【一章完結】美少女アンドロイドへのTS転生から始まる、たのしい地球征服っ!   作:水品 奏多

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2 おすわり

「これからよろしくなのよ、奴隷さん」

 

 俺の頭上で、自称宇宙人が誇らしげに口角を上げる。

 

 ふっざけんじゃねえっ、とか元に戻しやがれっ、とか思うところは腐るほどあった。ただそれらも謎の力に阻まれ音を成さない。

 やがて俺が冷静になったのを見計らってか、少女が支配の力を緩めた。

 

 久方ぶりに自由になった体。

 それらをふらふらと動かしてから、ちっこい彼女に向き直った。

 

 宇宙人やら征服やらは正直眉唾物だけど、どうやら何らかの方法で俺の行動を縛れるのは事実らしい。

 感情的になっても何の意味もない。Be Cool。冷静になれ、俺。

 まずは情報収集、せめて彼女の論理だけは引き出さないと。

 

「いくつか聞いてもいいか?」

 

「どうぞ、好きにするといいのよ。

 まともに答えるかは保証しないけれど」

 

「っ……まず一つ目。

 俺とアンドロイドーーナナだったか? ナナの融合はどうやったら解くことが出来るんだ? 

 多分今はそれが出来ないから困ってるんだよな?」

 

「ふん。奴隷にしてはまあまあ頭が回るかしら。

 そうなのよ。でもそこは安心して。地球征服さえ終われば、本国に戻ってお前もナナも元に戻せるかしら」

 

 酷く不服そうに唇を曲げる少女。

 

 なるほど、なるほど。

 逆に言えばそれが終わらなければ俺を追い出せない、と。彼女からしたら俺は大事なパートナーを突然奪った異物なわけだ。そりゃあ態度も刺々しくなるか。

 ……いや、それでも流石に奴隷は言いすぎだよな、うん。

 

「それじゃあ二つ目だ。ここを、地球を支配するって言ったよな?

 具体的には俺に何をさせるつもりなんだ? 各国の軍隊相手に大立ち回るするとかは流石に御免だぜ? 血とか戦闘とか怖いし」

 

「お前たち未開人と違って、私たちはそんな野蛮な方法はとらないのよ。

 ただお前たちが道を踏み外さないように「港」と「灯台」を設置しに来ただけ。越権行為をしない限り、今の治世へは一切干渉しないのよ。

 ついでに言えばこれはお前たちの為でもあるのよ。宇宙には先に言ったような強硬手段を取る過激派連中もいる。

 そいつらから地球を守るためにも、私たち王国の庇護下は一番安全なのよ」

 

「……ふむ」

 

 なるほど、確かに理に適っているように見える。

 ただそれはあくまで強者(かのじょ)視点での話だ。越境行為や「港」と「灯台」の機能如何によっては、最悪「地球とかいう危険因子はゴミ箱にシュートっ」ルートもあり得るだろう、多分きっと。

 次はそこら辺を問いただそうと思ったところで、少女はひらひらと手を振った。

 

「さ、これで質問タイムは終わりかしら。

 というかさっさと寝たいのよ」

 

「あ、そうだな。悪い、続きはまた明日だな」

 

 俺の返事を聞く前に、彼女は自身の隣に謎の物体を顕現させた。

 人一人分の大きさはあろう白い円形の額縁、その中には何やら青色の気色悪い物質がぐるぐると渦巻いている。

 

 もしかして異空間に通じるゲートとかそんな感じだろうか?

 おおすげー、向こうに何があるんだろうっと胸を弾ませながら一歩足を踏み出して――ぴたり、と体が止まった。

 

 氷のように冷たい視線が俺を射抜く。

 

「なんで私がお前なんかと一緒に寝なきゃいけないのよ。

 そもそもお前、元は男だったのよね?」

 

「ぐぅ」

 

 そう言われてしまっては黙るほかない。

 正直、こんなちんちくりん相手じゃ劣情とかが沸きようがないけど、まあ向こうの気持ちは分かる。

 ここは仕方なく別の場所? を出してくれるのを待って、待って……

 

 彼女の姿がゲートと共に奥に消えてから早数十分。

 夜の森に残されたのは、体の主導権を奪われたまま佇む俺一人。

 

 ……え。まじで? 俺、今日はずっとこのまま?

 

「お、おーい。流石に冗談だよな?

 もしかして俺、さっき変なこと言っちゃった? それなら、ほらちゃんと謝るから……」

 

 恐怖に突き動かされ、唯一動かす口で届くかも分からぬ言葉を紡ぐ。

 さりとて返ってくるのは木々の静かなざわめきと虫の声ばかり。

 

 やばいやばいやばいっ、これはあれだ。真剣と書いてマジなやつだ。

 心の安寧のためにも、何とかして言いくるめねえとっ。

 

「だ、誰か来たらどうするんだ?

 ほらこんな可愛い子が森の中に放置されていたら、並の男は無視できないじゃないか? そしたら警察ーー地球の治安維持組織を呼ばれたりして面倒だと思うんだよな。だから」

 

「はあ、全く。仕方ないのよ」

 

 どこからか彼女の声が響くと同時に、目の前にさっきのゲート(仮称)が開く。

 そのまま俺の意思とは関係なしにゲートの中へと足を踏み入れて――

 

「おすわり」

 

「んぎゃ」

 

 ――再び膝をついた。しかも今度は完全に目と口を封じられた状態で。

 闇に包まれた視界。辛うじて分かるのは、足元に広がるカーペットらしき柔らかい感触くらい。

 

「んーっ」

 

 部屋を見られたくないからって、そこまでやるかっ。史実の奴隷だって夜の時間位自由はあるだろ、知らんけど。

 こんのっ、鬼、悪魔、ちっぱいめっ。

 

 そんな罵倒も何のその、四足歩行(・・・・)でどこかへと歩いていく俺の体。

 やがて、ガコンという音と共にどこかへと腰を下ろした。体の奥底が徐々に温かくなるような不思議な感覚に襲われる。

 

 な、何をしているんです? 怖いって、いやほんとに。

 今までの話は全部嘘で、これから人体実験に突入するとかそんなわけじゃないよな? 信じて、いいんだよね……?

 

「心配しなくても、お前に危害を加えるつもりはないのよ。

 ただ私からナナを奪った落とし前をつけてもらうだけかしら」

 

 い、いやそれは別に意図したわけじゃないんだって。

 俺だってこの体から出られるんだったら早く出たいし……。

 

「おやすみ、奴隷。

 お前はただ私の指示通りに動く人形であれば良いのよ。それ以上も以下も必要ないかしら」

 

 頭上より響く容赦ない言葉。

 言い訳すら出来ぬまま、世界が遠くなっていく。

 

 ーーうん、やっぱこいつ嫌いだわっ。

 薄れゆく意識の中、俺はそんなことを思ったのだった。

 

 

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