ダンジョンにサイヤ人が入るのは間違っているだろうか? 作:雲呑麺
感想を下さった皆様、本当にありがとうございます。
この先も続けていけるよう頑張ります。
※9/12サブタイトルを修正しました。
フィン団長、ガレスのおやっさん、リヴェリア姐さん――ロキ・ファミリアの幹部3人に連れられて、俺は都市中央に聳え立つバベルの塔の一階、ギルドの受付にやって来た。
「失礼するよ。今いいかな?」
「これはディムナ氏!おはようございます!」
フィン団長が受付で、制服姿の眼鏡を掛けた若い男性職員に声を掛けると、職員は畏まった様子で対応する。
「本日はダンジョンの探索ですか?」
「その前に新人の冒険者登録をお願いするよ」
フィン団長が少し横にずれたので、俺が前に出る。
すると職員が俺を見てくる。
「この子が、ですか?」
「ああ、先日うちのファミリアに加わったリークだ。登録が終わったら、今日は彼のダンジョン見学を兼ねて上層を軽く探索するつもりだ」
「はぁ、なるほど。承知いたしました。では、少々お待ちください」
そう言って、職員は席を立ち奥へ行った。
そして少し待つと、長い黒髪のお姉さんを連れて戻って来た。
「お待たせしました。そちら、リーク氏でしたな。リーク氏の担当は、このサンドラに務めさせます」
「初めまして、ディムナ氏、リーク氏。サンドラ・リポルと申します。以後、リーク氏の担当職員として、精一杯務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」
「あ、えと、リークです。こちらこそよろしくお願いします」
丁寧に頭を下げられたので、俺も頭を下げ返す。
サンドラさんか、印象としては仕事のできるOLって感じだ。
有名人らしいフィン団長の前だからとか仕事だからとかあるのかも知れないが、ビジネスライクだろうと何だろうと、丁寧に対応してくれるのは有難い。
何せ俺は見た目子供だから、多少侮られることも覚悟していたんだ。
まだ背も低いし……ちょっと背伸びしないと受付の上が見えないっていう……。
「それじゃあサンドラ、後は任せるよ。ディムナ氏、失礼いたします」
男性職員はまた奥へ行った。
「それでは登録手続きに移らせていただきます。失礼ですが、リーク氏は字は書けますか?」
「えっと、書けません……」
仕方ない事だが、少々恥ずかしい……。
早いところ習わないと。
「承知しました。では、私が代筆しましょうか?」
「えっと、フィン団長?」
「頼んでいいと思うよ。別に珍しい事じゃないからね」
「じゃあ、お願いします」
「承りました」
そしてお姉さん――サンドラさんは俺に質問しながら、羽根ペンで手元の用紙に記入していく。
「こちらでお間違いないでしょうか?」
サンドラさんが用紙を差し出してくる。
読めないのでフィン団長に確認してもらった。
「……うん、大丈夫だね」
確認が取れたので、用紙を返す。
「ありがとうございます。これでリーク氏の冒険者登録は完了です。ギルド及びダンジョン探索の規則についてのご説明はいかがしましょう?」
「すまないが、それは後日にお願いできるかな?今日中にリークにダンジョンを見学させたいんだ」
「畏まりました。これからすぐにダンジョンへ入られますか?」
「ああ、そのつもりだ」
「承知いたしました。それではダンジョン探索の受付もこの場で処理しておきます」
「ありがとう、よろしく頼むよ。それじゃあリーク、行こうか」
「うん」
フィン団長に促され、受付を後にし、待っていたガレスのおやっさん・リヴェリア姐さんと合流――そのまま案内されてダンジョンへ向かう。
その途中――
「おい見ろ……!」
「『
「『
「ロキ・ファミリアの『三首領』が揃ってやがる……!」
「あのガキ誰だ……?」
俺達と同じくダンジョン探索に向かうのだろう他の冒険者達がざわついていた。
流石は最大手ロキ・ファミリアの幹部――有名人らしい。
ちなみに『
フィン団長曰く『神々のお遊び』の一環らしい。
あと『三首領』というのは、団長・おやっさん・姐さんの3人を一纏めにした通称とのこと。
有名になると、色々な呼ばれ方をする様だ。
それはさておき――。
ダンジョンへの入り口は先ず石畳の螺旋通路とデカい吹き抜けから始まる。
