ダンジョンにサイヤ人が入るのは間違っているだろうか?   作:雲呑麺

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※感想にて疑問の声が多かった『神の氣』について、今作におけるガバガバ設定をご説明いたします。

 前提として、筆者は『ドラゴンボール超』をあまり詳しく知らず、元祖『ドラゴンボール』を主な知識としています。
 そして原作漫画『ドラゴンボール』及びアニメ『ドラゴンボールZ』にて、孫悟空が氣を感じ取ってその相手の元に移動するヤードラット星人の『瞬間移動』で、界王様の元に移動する描写もありましたので、『ドラゴンボール超』で明かされた『神の氣』に関する設定は、深く考えておりませんでした。

 また、ダンまちにおける『神』は、天界から降りた際、人間に殆ど等しい肉体で『神の力(アルカナム)』を極力封じて暮らしていると筆者は認識しています。

 それら二作品への認識をぼんやりと統合して――

 ・ダンまちの神は、界王様に比べれば神としての格はかなり下位であり、ドラゴンボール基準で言えば“人間以上神様未満”の存在である。
 ・彼らが持つ『神の力(アルカナム)』はあくまで『ダンまち世界=星』の中だけで有効な少々特殊な力であり能力。
 ・そして肉体は下界で暮らすための仮初のものであり、リークが氣を感知する際は『仮初の肉体の生命エネルギー=純粋な人間とは少々違う氣』を感じ取っている。

 ――というような設定で考えておりました。

 今後も、このような設定で執筆していこうと思っています。
 長々と、失礼いたしました。



第23話 正邪の決戦―オラリオ・ウォー―

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

「ぐぅぅ……!クソォ……!!」

 

 地下深くにて……闇派閥(イヴィルス)の幹部『白髪鬼(ヴェンデッタ)』オリヴァス・アクトは、目を血走らせ、歯を食い縛り、血が滲むほど拳を握り締め、煮え滾る怒りと屈辱に耐えていた。

 

 自分達の敗色が日に日に濃くなる現状に焦り、手勢を率いてオラリオ各所に襲撃を仕掛けたオリヴァスだったが、結果は大敗――駆けつけたアストレア・ファミリアに半ば一蹴され、ただでさえ激減している兵力を更に減らすだけの結果となった。

 いや、それだけに留まらず、アストレア・ファミリアの鼓舞を受けた都市は一気に勢いを取り戻してしまった……。

 

 闇派閥の減勢は止まらない――先頃、今回の大抗争の引き鉄を引いた邪神エレボス捕縛の報を受けて、“死”を司る神『タナトス』及び“嵐”を司る神『ルドラ』が抗争から手を引くと言って、残った各々の眷属共々姿を消した。

 後の世の利益目当てに裏で協力していた商人達など、とっくに逃げ出したか連絡を絶っている……。

 

 最早、闇派閥は風前の灯火……一時は目前かと思われたオラリオの崩壊も、今や遠退く一方……。

 

「諦められるかぁ……!諦められるものかあぁーー!!」

 

 オラリオの崩壊、秩序の滅却、混沌の訪れ――それらを悲願としてきたオリヴァスは、この期に及んでも撤退を拒否した。

 

 最後の頼みは、エレボスが最初から(・・・・)進めていた計画(シナリオ)、最後の“切り札”――これだけは今日まで順調であり、既にエレボスの手を離れて進み続けて……いや、上がり続け(・・・・・)ている。

 

 しかし、オラリオの上級冒険者――特に第一級冒険者は軒並み健在である。

 フレイヤ・ファミリアの『猛者(おうじゃ)』を筆頭に、『女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)』、『黒妖の魔剣(ダインスレイヴ)』、『白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)』、『炎金の四戦士(ブリンガル)』――

 ロキ・ファミリアは『勇者(ブレイバー)』、『重傑(エルガルム)』、『九魔姫(ナインヘル)』――

 

 通常であれば敵対派閥同士であっても、オラリオの危機となれば結託する。

 本来であればそれら第一級冒険者達は、ザルドとアルフィアによって押さえられる手筈だったが、その目論見も2人の捕縛によって潰えている。

 如何に邪神が残した最大の謀略であっても、それだけの第一級冒険者が一丸となったなら、打ち砕かれてしまうかも知れない……。

 

 何とかしてオラリオの戦力を分散させなければ――オリヴァスはその考えに行きつき、行動を始める。

 

