ダンジョンにサイヤ人が入るのは間違っているだろうか?   作:雲呑麺

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 今更ですが、主人公の名前『リーク』は『西洋ネギ:leek』から名付けました。

※9/13報告を頂き、誤字修正しました。
monaka96様、誤字報告ありがとうございました。
※10/5誤字報告を頂き、誤字修正しました。
syrup様、報告を頂き、ありがとうございました。


第3話 迷宮都市―オラリオ―

 あの唐突な黒ドラゴンの襲撃から1週間――

 

 長い宇宙の旅の中、遂に見つけた地球型惑星に降り立った異世界転生者のサイヤ人、俺ことリークは舞空術で空を飛んで旅をしていた。

 

 ちなみに俺が乗ってきた宇宙ポッドと、黒ドラゴンが残した巨大宝石は、誰かに見つかって諸々面倒が起こらない様にエネルギー弾で爆破粉砕して地面深くに埋めた。

 惜しくはない。

 

 さておき、この1週間、俺は氣を頼りに人里を探した。

 目的はこの星を知る事――

 生態系、人種、文化、文明レベル等々、人間として暮らしていく為にはそれらを知る必要がある。

 

 先ず生態系――これは基本的には地球と似た様なものだと判断した。

 前世地球の知識で覚えのある動植物を幾つも見つけた。

 この星独自のものと思える動植物も同じく。

 そして勿論人間もいて、言葉も通じた(ここはちょっと不思議)。

 

 中でも独特なのが、『モンスター』と呼ばれる生物……。

 

 旅の道中で俺も何体か倒したが、こいつらは死ぬと灰になって崩れ去り、『魔石』と呼ばれる石や『ドロップアイテム』なんて物を残すらしい。

 そして、魔石はエネルギー資源として、ドロップアイテムは道具や薬類の素材として、物によっては高値で取引されるそうだ

 それらの事実と魔石・ドロップアイテムの名称を、旅の中で立ち寄った村の人に教えてもらった。

 思わず「RPGか!」とツッコみたくなったが堪えた。

 

 それはさておき――俺がこの星で最初に倒したあの黒ドラゴンも、モンスターの一種だったという訳だ。

 あの巨大宝石はドラゴンの魔石で、心臓(仮)はドロップアイテムだったのだろう。

 粉々にして埋めてしまって今更だが、ちょっと勿体なかったかも知れない。

 

 魔石やドロップアイテムの相場はまだよく分からないが、旅中で倒したモンスターが残した、小指の爪先ほどの極小の魔石でも、食べ物と水ぐらいとは交換できた。

 それにモンスターじゃない普通の獣もいたから、およそ食うに困る事はないだろう。

 

 続いて人種――人間がいるのは大体分かっていたが、人種がファンタジーだった。

 一般的な人間は『ヒューマン』と呼ばれる。

 ヒューマンの一種なのか、別種族なのかよく分からないが、戦闘能力と闘争意識とオマケに性欲がやたら高い女系人種『アマゾネス』というのもいる。

 それに、獣耳や尻尾をつけたような姿の所謂『獣人』は、それぞれの動物的特徴から『犬人(シアンスロープ)』『猫人(キャットピープル)』『狼人(ウェアウルフ)』『猪人(ボアズ)』等々、それぞれ種族が分かれる。

 あとは腕力と頑丈さに秀で、低身長かつずんぐりした体型と髭が特徴の『ドワーフ』……。

 長命で魔法に秀で、男女とも美形が多く、森を主な住居とする『エルフ』……。

 ドワーフより更に小柄で、一見子供にも見えるが思考能力に秀でた『小人(パルゥム)』……。

 この星の人種はこんなところだそうだ。

 獣人が存在するから、尻尾のある俺も不審がられたりしない点は有難い。

 それにしても獣人、ドワーフ、エルフ……完全にファンタジーだ。

 

 だからという訳ではないと思うが、この星の文化は西洋文化に近いものが主流で、そこに日本風やアジア風の文化圏も混じり、中々混沌としている様だ。

 

 文明のレベルとしては、俗に『中世』と呼ばれる時代の少し上ぐらいかと思う。

 複雑な機械はまだまだ開発されておらず、時計すら発明されていない。

 代わりに『魔法』を使った魔道具というものはそれなりに発達している様だ。

 そう、この星には魔法が存在する。

 機械と魔法は両立しない定めなんだろうか?

 

 ともかくここは、ファンタジーRPGが限りなく現実になった様な星なのだと知れた。

 

 その上、なんでも『神』が『天界』から降りてきて、人間に『恩恵』を与えて一緒に暮らしているらしい。

 神というと俺はナメック星人の老神やデンデや界王神が、そして天界はラーメンの丼の様な神の神殿が頭に浮かぶ。

 だが恐らく、この星の神は俺の思い浮かべた神とは種類が違うと思う。

 まだ詳しくは分からないが、聞いた話によると神と神に恩恵を与えられた『眷属』が、多数集まる『オラリオ』という大都市があるそうだ。

 

 そこへ行けば、もっと詳しい情報が手に入るに違いない――。

 

 という訳で、現在、都市オラリオを探して空を飛んでいる俺である。

 場所の検討は大体ついている……氣を探れば割と強い奴が多く集まった場所はすぐに分かった。

 

 その強めの氣が集まった方向へ飛んでいると、遠くの方に空に向かって伸びる縦線(・・)が見え始めた。

 

「なんだあれ?『カリン塔』か?」

 

 ドラゴンボールの地球に存在する『聖地カリン』、そこに立つ空に伸びる1本の高い塔――天界に通じる道でもあり、800歳とちょっとの仙人……いや『仙猫カリン』が住まう塔が思い浮かぶ。

 しかし、違う星であるここにある筈もない。

 そもそも見えているあの塔は、頂点も見えている。

 まだまだ距離があってあの高さなら、とんでもない高さには違いないが、それでもカリン塔よりはずっと低い。

 だが、距離があってあの太さに見えるという事は、近くで見たら地球の高層ビルよりずっと太いんじゃないか?

