訓練生はルビコン川を渡ることが出来るか?   作:明田川

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深度2

 安全装置を外すことで可能となった下に向かってのアサルトブーストという危険な手段を使い熟すG7の活躍により、縦穴の最奥に位置していた砲台は無事撃破に成功した。MT部隊への被害は少なく、ベイラムはアーキバスに先んじて纏った数を地下へと送り込むことに成功した。

 

「どうも、貴方がG7ですね?」

 

「はい!」

 

「まあそう固くならずとも、同じレッドガンの隊員として話をしたいだけですよ」

 

 縦穴区画を制圧した後、更に送り込まれてきた戦力には新たなレッドガンの姿があった。G3五花海はベイラムの経済圏を脅かしたド級の詐欺師であった過去を持つACのパイロットであり、その胡散臭そうな雰囲気はなんとも言い難い。

 

 レッドガン隊員との顔合わせの際には運悪く同席出来ずに居たため、実際に機体から降りて顔を合わせるのは今回が始めてだ。

 

「稚拙なベイラムの作戦を自身の技術でもって成功に導くとは、貴方は期待出来る新人ですねぇ」

 

「ありがとうございます!」

 

「今後の調査には私も参加しますが…どうにも吉穴が見えません、このまま良い方向に進むとは考えない方が良いでしょう」

 

「それには同感です、性急過ぎるとは薄々感じていました」

 

 アーキバスは封鎖機構の兵器を多数鹵獲しており、今後の戦力差はベイラムが不利になる方向に動いていくだろう。

 

 レッドガンもナンバー後半の8〜13が欠番の状態が続いており、それ以外の戦力も封鎖機構から受けた傷は深かった。アイスワーム討伐に際しての混成部隊編成においてG13の名は因縁の独立傭兵に貸与されたのだったか、兎に角欠けた戦力は多いのだ。

 

「ベイラムは遅かれ早かれ大敗する時が来るでしょう。地下で取り残されたくはないのですがね、貴方はこの先どうなると考えていますか?」

 

「退路は縦穴のみ、頭を抑えられると非常に危険です。特に強襲艦を有するアーキバスにとっては撃ち下ろしやすい地形…」

 

入り口は一箇所のみ、地上の補給路が絶たれれば後は地獄だ。地下での調査が長期に渡るとなれば人員の疲労も増していく、見切り発車で行っていい突入作戦ではなかっただろう。

 

「ベイラムと自律兵器が戦っている間にアーキバスが漁夫の利を狙うかと」

 

「…貴方は足し算以外も出来るようだ、これは期待が増すというものです」

 

「ありがとうございます!」

 

彼はそう言ったが、なんとも言えない表情で俯いた。そしてこちらに向き直り、顔や身体から乗機に至るまで観察するような視線を浴びせられる。

 

「あ、あの、何か?」

 

「これから先では凶兆も多く見られるでしょう、ゆめゆめお忘れなきよう」

 

既に何度も死んでいるのだ、死に愛されている可能性も無くはない。

 

ーーー

ーー

 

 アレから数日、地下の調査はゆっくりとだが進んでいた。地形は良いとは言えず、MT部隊では辿り着けない場所も多い。

 

「この区画の電力復旧にはどれくらいかかりそうだ?」

 

「工作部隊は本日中にエレベーターを動かせるようにするとのことです」

 

「分かった」

 

 問題は山積みであり、特に封鎖機構がこの階層に配備した機動兵器が厄介だ。敵の主砲は非常に強力であり、遭遇したMT部隊が生きて帰れることは稀という有様で情報も少ない。

 

「どうしたものか…」

 

「オイ命知らず、そっちはどうだ」

 

「イグアス先輩、お疲れ様です!」

 

「補給シェルパの数が減ってやがる、補給部隊が襲われたってこたぁ…こりゃあ何か来るぜ」

 

 アーキバスがこの状況を放置するわけがないとは思ったが、ついに入り口を押さえにきたのだろうか。奴らのやり方通りであれば傭兵を先んじて送り込むのがセオリーだが、そんな便利な独立傭兵と言えば…

 

「あの傭兵が送り込まれてくると?」

 

「わかってんじゃねぇか、アイツが来るとすればMTなんざ障害にもなりゃしねぇ」

 

「となると我々で叩く必要がありますね」

 

「封鎖機構のデカブツも倒せてねぇ、面倒なことになったな」

 

 これ以上の増援は期待出来ないかもしれない、現状の戦力で以前よりも装備を整えたであろうレイヴンに勝てるだろうか。正面から戦っても苦戦を強いられるのはよく分かった、ならば絡め手を使うべきだ。

 

「…一つ作戦があります、完全に賭けですが」

 

「んだよ、聞かせてみな」

 

「封鎖機構とレイヴンをぶつけます、そして勝った方をレッドガン3機で潰すんです」

 

「出来りゃ苦労しねぇよ、第一どうやって奴らを戦わせんだ」

 

 机上の空論でしか無いのは事実だ、敵機を誘導するにしても課題が多過ぎる。だが不可能ではない、確率が少しでもあるなら試行回数でそれを乗り越えるまでだ。

 

「この区画をレイヴンに素通りさせて、途中で遭遇するように自分がデカブツを誘導します」

 

「だから、それをどうすんだって話してんだろうが」

 

「やってから考えます」

 

「テメェ死ぬ気か!?」

 

「自分じゃレイヴン相手に勝てません、遅かれ早かれです」

 

 自分が死に戻りを使うことで常人の何倍もの操縦時間を得ているのにも関わらず、因縁の傭兵とは差が縮まった気がしない。むしろ広がって居る気すらする、勝つために手段を選んでは居られないのだ。

 

「…どうやって一人で二機を誘導する気だ、馬鹿が」

 

「それは、そうですが」

 

「テメェはデカい奴の相手だ、レイヴンはこっちに寄越しな」

 

「イグアス先輩…!」

 

「ケッ、五花海にも話通しに行くぞ」

 

 この日を境にベイラムの活発だった動きは鳴りを潜め、不気味なまでに静かになった。それを見てアーキバスは偵察として独立傭兵に依頼を出し、地下施設を巡る戦いは先へと進んでいく。

 

 この時は地下のその更に下にあるものがなんなのか、そしてそれによって何が巻き起こるかなど…この時の自分は想像も出来なかった。

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