「成し遂げてやる……!今度こそ……今度こそぉ……!この私の手でぇ……!オラリオの崩壊をぉぉ……!!」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 邪神エレボス捕縛の翌日――また日付が変わろうとする深夜……オラリオの全派閥・全戦力が中央広場に招集された。

 

 それら冒険者達の前に立つのは、我らがフィン団長だ。

 

「――聞いてくれ」

 

 その一言で、集まった冒険者達が静まる。

 

「敵の『真の狙い』が明らかになった。大抗争――最初の夜の戦いから今の今に至るまで、全ては『前準備』に過ぎなかった」

 

 次いでフィン団長から告げられた事実――闇派閥の真の目的、それはダンジョン内における『大最悪(モンスター)』の召喚だった。

 闇派閥は禁忌を犯し、ダンジョンに邪神を送り込み、その邪神を囮にする事で『大最悪(モンスター)』を地上に誘導するつもりだという。

 

 俺は事前に、この事実に纏わる各種事情を、フィン団長から教えてもらった――。

 

 ダンジョンに神は入れない――入ってはいけない……。

 それはダンジョンを管理するギルドが定めた規則だが、その本質はダンジョンの“性質”にある。

 

 ダンジョンは神を憎んでいる(・・・・・)――己を押し込め、封じようとする神を憎悪し、その存在を己の内に感知したならば、その憎しみを爆発させ、神を抹殺する為の強大なモンスターを産み出し、刺客として放つ。

 ちなみにこの事実はギルドの主神でありバベルの『創設神』である老神ウラノスの意向により、ごく限られた神と眷属しか知らされていない上、許可なく口外も厳禁となっている。

 

 その憎き神への刺客である『大最悪(モンスター)』が、闇派閥によって意図的に産み出され、標的()を追って地上に向かってダンジョンを上がって来ていると言うのだ。

 

 フィン団長は各種情報を精査する内に敵の狙いに気付き、ダンジョン内に偵察部隊を派遣し、『大最悪(モンスター)』発見の報告を受け、その事実を突き止めた――。

 

「――本日の正午時点で『目標』の位置は24階層。すべての階層を破壊しながら、無理矢理上へ上へと進出している」

 

 偵察隊の報告によれば、『大最悪(モンスター)』は超大型――その進撃速度と破壊規模から見て、ギルドはその戦闘能力を『深層』の“階層主”、『迷宮の孤王(モンスターレックス)』と呼ばれる所謂“ボスモンスター”と同等か、それ以上と断定した。

 

 『深層』とは真の死線(トゥルー・デッドライン)なんて呼ばれる、現在確認されているダンジョンの最大危険領域――ギルドの定めている適正能力基準はレベル4……しかし、油断すればレベル5以上の第一級冒険者、つまりフィン団長達でも命の危険が伴う危険地帯。

 当然、出現するモンスターも全て強く厄介で、その階層主(ボス)ともなれば大規模なパーティを組んですら全滅の危険を孕むという、恐るべき存在なのだ。

 

 フィン団長は説明の中で“同等”という言葉を使ったが、口振りから察するに件の『大最悪(モンスター)』は『深層』の階層主(ボス)を超える戦闘力を持っていると半ば確信しているんだろう。

 

ざわざわ……

 

 流石に、集まった冒険者達がざわつき始めた。

 ここまで説明で、殆どの冒険者達も闇派閥の目的――正確には邪神エレボスの企みにほぼ察しがついただろう。

 

 真の狙いは、地下からバベルを崩壊させる事――その計画は、最初からずっと進んでいた。

 

 あの大抗争が勃発した日の夜……地上で行われた『神の一斉送還』、あの時地下でもエレボスの作戦がスタートしていたのだ。

 一斉送還とタイミングを合わせて、闇派閥の邪神がダンジョンに侵入し、内部で『神の力(アルカナム)』を解き放ち、『大最悪(モンスター)』を召喚した。

 

 通常であれば、ダンジョンを“祈祷”によって鎮めているウラノスがすぐに感知していただろうが、エレボスはそれをさせない為に地上で『神の一斉送還』を行った。

 神の送還時に発生する光の柱は、それ自体が『神の力(アルカナム)』の塊……凄まじいエネルギーの発現……それがあの夜、9つも発生した。

 ウラノスを筆頭とした神々は、それら地上を揺らす強大な波動に邪魔されて、誰もダンジョンの異変を感知する事が出来なかった――感知させてもらえなかった(・・・・・・・・・・)

 

