ガンダムビルドフォーディーズ   作:さんこのれい

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シーズン1
01 Departure-A


都会の喧騒、何一つ変わらない日常の中、目の前に横たわる彼女の兄。

顔を見せない兄の頭からはどろっとした赤い液が溢れ出し、それが地に広がっていく。

都会の喧騒、何一つ代わり映えの無い日常の中、彼女の周囲でだけ理不尽に非日常が始まっていく。

 

車のエンジン音、歩行者の時間の終わりを告げるアラーム、そしてかすかに聞こえるシャッターの音。

彼女には何の知識も無い。何をすべきかもわからない。動けない。だからこそ周囲の感覚がよく読み取れた。

他人行儀の悲鳴と観客気分の嘲笑。

そして自分の手の中にあるものの感触。

 

それはプラスチックの塊。プラスチック製の組み立て模型。

『機動戦士ガンダム』というシリーズ作品のプラ模型。略してガンプラ。

彼女の手にあるそれは地に広がるそれと同じ色の涙を流す二本角と大きな翼を携えたロボ。

デスティニーガンダム。

 

兄が最も大事にし、最も大事に刻み、最も大事に動かしていたそれを彼女は手放す事ができなかった。それを手放してしまったら、兄の全ても諸共に手放してしまうような気がしていたから。

 

 


 

美しく思われた人々の感情は常に悲しく、重んじた伝統は弱者としての叫びの中に消え失せる

戦いにおける勝者は歴史の中に衰退という終止符を打たねばならず、若い息吹は敗者の中より培われてゆく

私は、敗者になりたい

 

―――トレーズ・クシュリナーダ

 


 

 

20世紀と呼ばれていた時代より人の技術は大幅に進歩した。

激動の20世紀の勢いのまま加速度的に発展する技術はあっという間に世界を塗り替えていく。

 

それは普段見る世界が狭ければ狭いほど屯著であり、例え見る世界が大きかろうとも例外なく影響を受けている。

今、街の大型モニターに映る白いロボとそれが飛び回る宇宙の様もいずれは実現するのだろう。今度は仮初ではない本当の宇宙でだ。

 

世界はあっという間に変化する。モニターに映る白いロボの形が変わり、赤い光を放つガンダムへ変身するように。

 

しかしそれでも顔見知りでない人物が身体を向かい合わせて会う方法は数十年経っても変わらない。

待ち合わせ場所と判別するための目印を記憶する。そしてそれを基に人を探す。

ただそれだけの話だが逆に言えばそれをしなければ会えない。

 

何故か、それは年が一つ一つ数えだされてから丸2000年以上経ったにも関わらず人は変化していないからだ。

その不便さを改善するための進化も、それ以外の進化も人はしていない。だからそうしなければ人と人は会う事はできない。

それだけは技術ではどうにもならない所だ。恐らくこの先もそうだろう。

 

人は今のあらゆる不便を改善する変化をすること無く滅びへと向かっていくのみだ。

人はもう進化などしない。

ゴキブリが数億年の間その姿を保っているように。

 

 

「ケン。男の名前なのに、なんだ女か」

少女、俗な言い方をすれば幼女とも言える彼女と15以上は年齢が離れている男三人組が気取ったように声をかけた。

「ケンはわたしのお兄ちゃんです。私は」

「ブサイクな妹だな。親の顔も見てみたくなってきた」

 

本題にすら入らないままぶつけられた悪意に口を開けて唖然となった少女に対し矢継ぎ早に疑問が投げかけられる。

 

「でお前の兄貴は?」

「兄は、事故で来られなくなりました」

ざまぁみろ、と誰かが呟いた。天罰だ、と他の誰かが呟いた。

 

「その証拠は?」

粘着質な音を立てながら口角を上げた男は呟きと矛盾するその一言で叩き切る。

「こっちは何か月も前から約束してたんだ。言い訳して逃げたんじゃないのか?」

 

