ダンジョンにサイヤ人が入るのは間違っているだろうか? 作:雲呑麺
この先、どう進めたらいいものか……。
※10/11誤字報告を頂き、誤字修正しました。
ずわい様、ご報告、ありがとうございました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
リューが輝夜・ライラと合流した一方――復帰したアリーゼの指揮の下、アストレア・ファミリアは闇派閥への警戒と民衆の救助活動を続けていた。
「補給、これだけか……?」
白灰色の髪と褐色肌の
「辛抱してくれ。民衆への支援物資が優先されていて、我々に回る分はまだ少ないんだ。武器の整備は鍛冶師達にやらせる。今はそれで、凌いでくれ」
「凌いでくれって……っ、はぁ、仕方ないか……」
思わず出そうになった文句を止め、ネーゼは溜め息交じりに言う。
ロキ・ファミリア団長『
しかし、それも十分な量とは言い難い……食料、医薬品、装備、アイテム……あらゆる物が不足しているのが現状であった。
物資が一般の民衆に優先して回される事は、都市の防衛・警戒に当たっている冒険者達に既に通達されている。
それ故、ネーゼも不服を飲み込んだのだ。
「欲しがりはダメよ、ネーゼ!」
そこに掛かる活発な声――アリーゼである。
「清貧の心は『正義』の基本!ファミリアが小さかった頃の節約殺法を思い出すの!ダンジョンアタックで大赤字を喫して、野草と塩のひっどいスープを『いいのよ』と微笑むアストレア様に七日七晩飲ませた時と比べれば、何てことないわ!」
「おい止せヤメロぉ!?こんな時に私達の黒歴史を掘り起こすなぁー!」
羞恥に頭と狼耳を押さえて悶えながら叫ぶネーゼ。
つい先程までの深刻な雰囲気を吹き飛ばし、その場に笑いが満ちる。
「ふふっ、そうね。あの時と比べれば、私達、まだいけるわ!」
薄青色の長い髪にやや下がり気味の目尻がおっとりした雰囲気を醸し出すヒューマン、アストレア・ファミリア団員マリュー・レアージュが微笑みながら言った。
「いざとなれば、またその辺に生えてる野草を食べてやります!」
マリューに続くのは、焦茶色の髪をショートヘアにしたヒューマンの少女、アストレア・ファミリア団員ノイン・ユニック。
「ああ、ちくしょうめっ。こうなったら、やってやる!これでいいんだろう、団長!」
ネーゼも元気を取り戻し、アリーゼに向かって笑みを向ける。
アリーゼもそれを笑顔で迎える。
「ええ、百点満点!気合と知恵で乗り切りましょう!準備を済ませたら、またここに集合して!」
その号令で、ネーゼ達は各々の仕事に取り掛かる為、解散していく。
「……ふぅ」
その場に1人残ったアリーゼは、先程までの笑顔を消し、短く息をつく……。
思い返すのはギルドからの報告――
現在、把握できているだけでも死傷者は二万人を超えていた。
医療系ファミリアの『ディアンケヒト・ファミリア』及び製薬を中心とした商業系ファミリアの『ミアハ・ファミリア』を中心とした治療師・薬師達が不休の治療活動を続けており、その疲労はピークに達し、状況は逼迫している……。
フィンの指示により都市外縁部の守備を放棄、中央部に戦力と避難民を集中している。
ただ、一部のキャンプが要請に応じず、完全な戦力の一極集中は実現できていない。
已む無く、そちらにも冒険者の巡回と警護を回しているが、散発的な闇派閥の襲撃も続いており、大局的に見れば戦況はオラリオ側に傾きつつあるものの、まだまだ予断を許さない状況は続く……。
都市に広がる不安と恐怖は、まだ払われていない――。
(このままじゃいけない。希望を示さなくちゃ。不安と恐怖を吹き飛ばす、強き『意志』を……だけど、今の私は……)
果たして、都市の希望足り得ているのだろうか……。
アリーゼが自身に疑問を抱いていた時だった――。
「――あ!おーい、アリーゼ!」
悩むアリーゼに呼びかける声がした。
「あ……リーク?」
振り返ったアリーゼの視線の先、声がした方向には、駆け寄ってくる黒髪の少年――リークの姿があった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
リューさんと別れて、俺はまた街を歩いていた。
その途中、覚えのある氣を感じてそっちへ行ってみたら、そこには数日前にガレスのおやっさん繋がりで仲良くなったアリーゼがいた。
「あ!おーい、アリーゼ!」
「あ……リーク?」
重傷から復活したと聞いていたが元気そう……でも、ないのか?
