訓練生はルビコン川を渡ることが出来るか?   作:明田川

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グリッド086

「…北部ベイエリアが消失?」

 

『ルビコンの大火と同じ原理だそうだ、封鎖機構が抑えてた施設の一つからコーラルが噴き出した結果らしい』

 

「SGの戦力はそう手薄くは無かった筈だが、手を出した奴は正気じゃないな」

 

『本当にな、奴らも黙ってねぇぜ』

 

アーキバスと解放戦線のMT部隊が争っていたところに参戦し、双方を殲滅した。片方が雇っていたであろう独立傭兵は最初に狙われ、ガトリング砲四門という圧倒的な火力によって装甲をコックピット諸共削り取られた。

 

「緊急の連絡はそれくらいか?」

 

『ああ。回収するから壁に戻るぞ、これから忙しくなるに決まってる』

 

既に彼はリスタートによる学習がなくとも、並の部隊程度であれば単機で相手が出来るほどに成長していた。ヴェスパー中位クラスともある程度やりあえるだろう、ここまで短期間で実力が付くのは誰にとっても想定外だった。

 

「次の仕事は?」

 

『大陸間輸送システムの確保だな、カタパルトやら船やらなんやら…兎に角掻き集める必要がある。グリッドに住み着いてるドーザー連中の排除が大変だぞ』

 

G5ことイグアスはそのドーザーから小遣い稼ぎのために依頼を受けようとしていたらしく、ミシガンからそんな暇は無いとばかりに一蹴されていた。独立傭兵達も移り変わる主戦場を見て行動が活発化しているようで、今まで戦場では無かった場所でも遭遇戦が起こりうる。

 

「ドーザー、コーラル中毒者か」

 

『どの星でも薬中ってのは救えねぇよ、こんな星じゃあクスリに逃げたくなるのも分かるがな』

 

着陸したヘリがハッチを開き、その中へとACを収める。後始末を任された仲間のMT部隊に見送られ、大豊現場組の出世頭はある種の憧れを抱かれるまでになっていた。

 

ーーー

ーー

 

殆どがアーキバス製のVP-44sフレームで構成された機体は頭部だけが元の頭部、レイヴンもとい621が元々使っていたFINDER EYEが搭載されている。ここグリッド086はドーザーが仕切る勢力圏内、どう言った理由で独立傭兵が立ち寄るに至ったのだろうか。

 

「…」

 

『レイヴン、新たな機体反応です』

 

ウォッチポイントで出会ったルビコニアンを名乗る謎の人物、エアとの通信も良好だ。コーラルを通じて話しかけて来ているらしいが、詳しいことは分からない。

 

「交渉に来ただけだ、カーゴランチャーについて聞いておきたい」

 

「企業の人間が紳士的にお話かい?」

 

ドーザーの技術者集団RaD、その頭目であるカーラと一機のACが話をしていた。雰囲気は良いとは言えないが、少なくともACは即座に武器を使う気は無いようだ。

 

「商談という奴だ。こちらはルビコニアンと敵対しているが、そちらも売る相手は選んでいないだろう」

 

『G7シナノ、ACループザループですが…機体の装備が情報と一致しません』

 

両肩には物々しい軽量ガトリング砲二門、手にはライフルとマシンガンが握られている。機体はメランダー一式、ミリタリーグリーンに赤い差し色が映えていた。

 

「おや、お客さんは一人じゃあないみたいだね」

 

「お前はッ!」

 

『レイヴン、見つかったようです』

 

反射的にライフルを向けたG7シナノだったが、動じる気配がない621の機体を見て武器を下げた。独立傭兵を出会ったからと言って撃てば今後の雇用に響く、それにこれ以上トラウマを増やしたくなかった。

 

「…すまない、独立傭兵レイヴンだな?」

 

器用にも頷いて見せる621のACを見たシナノは敵対する意思がないことを理解し、ここは協力出来るならしておこうと考えた。

 

「大陸間輸送用のカーゴランチャーに興味があるのであれば協力しよう、幸い独立傭兵を雇う権限は今持っている。そちらもタダで働きたくはないだろう、その金で背中を撃たないでくれればそれでいい」

 

『レイヴン、確かに指名された依頼が届いています。罠とは思えませんが、どうしますか?』

 

621は依頼であればと即座に了承、グリッド086への侵攻に加担することを決めた。悩まないのかと少し不安になったシナノだが、強いことを誰よりも分かっている相手が一時的に仲間となるのは心強い。

 

「灰被りのカーラ、悪いがそちらがその気になるまで暴れさせてもらうぞ」

 

『なるほど…進めそうなルートを探しておきました、行きましょうレイヴン』

 

「先導してくれるのか、なんというか…複雑な気持ちだな」

 

RaDのMTを蹴散らし、二機は進む。純粋な戦闘用に乗り換えたためか、レイヴンの動きに無駄な揺れが無い。発生する振動が少ないと言うべきか、前以上に手強くなったに違いないとシナノは感じた。

 

「いい機体だな、アーキバス製か…」

 

『レイヴン、この方とはお知り合いなのですか?』

 

621は今までの交戦記録を見るようエアに促すと、ウォルターが保管していたそれをあっさりと持ち出して見始めた。

 

『何かと、縁のある方なのですね』

 

含みのある言い方をしたエアの言葉は、確かに二人の関係を良く表していると言えた。

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