ダンジョンにサイヤ人が入るのは間違っているだろうか?   作:雲呑麺

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 なるべくテンポよく進めたいのですが、難しいです……。


第5話 団長―フィン・ディムナ―

「坊や!この酒樽、倉庫に運んどくれ!」

 

「はいよー」

 

「それが済んだら、芋の皮剥き頼むよ!」

 

「ほーい」

 

 俺、ただいまアルバイト中――。

 

 

 

 ダンジョンがある都市オラリオにやって来て、文無しで腹を鳴らしていた俺だが、唐突にマッチョ肝っ玉母ちゃん――『ミア母ちゃん』ことミア・グランドに拉致られ、大盛りスパゲティを奢られ、一飯の恩義を返す為にアルバイトする事になった。

 

 持ち前の戦闘力をちょいちょい流用して、薪割り・食材運びと力仕事中心に働いた。

 

「チビっこいのに大した力じゃないか!」

 

 俺の体ほどもある樽やら木箱をひょいひょい運んでいたら、ミア母ちゃんに褒められ、頭をガシガシ撫で繰り回された。

 ちょっと……いや、かなりの腕力で、俺は大丈夫だが、普通の子供にあんな撫で方したら頭モゲるぞ?

 

 さておき、働きぶりで気に入られたのか、徐々に力仕事以外にも色々と仕事を任された。

 

「へえ、上手いもんじゃないか!じゃあこれも頼んだよ!」

 

 芋の皮剥きを初め野菜の仕込み作業、皿洗い、果てはちょっとした調理補助まで――前世で一人暮らししていた時と、昔レストランでキッチンのバイトをした経験の名残が活きた。

 流石に夜の営業中の接客は元からいたウエイトレスのお姉ちゃん達が担当して、男で子供でチビの俺にお鉢は回らなかった。

 ミア母ちゃんの店は冒険者御用達といった感じで、様々な鎧やマントなど防具を身に着けた冒険者然とした客が大半を占める。

 チラっと聞いた話では、ミア母ちゃんも元冒険者で引退して店を開いたんだそうだ。

 しかも結構な実力者として有名だったとかで、ミア母ちゃんの実力を知ってこの店で騒ぎを起こす客はいないとか……調子に乗って騒いだ客はミア母ちゃんの剛腕で容赦なく黙らされ、叩き出されるらしい。

 それも周知の事実だから、この店に来る客は大体行儀がいい。

 ミア母ちゃんも、最低限の礼儀さえ弁えていれば、飲んで騒ぐぐらいでとやかくは言わない。

 それもまた冒険者という事なんだろう。

 

 そんな中に1人、他と雰囲気が違う客が来店した――。

 

「やあ、ミア。お邪魔するよ」

 

 親しげにミア母ちゃんに挨拶するその客――金髪に青い目、身長は多分俺より少し高いぐらいの美少年という風貌……。

 しかし、感じる氣の強さは他の客達の一段上をいく。

 戦闘力……75ぐらいか。

 他の客が軒並み30前後だから、このオラリオでは上位に立つ冒険者なんだろう。

 

「おや、フィン。今日は1人かい?」

 

「ハハハ、偶には1人でゆっくりとね」

 

 どうやらミア母ちゃんと顔馴染みの様子……酒場に来ている点と落ち着いた振る舞いから見て、どうやら見た目通りの少年ではないらしい。

 もしかして、あれが成人でも子供に見えるという小人族(パルゥム)という人種だろうか?

 そう言えば、この世界では何歳から成人なんだろう?

 あと、酒が飲める歳って幾つなんだ?

 

「おや?ミア、その子は?」

 

 金髪の小人?が俺に気づいた。

 

「ああ、この坊やはリーク。道端で腹を鳴らしてたから、飯を食べさせてやったんだよ。奢りだって言ってるのに、タダ食いなんて出来ないとか言うから、飯の分働いてもらってるのさ」

 

「へえ」

 

 母ちゃんの言葉に、金髪の小人?がこっちを見て微笑む。

 女にモテそうだな、この男……。

 

「あ、えと、リークだ。よろしく」

 

「ああ、よろしく。名乗られたからには、僕も名乗らないとね。フィン・ディムナだ。冒険者をやっている」

 

 フィン・ディムナ、覚えた。

 

「フィンさん、聞いてもいいかい?」

 

「何かな?」

 

「フィンさんって小人族(パルゥム)か?」

 

「ああ、そうだよ。小人族(パルゥム)を見るのは初めてかい?」

 

「うん」

 

 やっぱり小人族(パルゥム)だったか。

 という事は、あの外見でも成人なんだな。

 

「フフ、この外見で酒場に来ていたから、不思議だったかな?」

 

「いや、まあ、ミア母ちゃんと顔見知りみたいだから、成人なんだろうなとは思ってたけど」

 

「なるほど、中々察しがいいね。僕はこれでも今年で35歳になる」

 

 気を悪くした風もなく、笑って言うフィンさん。

 

「外見が若いのは、神の恩恵のおかげでもあるけどね」

 

「恩恵って、そんな効果もあるの?」

 

「ああ。まあ、小人は元々童顔になりがちの種族ではあるけれどね。それでも、恩恵の有る無しでは差が出る様だ」

 

「へえ~」

 

 ただ戦闘能力が手に入るだけじゃないんだな。

 まあ神の力だ、不思議な効果が幾つあっても不思議じゃないか。

 

「はいよ!お待ちどお!」

 

 ミア母ちゃんが木のジョッキと料理が乗った皿をフィンさんの前に置いた。

 

「そう言えば坊や。あんた、冒険者になりたくてオラリオに来たって言ってたね?」

 

「うん、言ったね」

 

「だったら、このフィンのところに入れてもらったらどうだい?」

 

「はい?」

 

 唐突なミア母ちゃんの勧めに、思わず疑問符が浮かぶ。

 

「フィンのところは今のオラリオ最大手のファミリアさ。人数も多いし、主神もまあまあ悪くない神だ。性格の癖は大分強いがね」

 

「ハハハ……眷属としては、擁護したいところだけど、ね……」

 

 苦笑いのフィンさん。

 癖の強い性格の神なのか……でも、この穏やかそうなフィンさんが所属しているファミリアなら、人間関係とかも悪くはないかも?