なんだか、前の炊き出し会場で会った時より、元気がなさそうだが……。
こっちに気付いたようなので、軽く走って近づいてみると……うん、やっぱりどこか元気が欠けている。
病み上がりで働いて、疲れが出たんだろうか?
「アリーゼ、動いて大丈夫なのか?作戦の時に大怪我して、少し前まで意識がなかったって聞いて心配してたんだぜ?」
「あー、うん、もう大丈夫よ。ディアンケヒト・ファミリアの治療師に治療魔法も掛けてもらったし、ポーションも飲んだし。都市がこんな状態なのに、私だけ寝てる訳にはいかないものね!」
そう言って腕を上げて笑うアリーゼだが……やっぱりどこか無理をしている感じがする。
氣も若干弱っている……が、そこはまた別か。
この感じ……何となく、さっき会ったリューさんに似てるような気がする。
「……アリーゼ。もしかして、何か悩んでたりする?」
「っ!」
あ、図星っぽいな。
「もし俺で良ければ、聞くぐらいはできるぞ?」
「……」
そして、アリーゼは徐に口を開き――堰を切った様に愚痴り出した。
「――という訳で団長も大変なのよ!他にも対外的なアレとかソレとか一杯あって!それからそれから――!」
「ま、まだあるのか……」
ヤバい、アリーゼが止まらねえ……!
もう彼是1時間以上喋っているんじゃないか……?
つい悩みがあれば聞くぞ~なんて言ったが、これは迂闊だったかも……。
「折角こうしてまた会ったんだもの!それに私が弱音を吐くのは貴重だから、ぜひ聞いていって!」
「う~ん……」
まあ、話を聞く前よりはアリーゼも少しは元気が戻って様な気もするし……ここは乗り掛かった舟だ。
色々と混じっていたが、話を纏めると、だ――
「……アリーゼが今一番悩んでるのは、仲間達に『正義』についてどんな『答え』を示せばいいのかが分からなくなった、って事でいいか?」
「ええ……でも、リオンや皆への『答え』だけじゃない」
「うん?」
「人々から、都市から、世界から……『
「問われている……?」
「気の所為なんかじゃない。私達が出す『答え』によって、絶望は絶望のままか、それとも希望に裏返るのか、決まる。私は、そう思ってしまった」
「う~ん……」
気負い過ぎじゃないのか?
と、俺はつい思ってしまうが、きっと俺がそう指摘しても意味はないな。
これはアリーゼが、自分で
『正義』か……リューさんといい、アリーゼといい、その若さで難しい事をよく考える。
これは、異世界の文化とかそういう話とも違う……言ってはなんだが、この世界でも彼女達は“異端”の部類なんだろう。
『正義』という難題に挑み、人々の『希望』になろうと励むなんて、そんな物語の“英雄”の様な振舞い――老若男女を問わず、そうそう出来るものじゃない。
少なくとも、俺には無理。
本当に凄いよ、アリーゼやリューさんは……。
「……アリーゼ、俺は『正義』の『答え』なんて分からない。でも……俺には、アリーゼやリューさんが
「輝いて……?」
「うん。そうやって『正義』ってもんに真剣に悩んでるアリーゼ達は、光ってる。ちょっと眩しいくらい」
「私達が……?」
「実はさ、少し前にリューさんに会ったんだよ、俺」
「リオンに!?無事だったのね!」
「ああ、怪我とかはなかった。けど、心はかなり参っていた……『正義』について、痛々しいぐらい思い悩んでいたよ」
「リオン……」
心配そうに視線を下に向けるアリーゼ。
「それで、ちょっとでも気が晴れればと思って、話を聞いたんだよ。あの、都市が燃えた日から何があったのかを……どうも邪神エレボスに散々心を引っかき回されたらしい」
「そうだったの……きっとあの日、エレボスが初めて私達の前に現れたあの時、リオンの誰よりも繊細な心を見抜いたのね」
「その辺も聞いた。エレンとか名乗って現れたんだよな」
「ええ、そうなの。私達、すっかり騙されちゃったわ」
アリーゼは今度は眉を顰め、少し曇った空を睨みつける。
俺も倣って空を見上げた。
「……今日は曇ってて、太陽が見えないな」
「そうね……」
「アリーゼ、俺は今まで『正義』ってもんについて考えた事はなかった。けど、アリーゼやリューさんに会って、話して、少し考えるようになった。それで今、『正義』って太陽みたいだなぁって思ったんだ」
「太陽みたい……?」
「うん。太陽が出てると、明るくて、暖かくて、気分が良くなる。逆に曇ってて太陽が見えないと、薄暗くて、肌寒くて、何か気分も落ち込む。太陽は空の彼方に在って、見えているのに手を伸ばしても届かなくて、でもその光と暖かさで地上の生きとし生けるものに活力を与えてくれる――『正義』と似てると思わないか?」
「っ!確かに、そうね。凄く似てる!」
「今のオラリオは、この空と同じ……曇ってて
「……そうね、きっとそうだわ!アストレア様がここにいたら、同じことを言ってくれる気がする!」
また少し、アリーゼに元気が戻った様だ。
「アリーゼ、リューさんが話してくれた事の中に『正義は巡る』って言葉があった」
「っ!正義は、巡る……」
「ガネーシャ・ファミリアのアーディさんが言ってたんだってさ」
――たとえ真の答えじゃなかったとしても、間違っていたとしても!姿形を変えて、私達の『正義』は巡る!