そんな事はない。兄は事故に遭い今も目を覚ましていない。それは事実だ。

数日前兄は轢き逃げに遭った。数十キロで動く車との衝突の上頭を強く打った彼は未だ目を覚ましていない。

逃げた犯人は捕まったがそんなもので何も事態は好転しない。

兄はとある界隈で多少名が知れた人物らしいがニュースになるほどの人間ではない、狭い世界での有名人だ。

毎日世界中で何十何百と発生している事故の一つを取り上げるほど他人は個人を見ていない。

 

だからこそ彼らはそれを知らない。

だからこそ彼らは敵が自分たちに恐れをなして逃げたのだと信じ込んだ。

 

それが間違っていようが否定できる証拠は無いし、この場だけでもそういう結論として済ませてしまえば自分達の勝ちだ。

 

だがそれでは完全勝利には一歩及ばない。

完膚なきまでの勝利に必要な条件はまだ達成できていない。

だからこそ、達成の糸口をしっかり考えてきている。

 

「ごめんなさい。でも信じてください」

「ごめんなさいで通るなら警察なんていらねぇんだよ」

理屈の無い否定、被害者気取りの横暴。今ここに、客観的に見ればチンピラに絡まれる被害者の構図が出来上がっていた。

 

しかしそれを止める者はいない。通行人に何かの主人公になろうという気概はない。あるのはチンピラの標的にされる事への恐怖だけだ。

この場で主人公の気概を持っているのはそのチンピラ達だけだ。

 

輝かしく潔白で完全なる被害者である主人公たちは今完全にこの場を支配し、このいざこざの解決の糸口を提示する。

 

「ならもういい」

「端末とガンプラは持ってきてるんだろ?」

言葉なく頷いた。兄が大事にしていたデスティニーガンダムとガンプラバトル用の端末は確かに持って来ている。それが約束であり、悪手だった。

 

「お前が代わりにバトルするんだよ」

少女はあらゆる意味で断れなかった。恐怖と、怒りと、逃避。

少女は戦わなければいけなかった。あらゆる意味でこの場を納める最善の手がそれだったと信じてしまった。

 


 

加速度的に向上する技術の結晶、その代表として今挙げられるのがこのガンプラバトルシステムだ。

 

プラスチックの模型であるガンプラを動かし、戦わせるという技術。手先の技術が数値に反映される技術。

 

機動戦士ガンダムの知名度も相まって瞬く間に世界中に広がり、ガンダムの名をさらに轟かせることになった。

ガンプラバトルシステムの登場により名が広がった今、世でガンダムを知らない者は極端な発展途上国以外にはもはやいないと豪語できるほどだ。

 

そんなガンプラバトルシステムはゲームセンターの一角にある。

ゲームセンターにおいてガンダムというコンテンツはそこに長年居続け、ガンプラバトルシステムもまたその流れに連なるように設置されていた。

 

何重もの音が重なる中、それでも近付けばはっきり存在を認識する異質な空間。その空気感を彼女は知っていた。

そしてその機械の存在も動かし方もある程度は知っていた。兄の膝の上で、あるいは傍らで何度も見てきていた。

 

 

「Please set your Device」

 

兄の端末を視界の中央下にある平面体に押し付けると、それを読み取った機器が彼女に不相応な仰々しいランクと称号を画面に表示させる。

その裏では様々な情報が駆け巡り、最後の一瞬を受け入れる準備が着々と進んでいく。

 

コクピットの位置や武装の性質・弾数・ビットの移動制御といったプラスチックやメタルパーツでは表現しきれない内部データを端末から読み込み世界を広げていく。

 

この端末読み取り式はとある事情でかなり評判が悪く、変更を求める声が何度も挙げられているが未だその傾向は見られない。

故にネットゲームとして落とし込んだガンプラバトル、ガンダム作品ではGBNと呼ばれていたそれの利用者の多くはそういった不出来を理由に現実に見切りを付けたと言う。

 