 

「……そりゃあ、入れるものなら入りたいけど……最大手なんだろ?俺みたいなガキでも入れるもんなのか?」

 

「どうなんだい?フィン」

 

「そうだね……」

 

 思案顔でフィンさんがこっちを見てくる。

 

「……ミアが勧めてくるという事は、彼は見込みがあるそうなのかな?」

 

「さあ、どうだろうね?けど少なくとも、食いっぷりとここでの働きぶりは保証するよ」

 

「なるほど」

 

 何が?

 

「リーク、一つ尋ねるが君は冒険者になって何を求める?」

 

「何って?」

 

「冒険者は皆、何かしらを求める。富、名声、力……ちょっと俗なところでは女って事もあるね。そこは人それぞれ、何を求めようと僕は非難も否定もするつもりはない。ただファミリアに迎え入れるなら、一応知っておきたいんだ。これでも、ファミリアの団長を務めているのでね」

 

「フィンさん、団長なんだ?」

 

「ああ」

 

 人は見かけによらない、というのは失礼か。

 

 それはともかく、俺が求めるものか……深く考えた事がなかったが、良い機会だし改めて考えてみる。

 なるべく思考を加速して、手早く――。

 

 富――別に強く求めてはいない。

 そりゃあ金は欲しいが、それはあくまで『衣食住』や何か欲しい物ができた時にそれを賄う為に必要なだけだ。

 

 名声――要らない。

 大した興味が湧かないものだ。

 

 力――既にある。

 ドラゴンボールの技や動きを再現するのは面白いが、強さで他人にマウントを取りたいなんて思わない。

 

 女――興味はあるが、求めるものとは違う。

 俺も男だし、前世は童貞で終わったし……恋愛とか結婚とかはまだ考えられないが、それはまた別の話だ。

 

 こんな俺が求めるもの……サイヤ人に転生して、惑星ベジータを出奔してこの星にやって来た理由にも繋がるかな。

 となると、俺が求めているのは――

 

「『自由』、かな」

 

 うん、これがしっくりくる。

 思い返せば前世ではサラリーマンとして仕事に縛られ、体力や精神力を奪われていた……。

 この宇宙に転生からは、サイヤ人の中級戦士として訓練を受けさせられ、危うくやりたくない宇宙地上げに駆り出されるところだった。

 そしてこの星に逃げてきたからには、これまでとは違う……陳腐な表現だが、自由で伸び伸びした暮らしがしたいと思ったんだ。

 

 そうだ、俺は自由を求めてこの星に、オラリオに来たんだ――。

 

「……なるほど」

 

 フィンさんが目を閉じて、しみじみといった風に頷く。

 だから、何が『なるほど』なんだ?

 

「いいだろう。『ロキ・ファミリア』団長として、リーク、君を歓迎しよう」

 

「えっ!?マジで!?いいの!?」

 

「ああ、うちの主神には僕から執り成そう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 俺はフィンさんに頭を下げた。

 やったぞ、これでダンジョンに入れる!

 

「ありがとう、ミア母ちゃん!」

 

「あたしは何もしてないよ」

 

「フィンさんに紹介してくれたじゃないか」

 

「なぁに、ふと思いついて言ってみただけさ」

 

 そう言ってウインクするミア母ちゃん、なんと男前。

 失礼だから口には出さないが。

 

 何はともあれ、オラリオに来た目的が果たせそうでホッとした。

 

 

 

 その後、フィンさんが酒と料理を片付けるまで店の手伝いを続け――夜更け頃。

 

 

 

 

「それじゃあ行こうか」

 

「おう!ミア母ちゃん!お世話になりました!」

 

 会計を済ませたフィンさんと一緒に、店を出る。

 

「ちょっと待ちな、坊や」

 

 店の出入り口のところでミア母ちゃんに呼び止められた。

 振り返ると、小さな袋が飛んできた――キャッチ。

 

「?ミア母ちゃん、これは?」

 

「バイト代だよ」

 

「えっ?バイト代って……」

 

「あんたが食べた飯の代金なんて、とっくに稼ぎ終わってたさ。うちはぼったくりじゃないからね。それはその余りだよ。せいぜい冒険者で稼いで、また食べにおいで」

 

「っ、必ず来るよ!」

 

 全く、どこまで男前の母ちゃんなのか。

 俺はもう一度ミア母ちゃんに頭を下げて、店を出た。

 

「挨拶は済んだかい?」

 

「おう!」

 

「では行こう」

 

 フィンさんについて、俺も歩き出す。

 

 ロキ・ファミリアか、どんな所か楽しみだな――。

 




 主人公が食べた量については、ダンまちのアニメ第1期にてベルが『豊穣の女主人』で食べていた山盛りパスタを参考にしました。
 バイト代については、ミア母ちゃんの漢気込みと思ってもらえれば。

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