――私達が伝えた正義は、きっと違う花になって咲く!もしかしたら、花じゃなくて星の光になってみんなを照らすかも!
――私達が助けた人が、他の誰かを助けてくれる!今日の優しさが、明日の笑顔をもたらしてくれる!
――だからリオン、笑おう!巡っていく『正義』の為に、今日を笑おう!
「――!!」
アリーゼが目を見開く。
「その話も合わせて、やっぱり俺は『正義』とは太陽なんだと思う。太陽の光が生命に活力を与える様に、『正義』を示そうと奮闘する姿が人々に希望という活力を与える。アリーゼ知ってるか?星って太陽の光を反射して光ってるんだぜ?」
「えっ?そうなの?!」
「そうだよ。だから、アリーゼ達は“星”なんだよ。
「…………!!」
「アリーゼ達は、そのままで良いと思う。悩んでても、迷ってても、『正義』を示そうと努力する姿は輝いている。少なくとも俺にはそう見える。アリーゼやリューさんの光を受けたから、俺なんかでも少しは『正義』について考えられたんだ――俺は君達から『正義』を受け取ったんだ」
きっとそうなんだ。
前世日本人で、今世サイヤ人で、『正義』なんてファンタジーの言葉でしかないと思っていた様な凡人の俺が、こうやって尤もらしく『正義』について考えて語れるのは、アリーゼ達という本気で『正義』を示そうとする人間達を目の当たりにしたからに違いない。
不覚にも、やっぱり当てられちゃった訳だ。
「きっとリューさんや他のアストレア・ファミリアの団員達も、アリーゼのそんな姿から光を貰ってきたんだと思う。リューさん達だけじゃない、もっと沢山の人達がアリーゼの光を受け取った筈だ。そしてアリーゼも、リューさん達や大勢の人達から光を貰ってきた。だから、アリーゼ達はそのままで良い。悩んで、迷って、疲れたらちょっと立ち止まって……そうやって少しずつ進んで行ったらいい――ってうおッ!?」
なんだなんだ!?
アリーゼがいきなり抱き着いてきた!?
「っ!ありがとうっ!リーク!」
「なッ、何が!?」
「私……今、貴方から沢山の光を貰っちゃった!」
「うえっ!?」
俺が狼狽えて間抜けな声を上げた直後、アリーゼは俺から体を離し、一段と輝く笑顔を見せた。
「私、うんと悩んでみるわ!沢山たくさん考えて、皆に私を受け止めてもらって、私も皆を受け止めたい!今の私の『答え』を、皆に届けたい!」
「……そっか。うん、出来るさ、アリーゼなら。いや、もう出来てるさ」
「本当にありがとうっ、リーク!なんだかやる気がメラメラ湧いてきたわ!今、私の心は
どうやらアリーゼの調子が戻った様だ。
俺なんかの浅い言葉でも、アリーゼが元気を取り戻す切っ掛けになったなら、良かった。
この、追いかけて来るようにじわじわと湧いてくる小っ恥ずかしさもっ……少しは報われるってもんだっ!
うぐおぉーーーー!!??
誰もいないところで猛烈に地面を転がりたいぃーーーー!!
ぎゃああぁぁーーーー!!??