それを降りると岩壁の通路に出る、そこからがダンジョン1階層――道中軽く教えてもらったが、1階層から12階層までを『上層』と呼び、そこから深くなる毎に『中層』『下層』『深層』と呼び分けられる。
その辺り詳しくは担当職員のサンドラさんや、リヴェリア姐さんがいずれ教えてくれるそうだ。
で、今日は上層で適当な広さの『ルーム』という空間を探して、そこで試合をするという。
上層は
しかも出現率自体も低く、中層以下の階層に比べれば比較的安全地帯である為、ステイタスの向上を目指す駆け出しの冒険者や戦闘訓練を目的とした上級冒険者達が訪れることもあるとか。
勿論、ここでも油断すれば死ぬこともある……ダンジョンで油断は厳禁と念を押された。
暫くダンジョンを進みながら、辺りの氣を探ってみると不思議な感覚に気付く。
いつもは集中すれば惑星中の氣すら感じ取れた筈なのに、ダンジョンの中だとその感知範囲が著しく狭くなる……。
まるで何かに遮られている様な……一定の距離が開くと急にぼやける様に感じ取れなくなる。
感知範囲内に大した氣は感じないし、遮られているとはいえそれなりの広さをカバーできるから問題はないと思うが……こんな事は初めてだから不思議だ。
「あ」
「どうしたんだい?」
通路を歩いている途中で、近づいてくる氣に気付く。
思わず上げた声に、フィン団長が聞いてきた。
「そこの通路の先から、小さな氣が3つ近づいてくる」
「そうなのかい?」
で、少し待っていると――
『ギギィ……』
今の俺と同じかそれよりも小柄で姿勢も悪く、頭が大きめで体系のバランスも悪い人型のモンスターが3匹現れた。
「ふむ、『ゴブリン』じゃな」
ガレスのおやっさんが軽く言う。
ゴブリン……RPGでも定番の雑魚モンスター、知った名前や単語が出るとどうしてもパッと思い浮かんでしまう。
「数も合っている。リークはモンスターの気配を感知できるのか」
「うん。モンスターに限らず、生物なら余程小さなものでなければ感じ取れるよ」
リヴェリア姐さんに答える。
「なるほどね。ところでリーク、さっき『小さな氣』と言っていたけど、あのゴブリン達は君から見てどの程度に感じるのかな?」
「メチャメチャ弱い。小突いただけで死にそう。数字で言うと、戦闘力5とか6とかそんなもんかな」
「へえ……ちなみに、その戦闘力というので表すと僕は幾つになる?」
「大体75ぐらい。ガレスのおやっさんやリヴェリア姐さんもそのぐらいかな」
「ふぅん、なるほどね」
顎に手を当てて思案顔になるフィン団長。
何を考えているかは流石に分からないな。
その後、ゴブリンはさっさとガレスのおやっさんが片づけて、俺達は先へ進んだ。
流石にエンカウント無しとはいかず、通路を進んでいると色々とモンスターに遭遇する。
ゴブリンは勿論、二足歩行の狼人間『コボルト』や一つ目カエル『フロッグ・シューター』、天井や壁を這う茶色い巨大ヤモリ『ダンジョン・リザード』、影の人型『ウォーシャドウ』等々……色々と出てきて少し好奇心を刺激される。
しかし、感じ取れる氣はどれも小さく弱い。
どいつも戦闘力10前後というところだろう。
全てフィン団長達が軽く倒していった。
俺は一応新人だからか、今は戦わなくていいと言われておとなしくしている。
そうして暫く歩き、5階層まで降りたところで手頃な広さのルームが見つかった。
「このぐらいの広さがあればいいかな」
「そうじゃな。天井までもそれなりにあるし、フィンが槍を振り回して飛び跳ねるのにも丁度ええじゃろう」
「正規ルートからそれなりに距離もある。魔法を使っても他の冒険者を巻き込む心配もないだろう」
フィン団長、ガレスのおやっさん、リヴェリア姐さん……それぞれの見解で、このルームで決まりの様だ。
「よし、では始めようか。リーク、準備は良いかな?」
「俺はいつでも」
「では、先ずはワシが相手じゃ」
ガレスのおやっさんが進み出てくる。
そして何を思ったか、持ってきていたドワーフらしいデカい斧で地面に線を刻み始めた。
5メートルぐらいの円……?
「よし、こんなもんかのう」
円を描き終えると、おやっさんは斧を地面に突き刺して円の中に入る。
「坊主、『スモウ』は知っておるか?」
相撲?