 『神の一斉送還』は『大最悪(モンスター)』を召喚する為の『生贄』であり、『陽動』であり、『隠れ蓑』だったという訳だ……。

 

 しかもエレボスは、オラリオの神々だけでなく、味方である筈の邪神まで送還している。

 こっちの目を欺くためだけに、躊躇なく仲間にすら手をかけた……。

 

 狡猾、冷酷、残虐……『絶対悪』なんてものを名乗るだけあって、やる事がえげつなさ過ぎる。

 

 本来であれば(・・・・・・)、ここに大戦力のザルドとアルフィアが加わり第一級冒険者を押さえるか排除、更に闇派閥の多勢によるオラリオの包囲網で冒険者達を生かさず殺さず弱らせ続け、“その時”が来ればダンジョンから特大の『爆弾』が炸裂――抗う手段を全て潰されて、絶望の果てにオラリオは崩壊……。

 

「――ていう計画だった訳だな、クソ邪神野郎(エレボス)

 

 俺は後ろに立っているエレボスを睨みつける。

 

 今、俺がいるのは中央広場から少し離れた、それでも広場を見渡せる位置に建つ、塔のような建物の屋上――そこで俺は、捕縛した邪神エレボス、そして同じく捕縛したザルドとアルフィアと共にフィン団長の話を聞いていたのだ。

 

 何故かと言うと……事の顛末をこいつら見届けさせる為、だとかでフィン団長に頼まれたからだ。

 この最悪の1柱と2人を纏めて押さえられるのが俺だけというのと、あと……最後の戦いは、俺という“超戦力”抜きで片づけたいと言われた。

 更に、今回の騒動が片付いたら、今まで以上に苛烈な特訓を付けてくれと頼まれてしまった。

 フィン団長やガレスのおやっさん、リヴェリア姐さんまでが目の奥に燃え滾る炎を宿しているような気迫で頭を下げてきたもんで、俺は断れなかった……。

 俺の知らないところで“何か”があった様だが、詳しくは教えてもらえていない。

 だが、フィン団長達がそこまでして頼んでくる事だ、俺に否やはない。

 

「ああ、正解だとも。百点満点。両手が自由なら、拍手喝采していたところさ。流石はロキの自慢の眷属『勇者(ブレイバー)』だな。よく俺の目論見に気付いたと、素直に賛辞を送ろう」

 

 エレボスめ……手枷と鎖で縛られた状態で、スカした顔で肩を竦めやがった。

 自分の計画がバレたっていうのに、おまけに完全に拘束された状態だっていうのに、余裕かましやがって……死なない程度にシバいてやろうか、それともキン〇を蹴り上げてやろうか……いや、それは死ぬか。

 

「――これからどうすんだよ、勇者様ぁ!!」

 

 むっ、野次か?

 女の声だったが知らない声だ……誰だ、こんな時に……。

 あんな事言ったら――

 

ざわざわざわ……

 

 それ見た事か……広場のざわめきが大きくなっちまった。

 だが――

 

「――迎え撃つ」

 

『っ!!』

 

 フィン団長の一言が、ざわめきを一瞬で鎮めた。

 

「これより戦力を地上と地下に二分。闇派閥の攻撃に対する迎撃隊、そして『大最悪(モンスター)』を打ち倒す討伐隊とで分かれる。前者はほぼ全てのファミリアによる派閥連合。後者は選り抜きの少数精鋭。闇派閥と『大最悪(モンスター)』、どちらもバベル陥落が目的と予測される中、敵の“挟撃”を受け止め、これを殲滅する」

 

 挟撃……今回のソレは“前後”ではなく“上下”――地上と地下、地面という隔たりがある為に援護や救援は難しい。

 ダンジョンを上がって来ている強大な『大最悪(モンスター)』は言うに及ばず、闇派閥の残存戦力とて対処を怠る訳にはいかない。

 忌まわしい“人間爆弾”、未だ残る闇派閥の武闘派眷属、保有しているという調教(テイム)されたモンスターの群れ――俺があれだけ吹き飛ばした、オラリオを包囲していた闇派閥の信者や眷属どもを差し引いても、まだそれなりの戦力を有しているというんだから、本当の本当に鼠やゴキブリみたいな輩共だ……!

 

 つまり、どちらかを倒し損ねたら……バベルを崩されてオラリオは一巻の終わり、という事だ。

 

「――ならば、あえて断言しよう。僕達ならば『可能』だ」

 

ざわ!