だが旧式かつ往来のゲーム筐体でありがちなカードでのデータ読み込みでは、データの変更の手間の問題と既に全世界に広まった知名度の観点その他諸々の観点から力不足なのだ。

 

これはファンタジーではないし都合の良いフィクションでもない。

あらゆる機密をすり抜けて技術吸収などという茶番が起こらなければ、仮に起こせたとしても場合によっては、現時点では到底達成できない課題だ。

 

ある種妥協の産物でありつつ最先端でもある技術はトライアンドエラーの繰り返しで練られた設定とカードでは管理しきれない程の膨大なデータを読み込んでいく。

 

そして筐体は最後の一押しを所持者に命じる。

「Please set your GUNPLA」

 

機器の一部が裏返り、暗闇の中からディティールが刻まれた鉄の棒が顔を出す。その先端は3mm程の更に細い棒がついており、ガンプラが接続されるのを待っている。

 

デスティニーガンダムに備わったジョイントパーツに筐体を接続すると鉄の棒がガンプラを暗闇に引きずり込み扉を閉めた。

兄のガンプラを使って勝手に戦う。その現実に怖気付く。しかしあの場で首を縦に振らなければどうなっていたのかもわからない。

明らかに冷静を欠いた瞳は画面に映る情報を映しつつも読み取れていない。

 

文字が消え、画面も消えると世界が一変した。

灰色、鉄色の箱の中、前後に伸びる通路、身体の軸の位置から床を這うように設置されたカタパルトが見える。

 

ここは惑星強襲揚陸艦ミネルバ。原作におけるデスティニーガンダムの母艦と言える戦艦の内部だ。

見慣れた光景だった。兄がこの戦艦からの発進を好んでいた故、出撃シークエンス演出もこの戦艦に固定していたからだ。

兄が瞳を輝かせながら叫ぶ口上を思い出す。

 

「佐々宮まゆ!でってぃにー、行きます!」

緊張して舌が回らなかった。その声と共に身体が後ろに引っ張られる。背もたれに背中を押されているかのように視界は前へ前へと動いていった。

 

これも20世紀以降加速度的に発展した技術の産物、文字通り世界を塗り替えるに至る最先端だ。

360度視界の全てに広がる映像技術と人体に害を及ぼさない程度にGを再現する巧みな機械技術。

 

日常を、自分の見る世界を一瞬で塗り替える程の臨場感。

既に臨場感という名の非現実はその卓越した技術によって有質量が支配すべきリアルにも影響を及ぼし始めていた。

自分が、ガンダムの世界の一員となったのだと誤認させる程に。

 


 

鉄の壁で作られた筒から射出されるとそこに広がっていたのは黒い空間。一般的にイメージされる宇宙空間そのものだった。

 

演出の都合上少し白がかっているとしても暗い仮初の宇宙空間だが、本来そこにあるべきではない色鮮やかな光と爆発に彩られ暗さを感じさせない。

あくまで演出ではあるが、その輝きがこの空間を戦場だと認識させる。遠くに白と灰色の大地、青い光が見える。

 

マクロな視点で見れば血の見えない戦場。それがガンダムの世界の戦場だ。

戦争の主役がセンチメートル単位の人間からメートル単位の機械へと変わった事の弊害。高熱のビームと爆発と分厚い装甲が不都合な人間の中身を覆い隠し、それにより多くの人がその殺し合いを楽しめる。

現に今、少女は戦場に出る恐怖よりもその臨場感と雰囲気に感動をしている。

 

その感情に水を差すようにビームが顔の横を通り過ぎた。攻撃の方向をデスティニーのカメラが向き、3機のピンクの機体を映す。

 

イージスガンダム、ジャスティスガンダム、そしてインフィニットジャスティス。アスラン・ザラの乗機で構成されたチームだ。

赤い囲いがそのうちの一機を捉える。「ロックオンが完了したのでタイミングを見て敵を撃て」という意味が一瞬で読み取れた。

 

