「新しいコールサインも考えないとな、好きな川あるか?」
「川…と言われてもなぁ」
「レッドガンのコールサインは地球の川から命名されるからな、カッコいいのを探そうぜ」
基地の襲撃事件から数日、早くもボロボロになってしまった機体の修理は終えられつつあった。問題のストライダーは脚部の一つに大きな損傷を受けたため、撤退を選んだのだ。
「それにしてもG13になるって話を貰った途端にあの騒ぎ、このナンバーは本当に呪われてるらしいな」
「そう見たいだな、流石に今回は死ぬかと思った」
「弾切れになっても足から離れなかった癖によく言うぜ、あれで装甲が剥がれただけってんだから恐ろしい話だが…」
機体に無茶をさせ過ぎたらしく、雨霰と降り注ぐミサイルと退避中に受けたアイボールの照射は片腕と片足を抉り取っていた。なんとか生きているブースターで退避したものの、ヘリが戻って来てくれなければ危なかっただろう。
「アーキバスグループの奴らはお前がやったことに気がついたらしい、装甲の剥がれた脚部を追撃するようにと傭兵に依頼を出したとかなんとか…」
「なんというか、情報が早いな」
「お前が暴れ回ったお陰でマークされてんだよ、解放戦線がわざわざ基地ごと潰しに来たのも連続して出撃してはMTを潰したからじゃねぇの?」
基地は数回の照射を受けた結果、中々の被害を受けている。過去の大災害から生き残った建造物とはいえ、エネルギー兵器からの防御を考えた設備があるわけが無かった。
「でもまあ、レッドガンの正式加入前に実績が用意出来たじゃないか」
「…確かに!」
「ストライダーの足をへし折って…はないか、追い返したのは俺だぜって言ってやれよ。今度はダムを襲うらしいしな、同じ隊との仕事には事欠かない筈だ」
「ガリアの多重ダムか、出来れば参加したかった」
「機体がこれじゃあな」
機体の半分が吹っ飛んでますが参加出来ますかとミシガン総長に連絡した所、新人隊員の戦力が既に二等分にされた状態で何をするのかとお叱りを受けた。機体で割り算を試すなとも言われてしまい、当然ではあるが初の作戦参加は遅れそうだ。
「元から出撃しまくったお陰で予備パーツも払底してる、お前の大好きなオールマインドと仮想訓練でもするか?」
「実は戦える相手とはもう戦ったんだ」
「そのうちAC狂いって噂がたつぞ、いやもう立ってるか…」
使える機体が無くなった、レッドガンも別の任務を行っているために仕事もない。となればどうするか、暫くコックピットの中で過ごしていた彼はどうすればいいか思いつかない。
「暇だ、どうしよう」
「寝たらどうだ?」
ーーー
ーー
ー
補給が届き、修理に必要なACのパーツが格納庫にまで運び込まれる。機体は新品の腕と足を取り付けられ、今にでも敵を蹴散らせそうな兵器としての威厳を取り戻した。
「移動のお時間だ、私物は持ったな?」
「ヘリに載せておいた、機体共々よろしく」
「任せろと言いたい所だが、まあストライダーの時みたく放り投げられないことを祈ってくれ」
これからはレッドガンと行動を共にするのだ、この基地ともおさらばということだろう。テスターACを運ぶだけの任務だった筈が、あれよあれよと大事になっている。
「…それとだな、恐らくお前にとって嫌なニュースが二つもあるんだ」
「良いニュースはないのかよ」
「片方は良いニュースとも取れるんだがな、お前にとってと言ったろ?」
ヘリに乗せられたACの中でパイロットの言葉を聞きつつ、少し身構える。彼は何かと気をかけてくれるが、この手のことは下手に取り繕うことなくしっかり伝えてくれるのだ。
「ストライダーがお前を襲った独立傭兵、レイヴンに撃破された」
「…やっぱり活動してるのか」
「足の装甲を一つ駄目にしたとはいえ、アイボールの照射を掻い潜って単騎で撃破。やっぱり相当の凄腕だな、ポッと出の低ランクとは思えない強さだよ」
あの時の強さは紛れもない本物だった、このまま彼が依頼を成功させて機体を整えればどうなるか分からない。あの探査用から乗り換えるだけでも手に負えなくなる、そんな気がしてならない。
「次はお前さんの初任務だが…解放戦線の有する要塞である通称"壁"に関するものなんだ、ハッキリ言ってヤバい」
「内容は?」
「先輩のG4ヴォルタとMT部隊が壁に突入するんだが、お前さんは先に突入して突破口を開け…とのことだ。ハッキリ言って死んでこいって言われてるようなもんだぞ」
「…解放戦線にACは?」
「やる気なのかテメェ!死にたいなら勝手にしろよな!」
ヘリのコックピットからも直接聞こえそうな声量で彼は怒鳴り、G13となった青年はやっぱり怒るかと呟きながら少し笑った。
「…まあ司令部からの命令だ、従う他ないだろうがな」
「生きて帰って大豊のキャンペーンガールに声をかけるんだ、それまで死ぬ気はないって」
「それならサッサと13より上の番号を貰ってこい、G13ですなんて言おうもんなら死人と同じ扱いをされるに決まってるからな。美人とのツーショットが遺影になりたくなきゃ、今回の作戦の後も生き残ることだな」
「分かってる、死ぬ気はないんだ…本当はね」
ヘリはルビコン3の空を行く、地上に眠る幾多の残骸には目もくれずに先へ先へと向かうのだ。