訓練生はルビコン川を渡ることが出来るか?   作:明田川

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第四話 強襲

「G13?」

 

「お前のコールサインだよ、一番下のナンバーな上に話を聞いてると仮入隊ってところだろうがな」

 

「レッドガンに…俺が?」

 

「お前どれだけ働いたと思ってんだよ、新人としては異常なレベルの出撃頻度だぞ」

 

四脚MTを倒したことで並の傭兵以上に使えると判断された彼は、アーキバス陣営のMT部隊を倒すために出撃を繰り返していた。彼自身としても実機の搭乗時間を1分でも多く取りたかったこともあり、この無茶振りは続いていた。

 

「多分ミシガン総長が気を回してくれたんだろう。レッドガンともなれば多少はマシになる…かもしれないって話だ」

 

「レッドガンも損耗率が高い、特にG13は」

 

「すぐ死んで入れ替わるアンラッキーナンバーだ、欠員が多いんで上を狙えるとは思うが」

 

「欠員…」

 

「お前今日は本当にヤバかったんだからな、レッドガン関連の事務処理が終わるまでは暫く休め!」

 

格納庫にある彼の乗機は、今にも爆発四散しそうな程の損傷を受けていた。上層部からの情報に誤りがあり、投下された先で独立傭兵とMTの混成部隊に襲われたのだ。

 

「独立傭兵が前戦った奴より弱かったからなんとかなったが、ありゃ新人にやらせるような任務じゃねぇよ」

 

「BAWS製の旧式で武器も二つだけ、勝てなきゃこの先やっていけない部類の相手だった」

 

「その変な時に頑固な所、直した方が良いと思うがな」

 

ここ数週間で倒した敵の数は3桁を超え、ACすら数機を撃破していた。アリーナでも仮想戦闘を繰り広げ、再現された相手とはいえ勝ち上がっている。実力は十分、そう判断出来るだけの材料は揃っていた。

 

「でも生きて帰れた、一度も死なずに」

 

「一度もってお前なぁ、人生は一度きりだぞ?」

 

「はは、どうだか」

 

リスタートすることなくACを倒し、MTも残骸に変えた。頭部が吹っ飛んで無くなった時は流石に肝が冷えたようだが、胸部のサブカメラに切り替えて難を逃れたらしい。

 

「それにレッドガンになったんだから予備パーツの使い回しで戦う必要もなくなる、機体構成に関しても色々と考える必要があるんじゃないか?」

 

「確かに」

 

「安物の四連装ミサイルなんて取っ払ってだな、八連でも十連でも載せりゃいいんだよ。そう思うだろ、こんな余り物で出撃させやがって…」

 

「色々と考えてみる、カタログを持ってたりしないか?」

 

「…アーキバス系列のパーツはダメだってよ、組める範囲で組んでくれ」

 

「分かった、いつもありがとう」

 

オールマインドを経由すれば他社パーツも購入出来るが、流石にそこまでする必要は無いだろう。ガレージに鎮座する損壊した愛機を見ながら、これからどのような機体に乗るべきかを考え始めた。

 

「MT部隊とACを相手にしても戦える装備が必要、でもそれじゃあ器用貧乏になりかねない」

 

近接武器は必要だ、弾切れになっても戦える。ミサイルも必要だ、小型の敵を素早く一掃出来る。射撃武器は弾持ちが良く、牽制にも使える汎用性の高いものが欲しい。どれも決して単純に攻撃力が高いと言える武器ではない、だが強みを活かせる機会は多い。

 

「そこは腕でカバーする、あの傭兵のように」

 

あの独立傭兵、後で知ったがレイヴンとか言うパイロットは凄まじかった。威力が高いとは言えないライフルと安物の四連ミサイルでこちらを圧倒していたのだ、どんな武器も使い方次第ということだろうか。

 

「如何に近接攻撃を叩き込むか、それだな」

 

彼は機体構成を纏めた後、傭兵支援システムであるオールマインドに接続する。今必要なのは強敵との戦闘経験だ、そう思い仮想空間で再現された数多のAC相手に訓練を始めた。

 

「二度目は勝って見せるぞ、レイヴン」

 

ーー

ーーー

 

「これがお前の新しい機体か!」

 

平均的な性能を持つベイラム社製のACパーツであるMELANDERの頭部と胸部、大豊製である天槍の腕部と脚部を装備した機体が搬入されて来た。それを今か今かと待っていた元訓練生とヘリパイロットだったが、格納庫にやって来たのは見慣れたACだった。

 

「…オイ、武器以外は前と変わってないぞ?」

 

「これからすぐ仕事が始まるのに機種転換訓練を挟みたくないんだ」

 

「そう言われるとそうだなとしか返せねぇよ、前のテスト機も同じような機体構成だったのは確かだしな…」

 

「毎回機体を組み替える奴なんて余程の超人だよ、機体特性が変わりすぎて動かし難くなる」

 

