ダンジョンにサイヤ人が入るのは間違っているだろうか?   作:雲呑麺

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第9話 九魔姫―リヴェリア・リヨス・アールヴ―

「「…………」」

 

「……え~と」

 

 ガレスのおやっさんと相撲で勝負して、圧勝してしまった俺……。

 フィン団長とリヴェリア姐さんにジッと見られて困ってます……。

 そんな信じられないものを見るような目で見られても……。

 

「……フィン、どうするのだ?」

 

「……そうだね、どうしようか?」

 

 姐さんと団長が揃って溜め息を吐く様に呟く。

 

「あの……どう、って?」

 

「……ガレスがその自慢の膂力で完敗を認めた。これは、ガレスをよく知る私達にとって非常に衝撃的な事だ」

 

「……時にいがみ合う事もあるけれど、僕らはこれで結構長い付き合いなんだ。ガレスの戦士としての誇りと技量を誰よりも信頼している。こと単純な力なら、ガレスはオラリオで最も強い男だと僕らは信じていた」

 

 フィン団長の言う事は、何となくわかる。

 おやっさんと姐さんと団長、この3人が強い信頼で結ばれているってことは、昨日今日会ったばかりの俺でも察せるぐらい明確だと思う。

 

 もしかして俺は、その信頼を崩してしまったんだろうか……?

 

「ああ、誤解しないでほしいんだけど、ガレスが君に負けたからと言って、ガレスへの信頼が崩れたりはしないよ、リーク。僕らのお互いへの信頼は、そんなに軟じゃない」

 

「!」

 

 顔に出てたか……。

 フィン団長に、やや凄みのある笑みで釘を刺された。

 暗に「侮るなよ?」と言われた気がした……。

 

「話を戻そう。さっきの『どうしようか?』というのは、僕の誤算から出た言葉だよ。君の、他の星の戦闘民族の力量というものを、僕らは侮っていた。僕らと同格のガレスを、余裕を持って圧倒できるだけの腕力の持ち主が、腕力だけが優れ、その他が劣っているなんて事はない筈だ。すると、凡そ僕もリヴェリアもまず太刀打ちできないという事になる」

 

 そうか、するともう試合をする意味がないってことか。

 じゃあ、もう今日はこれで終いにするのかな?

 

「……だから、腕試しはもう止めだ。ここから気持ちを切り替えて――『強者への挑戦』といこう」

 

「……はい?」

 

 いや、フィン団長……何故にそんな不敵な笑みを……?

 

 と、思っていたらリヴェリア姐さんが進み出て、持っていた杖を掲げてきた。

 しかも、姐さんも何か口角が上がっているような……あと、何か氣が少し上がっている?

 

「先にやらせてもらうぞ、フィン」

 

「ズルいなぁ、リヴェリア。僕が行こうと思っていたのだけど?」

 

「ここは団長としての器量を見せろ」

 

「リヴェリアこそ年長者の貫禄を見せて譲ってくれてもいいんじゃないかい?」

 

「歳の事を挙げるならば尚の事、歳下として年長者に譲るがいい」

 

「口達者だなぁ。まあ仕方がない」

 

 なんか付き合いの長い者同士の軽口の応酬があった様だが、試合は続けるってことでいいのか?

 

 で、次の相手はリヴェリア姐さん、と……。

 

「リーク、私はエルフであり魔導士だ。故に魔法が主な攻撃手段であり、最も得意とするところだ。これに関しては、現オラリオ随一を自負している」

 

「あ、うん」

 

 そう言いながらも、リヴェリア姐さんの氣はまだ高まり続けている。

 今は大体、戦闘力90ぐらいか。

 

「お前が圧倒的強者であると分かった今、得意とする魔法をぶつける以外、私に出来ることはない」

 

 リヴェリア姐さんの足元に光る魔法陣が浮かぶ。

 氣は更に高まり、戦闘力120代まで上がった。

 

「だから、無茶を承知で頼みたい。避けずに受けてくれ」

 

「おう?」

 

 なんですと?

 

「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に(うず)を巻け】」

 

 青い魔法陣が広がり、姐さんの長い髪とローブがはためき、氣は更に上がる。

 これは……魔法や魔力の類も、氣の高まりとして感じられているのか?

 

「【閉ざされる光、凍てつく大地。吹雪け、三度の厳冬――終焉の訪れ。間もなく、()は放たれる】」

 

 青かった魔法陣が、赤に変わった。

 

「【忍び寄る戦火、(まぬが)れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む。至れ、紅蓮の炎、無慈悲の猛火。汝は業火の化身なり。悉くを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを。焼き尽くせ、スルトの剣――我が名はアールヴ】!!」

 

 瞬間、魔法陣から赤い光の線が四方に走り、ルームの床から壁、壁から天井へと巡り――やがて全ての線が集結して俺を取り囲んだ。

 戦闘力――140!