レバーについている引き金のようなボタンを人差し指の関節で押すと、デスティニーは体勢を変え、ビームライフルで狙いを定め、引き金を引いた。

 

ビームは正しく囲いの中心へ飛んでいく。しかし機体は既にその場にいない。

射撃体勢から戻る間もなくバルカンが3方から浴びせかけられる。ビームだったら終わっていた、とでも言いたいように。

 

敵が近い、違う武器を持たなければ。その一心で押したボタンによって機体がオートマチックで作動する。デスティニーがライフルを捨て、手を広げる。掌部に搭載されたビーム砲パルマフィオキーナが暴発気味に起動した。

翳す手のひらを見て、心がざわつき、弾けた。

 

「トゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウ!!!!」

 

怪鳥音とも違う叫び、奇声がコクピット内に響いたかと思うと、デスティニーの片腕が無くなった。

脚という質量を伴ったビーム刃、グリフォンビームブレイドはそのままデスティニーの機体を弾き飛ばす。

 

「へあ!へあへあへあへあへあ!!」

叫び、何度も聞こえてくる奇声と共に両足のビーム刃が左右に揺れる。

狂ったように繰り返される単調な蹴りも不慣れなマユでは凌げない。

 

「この!ぶぁか野郎ぉぉぉぉ!!!」

裏返った叫びと共に繰り出されるローキックがデスティニーの片足を粉砕する。

マユは知る由もなかったが、それがデスティニーの運命であり原作通りの展開。

 

そしてそれはインフィニットジャスティスのパイロットにとっていつしか夢見た瞬間だった。

 

主人公を気取って調子付く、一切成長もしない反省もしない救いようもない糞餓鬼に決定的で不可逆的で完璧な敗北を叩きつける瞬間、それを自分自身が作り上げる快感にインフィニットジャスティスのパイロットは震えた。

 

知った誰もが望んでいた。彼らのようになりたいと。

言葉遊びでそれを否定しつつも周りの誰もがそう望んでいた。

彼は今、その理想の最前線に立ったのだ。その事実が彼を絶頂へと誘う。脳内物質が駆け巡り天国と現実がリンクする。

 

彼こそがアスラン・ザラ。今その瞬間こそ理想が現実であり現実が理想だった。

だからこそ、そのような状況だったからこそ、彼は妄想や過言ではなく真の意味でアスラン・ザラに成り得た。

本来であれば察知できない、聞き慣れない波動の音と共に降下するピンク色の螺旋を避けられたのだから。

その神がかりな感覚はアスラン・ザラならではとしか言いようが無かった。

 

螺旋がデスティニーとインフィニットジャスティスの間を引き裂く。

即座に射手を特定せんと見上げた先に察知したものに顔をしかめた。

この完成された空間を台無しにした異物は銃口を向けたままこちらに近付いてくる。

 

「ガンダム…?」

知識の無いマユは訝しむ。彼女の知るガンダムはデスティニーただ一つ。その周りの有象無象のSEED機は名前も覚えていない。

二つ目と二本角があればガンダムを連想する程の単純さは持っているがそれで割り切る程の無難な考えに至るには幼すぎる。

 

「んだよテメェ」

乱入してきたそれが何なのかを理解してはいるが別の意味で幼い彼らもまた叫ぶ。それに帰ってくるのは怒りと嘲笑を入り混じらせた男の声だった。

 

「初心者相手に1対3とかどんな神経してんだよ!」

 

罵声を形にしたかのように破壊の螺旋が再びインフィニットジャスティスに伸びていく。それを避ける為にインフィニットジャスティスは更に距離を離す。

 

互いの足が届くほど近かった二機は今や互いの間合いから完全に外れ、デスティニーの傍らにガンダムらしき乱入者が割り込んだ。

 

デスティニーと同じく白の手足と青の胴を持つその暫定ガンダムは近くで見るとデスティニーとは大きく異なっていた。

額と同化しているようにも見える二本角は後ろに伸び、その胴の中心に空洞がありその中で規則的な線が緑に輝いている。その線は塊を作り、英字のAを象っていた。

 