テスト機とG7ハークラーの機体は腕部と脚部が同じパーツだ、操作感が似ていてレイヴンとの戦闘で培った経験をそのまま活かせるというのは大きい。機体は他のMT同様に簡素なミリタリーグリーンで塗装されているが安っぽさは感じず、中々様になっていると言えるだろう。

 

「BAWSのバーストライフルか、良い選択じゃねぇの?」

 

「リニアライフルも良かったけど、射撃反動とオーバーヒートが怖かったから採用は見送った」

 

「堅実さが物を言うときは多いしな」

 

肩には四連装ミサイルを単純に強化した六連装ミサイルと、撹乱のために8連装垂直ミサイルを装備した。二種類の弾道を同時に使うことで、より複雑な回避を相手に要求する作戦だ。

 

「OSも幾らかチューンした、重量を活かした蹴りも出せる」

 

「手札が増えたな」

 

「数字を貰ったんだ、その分は働いて見せ…」

 

機体の状態は万全だ、今にでも乗って試したい。その願いに神は応えたのか、格納庫の中にまで警告音が鳴り響く。そして大きな振動が基地全体を揺らし、多くの兵士に混乱をもたらした。

 

「んだよ、非常事態か!?」

 

「…この場合パイロットは機体内で待機するんだったよな?」

 

「ヘリを出せるかやってみる、何が起きたんだ畜生!」

 

搬入されたばかりの機体に乗り込み、整備員達に退避するよう促す。そして基地の通信回線と繋ぎ、この状況で下される指示を待つ。

 

『現在我が基地が存在するグリッドは解放戦線による攻撃を受けている!』

 

「解放戦線がここまでの攻撃をこちらに与えるとなると、大型兵器か」

 

『敵は武採掘艦ストライダー、アイボール砲台による長距離攻撃だと思われ…』

 

二度目の衝撃がグリッドを襲い、司令部からの通信が途切れる。通信機を弄ってはみるが、いつもの回線は何も言わなくなってしまった。

 

「司令部からの通信が届かない」

 

「グリッドの設備をそのまま流用してたツケが回って来たんだよ、軍用レベルの冗長性を持ってる訳がねぇ」

 

「このまま撃たれ続けると基地がなくなる、打って出よう」

 

「合点承知だ、やられっぱなしは性に合わん!」

 

格納庫の中を進み、ハッチの固定器具をパイルバンカーで吹っ飛ばす。グリッドの外へ出るように動き続けると、その先にはヘリが待っていた。

 

「良く出てこれたな、乗ってくれ」

 

「そっちも早かったな…ここからどうする?」

 

「機体を地上に降ろすくらいしか思いつかねえよ、ストライダーの甲板に着陸って訳にもいかねぇし」

 

大量のミサイル砲台が睨みを効かせているため、輸送ヘリは簡単に撃墜されてしまうだろう。G7ハークラーのように墜落して死にたくはない、少し離れた箇所から攻撃を仕掛けて気を逸らすしかないだろう。

 

「これでもお前のオペレーターだ、こんなこともあろうかとあのデカブツについては調べてある!」

 

「どうすれば?」

 

「アレは解放戦線にとって重要な戦力、反抗の要とも目される兵器だ。つまりある程度の損傷さえ与えれば撤退する…と思いたいな」

 

この場で大型兵器に大きな損傷を受けることは避けたい筈だ、企業との戦闘も激化する中で失っていい戦力ではない。

 

「アイボール砲台の砲撃を潜り抜けて脚部を攻撃してくれ。歩いて移動してるって構造上装甲は厚いと思うが、攻撃されたくはない筈だ」

 

「了解、やってみる」

 

「主砲を喰らうと一撃で装甲が蒸発するぞ、機動力を活かして回避を…」

 

ヘリのコックピットに警告音が響き、アイボール砲台からは青い光が漏れている。この距離でも敵を捕捉できるようだ、このままでは不味い。

 

「機体の投下と、その後で全力で回避を」

 

「まだ高度が!」

 

「なんとかする、してみせる」

 

後部ハッチが開き、ACが投下される。ヘリは搭載していたフレアとチャフをばら撒いて反転、回避行動を取り始めた。

 

「…薙ぎ払うような撃ち方、上手く狙えないのか?」

 

アサルトブーストを起動し一気に加速、新たな熱源としてストライダーに自機を認識させる。敵のレーザーはこちらを狙っている、ヘリが巻き込まれる心配は無い。

 

「これなら…避けられる」

 

高速移動中にクイックブースト、噴射炎と共に機体が横にズレる。レーザーはほんの少し機体の塗装を焦がしたが、損傷になるような被害は受けていない。

 

「ご足労頂き感謝とでも言いたい所だが、今回は死んでやり直す気は無い!」

 

ストライダーに向けて、一機のACが突貫した。

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