 

「『レア・ラーヴァテイン』!!」

 

 リヴェリア姐さんが叫んだ次の瞬間――俺の目の前が真っ赤になった。

 

「ぐおぉぉぉ!??」

 

 熱い熱い熱い!?

 炎!?

 体に受けた熱風の衝撃は耐えられるが、炎の熱はちゃんと熱いと感じるし何なら火傷だって負う!

 リヴェリア姐さんの気迫に押されて馬鹿正直に受けたが、これ以上は無理!!

 

「ふんっ!」

 

ドンッ!

 

 全身から気を放出して、炎を吹き飛ばす――あー、熱かった……。

 辺りが大分焦げ臭い……。

 見れば俺を中心に地面と天井が黒焦げどころか、赤熱して軽く溶けている……!

 これ、戦闘服のブーツがなかったら足の裏に大火傷を負っていたかも……。

 

「……まさか、まるで効いていないとはな……」

 

 あ……リヴェリア姐さんが納得したような、悔しいような、複雑な表情を俺を見ている。

 

「いや、効いてない訳じゃないよ!?ちゃんと熱くて、あのまま喰らってたら火傷を負いそうだったから、氣で吹き飛ばしただけで……!」

 

「……本来、あれは相手に火傷どころか『熱い』とすら感じさせる間もなく焼き滅ぼす魔法なのだがな……。そう易々と、吹き飛ばせるものでもない筈なのだがな……!」

 

 あ……リヴェリア姐さんが悔しさ全開の厳しい表情になった。

 てか、焼き滅ぼすって――そんな魔法を俺に撃ったのか!?

 

「姐さん酷くないッ!?」

 

 避けなかった俺が言うのも何だが!

 

「五体満足で耐えておいて何を言う!」

 

「俺を五体不満足にするつもりだったんかいッ!?」

 

「それぐらいの気構えで放たなければ痛痒にもならないと判断したのだ!事実そうだっただろう!」

 

「そりゃ結果論ってもんだろう!!」

 

 クールで知的と見ていたエルフのリヴァリア姐さんが、割と脳筋寄りだった……!?

 

「ガッハッハッハッ!リヴァリアの魔法も弾き飛ばされるとはな!」

 

 ガレスのおやっさんが笑いながら言った。

 

「どうじゃ、リヴァリア。さっきのワシの気持ちが、少しは分かったか?」

 

「……ああ、分かった、分かったとも。野蛮なドワーフと気持ちを共有するのは、甚だ不本意だがな」

 

「ふん、それだけ減らず口が叩ければ問題なかろうな」

 

「……意趣返しのつもりか」

 

「ハッハッハッ!」

 

 う~ん、また軽口の応酬……なんて言うか、姐さんとおやっさんには会ってまだ丸一日も経っていないが、最初に会った時より若くなっている気がする。

 もしかすると、ファミリアの幹部として団員達へ示しとか威厳とか、それと闇派閥とかいう輩の事とか、考える事が多くてストレスが溜まってたとか……?

 人の上に立つ事が苦労が多いのは、前世も併せて経験のない俺でも何となく想像がつく。

 想像するだけでも面倒だから、実際はそれ以上だろう事も……俺は正直ご免被りたい。

 

「さて、リヴェリアの挑戦は一先ず終わりでいいかい?」

 

 おやっさんと姐さんの軽口がひと段落した頃合いを見計らったか、フィン団長が口を挟んだ。

 

「……ああ、今のまま何度繰り返したところで、結果は変わるまい。私の負けだ……」

 

「ガレスに続いてリヴェリアも完敗宣言か……凄まじいな」

 

 しみじみといった風に言うフィン団長だが……その槍を持った手に力が入っているのは、俺の見間違いではないと思う……。

 

「じゃあ、今度こそ僕の番だね」

 

 フィン団長はそう言い、手にした槍を空気を裂くような速さで振り回し、流れる様な動きで脇に抱える様に構えを取り、リヴェリア姐さんと入れ替わるように俺の正面に進み出てくる。

 

「リーク、胸を借りるよ」

 

 気の所為かな……?

 笑みを浮かべたフィン団長の背後に、何か猛獣の様な幻が見えるような……。

 




 リヴェリアの戦闘力の上昇については、ドラゴンボールの孫悟空達が『かめはめ波』等の気功波の技を撃つ際に上昇する設定を流用しました。
 他の冒険者達でも、魔法やスキルを使用した際に戦闘力が高まるものと考えています。

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