 あんな超高層・超大型建造物、重機も存在しないこの世界で建造しようとしたら、完成させるのに一体何百年掛かる事やら……。

 

「この星はこの星で凄えな」

 

 異世界、異星の独自文化や文明を見るのは中々楽しい。

 新鮮な驚きに心が若返る気がする。

 今の俺は4歳、いや宇宙ポッドでの長期睡眠期間があるから今は5歳か……とにかく幼児状態の俺だが、前世36年分の人生があり、ぶっちゃけ心はオッサンだからな。

 心には若返る余地があるのだ。

 

 それはさておき――あそこがきっと目指していた都市オラリオに違いない。

 道中で集めた情報の中に『巨大な塔』の話があった。

 確か『バベル』といったか。

 

 いつまでも空中で停止して眺め続けていても仕方ない。

 見つけたからには、さっさと行くとしよう。

 おっと、地上に降りて歩かないと……この世界では空を飛ぶ人間は極々限られているらしく、見つかると俺の姿も相まって騒がれそうだ。

 

 という訳で、人のいない場所に降りて徒歩――いやダッシュに切り替えてオラリオに向かう。

 本気で走ったら音の壁を超えてソニックブームが発生しかねないので、程々の速さで走る。

 噂では、神の恩恵を受けた人間の中には、馬よりも速く長く走る者もいるとか……凄い筈なんだが、今の俺から見ると微妙だ。

 

 それはどうでもいいとして――常に遠くにランドマークなタワーがあるおかげで迷う事なく、俺は日が暮れる前にオラリアに着いた。

 

「お~」

 

 近くまで来ると、塔のデカさに結構驚く。

 本当にどうやって、どのぐらいの年月を掛けて建てたのだろうか?

 それに、塔だけでなく都市を囲む城壁もデカい。

 これは地球にあっても大都市だ。

 

 さて、中に入ろう。

 

「うん?おい、そこのボウズ」

 

 城門の脇に立っていた、目元を隠す仮面を付けオレンジ色の衣を着た門兵らしきオッサンが声を掛けてきた。

 ふむ、戦闘力は30ってところか。

 

「俺の事かい?」

 

 自分を指差しながら聞く。

 前世地球では社会人故に誰彼構わず敬語で話していた俺だが、転生後は窮屈さはなるべく感じたくないので、喋りやすい口調で話す事にしている。

 まあ、相手にもよるがな。

 

「そうだよ。変わった格好してるな。そんな小っこいのに1人でオラリオに来たのか?」

 

 今俺が着ているのは黒のアンダーウェアの上下に、肩当がない旧式戦闘服と、チューブが付いた籠手みたいなヤツ……イメージ的には悟空の父『バーダック』の恰好に似ている。

 

「ああ、そうだよ。故郷を出てきた」

 

「マジか。父ちゃん母ちゃんは?」

 

「知らない。会った事ない」

 

 いや、マジで。

 惑星ベジータで親の顔なんて見てないし、教えられた事もない。

 

「くぅ、そうかぁ……!そりゃあ辛え目に遭ったんだなぁ……!」

 

 目頭を(仮面の上から)抑えて上を向く門兵のオッサン。

 言い方が悪かったか?

 どうも誤解させた様だ。

 まっ、いっか。

 嘘は吐いてないし。

 

「なぁ、おっちゃん。俺、よく知らないんだけど、ここって神様がいて、恩恵をくれるんだって?」

 

「ズズ……ああ、まあ、そうだな。よし!おっちゃんが色々教えてやろう!」

 

「おお、ありがとう」

 

「いいってことよ!」

 

 気のいいオッサンだ。

 

 オッサンの話によると、ここオラリオは『ダンジョン』を攻略する為に神と神の恩恵を受けた『冒険者』が集まる都市だという……いきなりまたファンタジーRPGな単語が出た。

 ダンジョンからはモンスターが生まれる。

 世界中にいるモンスターも元はダンジョンから地上に進出したそうだ。

 そんなモンスターが溢れ出すのを封じる為に建てられたのが都市中央のバベルの塔。

 そして、日々ダンジョンを探索し、モンスターを倒し、魔石やドロップアイテムを採ってきて生計を立てているのが冒険者。

 神と冒険者の集まりを『ファミリア』という。

 冒険者は、神の恩恵――『ファルナ』というのを受ける事で、『ステイタス』を得る。

 ステイタスは訓練やダンジョンでモンスターと戦う事で強化されていく。

 恩恵(ファルナ)が無いとモンスターとは戦えず、そもそも冒険者として登録できず、ダンジョンにも入れない。

 登録せずに勝手にダンジョンに入るのは違法で、そうして冒険者を管理して都市を運営している組織を『ギルド』という。

 

「だから冒険者になりたいなら、ボウズは先ず眷属にしてくれる神様を探さないとな」

 

「なるほど。うん、分かった。ありがとう、おっちゃん」

 

「良ければ、うちの神様に口を聞いてやろうか?」

 

「気持ちだけ受け取っとくよ。ありがとう、おっちゃん。仕事頑張ってな」

 

「おう!ボウズも負けずに頑張るんだぜ!」

 

 本当に気の良いオッサンに手を振って、俺はオラリオに入る。

 

 しかし、ステイタスに冒険者にダンジョンにギルドときたか。

 もう、完全にRPGだな……。

 こんな星もあるとは、宇宙は広い……。


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