甲が薄く脆弱な箇所は他の部位で庇っているのだ。咄嗟のダメージコントロールが異様に上手い、ラッキーショットが決まるとは思わない方が良さそうだ。

 

「(どうする、両肩のミサイルだけじゃあ到底敵わない。かと言って補給に戻ることも出来ない、ジリ貧だ)」

 

彼の武装選択は間違っていなかったが、継戦能力の低さまでは思考が及ばなかった。非常に強力な武装ではあるものの、ヴェスパーⅣのスティールヘイズに対しても使った後では弾が足りない。

そう思った瞬間だった。

 

「ざまぁねぇなお前ら、ボロボロじゃねぇか」

 

『まさか…!』

 

ヴェスパーⅣの機体が咄嗟に回避を行ったかと思うと、爆炎が視界に広がった。戦場に叩き込まれた二連装グレネードが場を制し、頼もしいキャタピラの擦れる音をマイクが拾う。レッドガンの最大火力、G4のお出ましだ。

 

「援護遅せぇぞ!」

 

「新入りよりも前にへばっちゃあ格好付かねぇなイグアス、華奢な野郎から片付けるぞ」

 

『…引き摺り出してしまったか』

 

二対二から三対二、形成逆転だ。それに市街地へと侵攻しようとしたアーキバスのMT部隊は予想外の戦力であるベイラム・ジャガーノートによる砲撃で大損害を被っており、状況は決したと言える。

 

「レイヴン、俺はお前を…」

 

その瞬間だった、壁が揺れたのは。通信機からは悲鳴が聞こえ、誰もが逃げ惑う様子が容易に想像出来た。外から攻撃を受けているのではない、明らかに内部で被害が発生している。

 

「何だってんだぁ!?」

 

『こちらヴェスパーⅥ メーテルリンク、壁内部への侵入に成功しました。予定通り破壊工作を行います』

 

ヴェスパーの別動隊はもう一つ居たらしい、よりにもよってACの侵入を許してしまった。G4が中にいれば状況は変わったかもしれないが、そんなことを考えても目の前の被害はなくならない。

 

『スネイルの考えそうなことだが…すまない、こちらは元から囮にする計画だったらしい。引くなら今が引き時だろうが、そちらはどうする?』

 

『…撤退しろ、621』

 

「待てッ!」

 

後退するレイヴンの機体にマシンガンを向けようとするが、腕が言うことを聞かない。遂に駆動系が死んだらしい、機体は関節から火花を散らして膝を付いた。

 

「ああクソッ…こんな所で!」

 

だが機体に当たり散らすわけにもいかない、自分が至らないせいで要らぬ負荷をかけてしまっているのは事実だからだ。相手は性能の劣る探査用ACでこちらに差を付けていたのを見ても分かる通り、一重に自らが弱いせいでまた機体を壊してしまった。

 

「俺達は壁に急行するぞ、逃げられちまいそうだが…」

 

「新入り、お前はヘリに回収して貰っとけ」

 

「…了解」

 

こうして、壁に対して行われたアーキバスの強襲作戦は一定の成果を上げた。投入された独立傭兵の手によってG7は撃破され、G5に関しても無視出来ない損傷を与えている。壁内部に侵入したヴェスパーⅥが今後の調査活動に必要だった各種機材を破壊したことで、今後のコーラル調査に大きな遅れが発生することは確実だ。

 

壁の攻略に固執せず今後の調査活動において有利に立つ道を選んだアーキバスの戦略的勝利と言える結果に、ベイラムの上層部は巻き返しを図ろうと躍起になるのだった。




一区切り。
評価とお気に入り登録、感想なんかもよろしくお願いします!

新パーツ追加!嬉しい!
…シュナイダーはうん、自重しよう。
パルスハンドミサイルが使い勝手良くて好きですね、バルテウス対策に滅茶苦茶良い。これ担いで動力ブロック破壊Sランク目指して来ます。

肩ガトリングも良いものだったので、シナノ君の装備候補入りだぞ。
頑張って使いこなすんだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。