 

 フィン団長は淀みなく言い切る――。

 

「より正確に言うのなら、僕達にしか出来ない。これより始まろうとしているのは――『量より質』を掲げる神時代の幕開け以降、人と人による間違いなく最大の“総力戦”。オラリオを置いて、どこの誰に任せる?オラリオが制さずして、誰が成し遂げる?僕達ならば、勝機はある。いや、その多寡に関わらず、必ずやその勝機を手繰り寄せる。そして、もう一つ、敢えて問わせてもらおう――君達は負けたままで終われるのか?」

 

 この大抗争が起こった時点で、現在のオラリオにいる冒険者達は闇派閥に敗北している。

 

「自覚しろ!ここにいる者達、全てが『敗者』だ!」

 

 ゼウスとヘラはその最強の威を以って、オラリオを護ってきた。

 しかし、彼らが去った今、闇派閥は現存する冒険者達を脅威と見做していなかった。

 

「あの夜にむざむざと敗れた負け犬ども!隣を見ろ!そこに友はいるか!」

 

 数多の犠牲者が出た……。

 

「後ろを見ろ!そこに愛した者はいるか!」

 

 友を、仲間を、家族を……共に生きたかった者を失った者達は数知れず……。

 

「いないというのなら、誰が死した者達の無念を晴らす!?一体誰が、怒りと悲しみに燃える君達の雪辱を果たす!?」

 

 失った事に涙を流し、力なく膝をつくだけでは、何一つ戻ってくるものはない。

 立ち上がらなければ――!

 

「――僕達だ!!絶望の連鎖を断ち切り、喪失の悲鳴を食い止め、この手をもって決着をつける!あの地獄の再来を二度と許すな!僕達は既に敗北の味を知った!ならば屈辱の泥こそ糧とし、今度こそ奴らに勝ちに行く!」

 

 敗北を受け止め、自分達の弱さを乗り越え、勝利を掴み取る意志を――失ったものを取り戻す決意を示さなければならない。

 

「意地を見せろよ、冒険者!立ち止まるな!倒れても何度でも立ち上がり、進み続けろ!!誰よりもしぶとく、何よりも生き汚い無法者達!真の勝者は最後まで立っていた者だと教えてやれ!!」

 

 生きる事こそ強さの証明――

 

「ここは、英雄が生まれる約束の地!そして、冒険者の都だ!」

 

――ウオオォォォォォォォッッ!!!!

 

 遂に冒険者の士気が爆発した――!

 流石はフィン団長――その言葉は、皆の心を奮い立たせて、『勇気』を与えてくれる。

 

 “勇者”とは勇気ある者――そんな名言が某ドラクエ漫画にあったか。

 

 なるほど、あれは正しかった。

 フィン団長は正しく『勇者』、その勇気が冒険者達に伝播して、目の前の苦難に立ち向かう力を与えたんだ。

 

「これは『英雄達の前哨戦』に過ぎない!世界の最果てで待つ『真の終末』への、肩慣らしだ!過去の伝説達(ゼウスとヘラ)の栄光を踏み越え、名実ともに僕達が次代の英雄であることを証明する!!」

 

――ウオオォォォォォォォッッ!!!!

 

「喰われまいとする……いや、もはや喰らわんとする獣の咆哮か、いいぞ……!」

 

「騒々しい……相変わらず、口が回る小僧(パルゥム)だ」

 

 俺のすぐ後ろでそう言ったザルドとアルフィア――俺の耳には、2人の声が高揚している様に聞こえた。

 

 俺がこれから始まる最後の戦いに参加せず、この2人を外に連れ出し押さえておく任務を任されたのは、最強を誇ったゼウスとヘラの眷属達にずっと挑み続けたフィン団長達が、過去の敗北の歴史を乗り越え、団長自ら言った『次代の英雄であることを証明する』為――

 

 過去の英雄達(ザルドとアルフィア)に、決意と覚悟を示す為だ。

 ならばその役目を全うしよう――。

 

「敵は『絶対悪』!!ならば気高き星乙女(アストレア)の名を借り、ここに宣戦布告する!」

 

 それは闇派閥だけに向けた宣戦布告ではない。

 ここにいるザルドとアルフィアに――そして先に逝った英雄の先達に対するものでもある。

 

「始めるぞ!『正義』の正戦を!!」

 

 高らかな宣言、爆発する歓声と雄叫び――。

 

 

 

 史上最大の戦いが、幕を開ける――。

 俺は、この星の英雄の生き様を、この目に焼き付ける――。

 

 

 

 


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