訓練生はルビコン川を渡ることが出来るか?   作:明田川

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第七話 G4

投入を待っていたレッドガン主力部隊、その中核を務めるのはタンク型のACだ。非常に強力な武装で身を固めたその機体は、レッドガンでも上位のG4が搭乗するACに他ならない。

 

「…遅えな」

 

G4のナンバーを有する男、ヴォルタはコックピットの中でそう溢した。一度の顔合わせを最後に死地へと放り込まれた新人は撤退することも出来ずに死んだのだろうか。突入命令も何も来ないこの状況を訝しんでいた、上層部は突入を遅らせる気は無かった筈だ。

 

「可愛げの無ぇ野郎だったが、G13じゃあ仕方ねえか」

 

「おい、これ見ろよ」

 

「なんだってんだ」

 

前線の敵情報が次々とマッピングされ、壁の防衛設備が丸裸になっていく。伏兵として市街地の間に隠れていた大量の四脚MTの存在も明らかとなり、戦力比は壁が圧倒的だ。

 

「…こいつぁ、まさか」

 

「今度のG13はやる奴かもしれん、総長が目を付けるだけはあるか」

 

敵陣のど真ん中に突入したACが常にスキャンを行いつつ、戦いながら情報収集を行っているのだ。それも突入までに敵の歩哨を蹴散らし、即応部隊として待ち構えていた四脚MT三機を撃破してだ。

 

「何がG13だ、バケモンじゃねぇか」

 

「第何世代の強化人間なんですかね」

 

「知らねぇよ、大豊に聞けってんだ」

 

何はともあれ、壁の戦力配置は明らかとなった。防衛部隊を掻き回しているG13のお陰で突入は容易、この情報により混乱した上層部も突撃を命じる程度の冷静さは取り戻したらしい。

 

「突入命令だとよ!」

 

「頼むぜ、俺達のACは一機だけなんだからな」

 

「G13も頭数に入れてやれ、今回ばかりはな」

 

泣く子も黙るレッドガン、そのACとMTによる混成部隊は壁への突入を開始した。烈火の如く攻め上がる、その突撃を止められる者はこの場に居なかった。

 

ーーー

ーー

 

「…ここまで上手く行ったのは20週目くらいか、久しぶりに安定して来たな」

 

壁への突入というあまりにも無茶苦茶な任務をひたすらに繰り返す彼はある程度の最適化に成功し、苦戦していた四脚MTの連携にも対応出来るようになっていた。

 

「補給シェルパが欲しい、節約しても流石に数が多過ぎる」

 

これほどの拠点に解放戦線のACが居ない筈が無い、ACSへの負荷を効率的に貯められるミサイルは温存しておきたい。なんてことを考えていると、ライフルの弾薬がどんどん減っていく、パイルバンカーと蹴りの比重を増やしてもだ。

 

「正面のガトリング砲台と壁面の砲台も潰す必要があるな、ここまで潜り込めばご自慢のジャガーノートも射角が足りない筈だ」

 

BAWSの二脚は脅威にならない、四脚と砲台に気を付けつつ削れる戦力は削っておく必要がある。壁面にレールを用いて敷設された砲台群を片端から蹴り倒し、主力部隊に対して投射可能な火力を封じていく。

 

「たった一機を相手に何をやっている!」

 

「こっちの戦力配置を把握されているんだ、そうでなければ説明が…」

 

市街地に潜んでいた戦力は出会い頭にパイルバンカーを叩き込まれて吹っ飛び、重要な砲台は射角の外から反撃を許さずに処理された。まるで事前に何十回も練習をして来たかのような迷いのない動き、解放戦線が恐怖するのも宜なるかな。

 

「やるじゃねぇか新入り、正面は任せな」

 

壁上のジャガーノートが砲撃を再開したかと思えば、市街地にグレネードが叩き込まれた。製造元であるメリニットご自慢の榴弾はその威力を遺憾無く発揮し、数機のMTをその一撃でもって撃破した。

 

「G4と、キャノンヘッド…!」

 

「イグアスの野朗はサボりだ、悪いがACは俺一人になっちまった」

 

「百人力です、先輩」

 

「仕事を減らしてくれてありがとよ、後輩」

 

キャノンヘッドの火力はルビコンに存在するACの中でも随一だ、特にACSへの負荷を与えることに関しては死角が無い。解放戦線がBAWS製のACに乗って来たとしても、それは戦地に増え続けるガラクタを一つ増やすことになるだけだ。

 

「シェルパは譲ってやる、補給を済ませて俺の援護に回れ」

 

「了解です、他のMT部隊は…」

 

「同じ機体相手に負けるほどレッドガンは落ちぶれてねぇさ、上はどうだか知らんがな」

 

上層部の考えた無謀かつ思慮の浅い作戦は、G13という捨て駒によって何故か上手く回り始めた。物量による制圧は相手側の砲火力によって粉砕される筈だったが、壁面の砲台群は先程八割が沈黙したばかりだ。

 

それを好機と見て突入したG4とキャノンヘッドはMTを何の脅威とも思っていないかのように鏖殺して見せ、解放戦線にタンク型ACの恐怖という物を叩きつけた。

 

「…強い、勝てる気がしないくらいに」

 

市街地の影に飛来した補給シェルパを使い、装甲への応急修理と弾薬の補給を済ませる。補給地点はミリタリーグリーンで塗装されたレッドガンのMTが堅守しており、相手に横槍を入れられる心配は少ない。

 

「補給終わりました、護衛に感謝します!」

 

「良いってことよ、それより活躍して俺達を生きて返してくれってな」

 

「話は聞いてるぜG13、そのラッキーナンバー返上に期待してる」

 

「お前は先月の給料それに賭けてるもんな」

 

騒がしいが頼もしい、そんな彼らに見送られつつもG4の元へと戻る。すると既に四脚MTが二機ほど沈黙しており、丁度二脚MTをタンク型脚部の重量で蹴り飛ばしている所だった。

 

「早えな、新人にしちゃあ場慣れしてやがる」

 

「慣れざるを得ませんでしたから」

 

「まあいい、市街地の制圧はもう終わる。だが俺達はあのデカブツを片付ける仕事が残ってやがる、まだやれるだろうな」

 

「やって見せます」

 

総長であるミシガンからは批評家と評される彼だが、今回のG13はそのお眼鏡に適ったようだ。放たれた二連装グレネードが大きなシャッターを打ち破り、壁内部へと続く通路が現れる。

 

「時代遅れの鉄屑を動かなくするだけだ、行くぞ」

 

市街地では解放戦線が劣勢に立たされる中、二機のACがトドメを刺すべく重装機動砲台を叩きに動いた。ジャガーノートは未だ戦ったことのない相手、今までのように平静を保っての戦闘は難しい。

 

だが戦わねば、勝たねば帰れない。自身の血で汚れたコックピットを幻視する彼は顔を拭い、再度操縦桿を握り締めた。

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