「えっと、一応知ってるけど……土俵っていう専用のリングの上で一対一で審判の合図と共にぶつかり合い、相手を土俵の外に押し出すか、土俵に相手の足の裏以外を着かせたら勝ちっていうルールで合ってるかい?」
「おお、正にそれじゃ」
合っていた様だ。
この星にも相撲があるんだな。
「つまり、俺とおやっさんで相撲を取る、と?」
「そういうことじゃ。ワシが見たいのはお主の『力』じゃ。スモウは純粋な力を測るのに打ってつけの格闘技じゃからのう」
そう言いながら、おやっさんは円の――即席の土俵の中央でしゃがんだ。
俺も土俵に入り、おやっさんの向かいにしゃがむ。
これはいい、俺としてもおやっさんと殴る蹴るの戦闘はできれば避けたかったところだ。
オヤッさんの言う通り、相撲なら怪我をさせずに力を見せられる。
「それじゃあ、僕が審判を務めよう」
「おう。いつでも始めてええぞ」
「俺も」
「それじゃあ……確かスモウではこう言うんだったかな……両者、見合って」
ガレスのおやっさんと俺は、しゃがんだまま姿勢を前屈みにして、両手を握り込み、開始の合図に備える……。
「はっけよい――残った!」
「「――ッ!!」」
ほぼ同時に拳を一瞬地面に着いてから激突――俺とおやっさんはがっぷり四つに組み合う。
「ッ!??」
おやっさんの体が一瞬揺れた。
恐らく、俺の力を感じたんだろう。
「ッ、ぬうぅぅぅぅ……ッッ!!!」
唸り声と共におやっさんの押す力が強まる。
俺も押されない様に対抗して踏ん張る。
ボゴッ
すると、俺とおやっさんの足が着いた地面が凹み、ひび割れ始める――。
「ば、馬鹿な……!?膂力でガレスと互角だというのか!?」
リヴェリア姐さんの驚く声が聞こえた。
その間にも、おやっさんの押す力はどんどん強くなるので、俺も対抗して踏ん張る力を強める。
「ガアァァァァッッ!!!!」
空気すら揺らすようなおやっさんの咆哮――同時に地面の罅割れは土俵を越えて広がり、俺達の足が膝近くまでめり込んだ。
「ググ、ギギギ……!!!」
押す力の強まりがなくなってきた。
この辺りがおやっさんのフルパワーかな?
「グ……!?う、お?!おおぉ……ッ!?」
少し待ってみたが、どうやらこれ以上は無さそうなので今度は俺からおやっさんを押し出す。
すると、ズルズル(ガリガリ?)とおやっさんの体が後退していく。
「ぐおあぁぁぁッッ??!!」
めり込んだまま踏ん張っているので、後退するおやっさんの足が地面を削っていく。
その後も一切止まる事なくおやっさんは後退し続け――やがて、その足が土俵を割った。
「ッ、そ、それまでっ!!」
フィン団長の掛け声で、勝負が決まる――。
「勝者……リーク!」
勝負は俺の勝ち――
「ブハァ!!ゼェ、ゼェ、ゼェ……!!」
力を抜いて組んでいた腕と体を離すと、ガレスのおやっさんは両手をついて四つん這い状態になり、肩を揺らして荒い息を吐く。
「お、おやっさん、大丈夫か……?」
「ゼェ、ゼェ、ああ……!ゼェ、ゼェ……!」
呼吸を繰り返しながら答えると、おやっさんは徐に体勢を変えて胡坐をかいた。
「……力自慢のドワーフが、随分な姿になったな。ガレス」
「フゥ……フゥ……ふんっ、喧しいわ、高慢ちきエルフめ」
「フ……減らず口が利けるなら問題は無いな」
あれは、ガレスのおやっさんとリヴェリア姐さんの軽口なのかな?
「……それで、どうだった?ガレス。リークの力は……」
「……見ての通りじゃ。ワシなど、及びもつかん」
フィン団長の問いに、おやっさんは頭を左右に振りながら答える。
「組み合った瞬間、山とでも組み合ったかと錯覚したわ。それでもワシは渾身の力を込めて坊主を押そうとしたが、ビクともせなんだ……。しかも恐らく、坊主は全力の半分……いや、下手をすれば10分の1も出しておらんだろう」
「「!?」」
おやっさんの言葉に、フィン団長とリヴェリア姐さんが目を見開いてこっちを見た。
う~ん、何と言えばいいやら……。