罵声、自己正当化の詭弁の混線を掻き分け、男の諭すような声がデスティニーのコクピットとマユの心の奥底に届く。

 

「とにかく動き回って。当たらないように左右に動くんだ」

「大丈夫。全速力で動き回ればもう当たらない。オーバーブーストにだけは気を付けて」

 

アロンダイトを片手に今できる限りの全速力でデスティニーを飛ばす。

しかし初心者の、しかも機体バランスが崩れた機体の全速力など経験者からすれば的でしかない。

 

その事実の元、馬鹿が逃がすかと発射した580mm複列位相エネルギー砲、スキュラがあらぬ方向に飛んでいくのを見てイージスが驚愕した。

宇宙に、赤い雨が降り出していた。

 

「やらせないって」

「ナイスだネーナ」

 

漏れ出す通信音声はイージスの背後から聞こえ乱れている。それにイージスのパイロットが気づいた時にはビームダガーがコクピットに突き刺さり、人を蒸発させる炎の刃が機体の内側まで入り込んでいた。

 

ダガ―が引き抜かれ僅かに位置をずらして突き刺す。

イージスのコクピットからビームの刃が生えては潜り込みまた生えていく。脱出ハッチ諸共ビームダガーがコクピットを焼き潰していく。

それが機体が沈黙するまで繰り返された。

 

「機体はそのまま、パイロットには死んでもらう」

コクピットが潰れデブリと化したイージスがジャスティスに向かって蹴り飛ばされた。

 

ジャスティスは飛んできたデブリを両肩のビーム砲、MA-4Bフォルティスビーム砲で打ち貫く。名前通り『強力な』ビームはデブリの機構や動力を巻き込みながら焼き砕く。

 

デブリは瞬く間に爆発を引き起こし、視界の妨げとなる。レーダーも乱れに乱れ敵の位置が把握できない。その爆風を搔い潜るように今度は鉄の板が矢のように、緑の鏃を携えて射出される。

 

ジャスティスの肩口に突き刺さった緑の鏃、シールドに取り付けられたシグルブレイドは機体のバランスを大きく崩しピンクの螺旋に会心の狙いを付けさせる猶予を与えてしまった。

 

発射された螺旋を防ぐ為に突き出された紫色の盾の上でぐるぐると回転する粒子が盾の装甲を削り穿ち、コクピットとその中でデータとして存在する人体を焼き尽くすまでに2秒もかからなかった。

 

「ドッズライフルにそんなもの効くかよ!」

何が起こっているのか、一番理解できていないのは助けられている少女だ。逆に僅かな知識さえあればこの状況を理解するのは容易い。

 

ビーム粒子の回転が引き起こす貫通力によって敵装甲を消滅させるドッズライフル。一説にはAG世界最大の発明とも言われるそれを携えるはガンダムAGE-1。

 

そして上方からジャミングによって逃走と背面取りをサポートしたのはガンダムスローネドライ。

スローネシリーズの三番機、故にドライの名を与えられた異形のガンダム。バックパックから噴出する赤いGN粒子が周囲の索敵機能を麻痺させている。

 

ガンダムAGEとガンダム00、SEEDとは異なるそれら機体による介入が戦況を一変させた。

 

「おいインジャ!そんなにキックが好きならやってやろうじゃねぇか!」

叫びに呼応するかのようにどこからか飛んできた飛行機、支援ユニットAMEMBOがAGE-1に近付くと四肢を外し入れ替える。

ガンダムAGEに属するモビルスーツが持つウェアチェンジシステムだがそんなものを一切知らない少女は茫然としていた。

 

「このレイザーでな!」

ビームすら切り裂く緑の鏃、レイザーブレイドを両手両足に携えたレイザーウェアでインフィニットジャスティスに肉薄する。

 

それに対しインフィニットジャスティスは、その名通りのこの世が存在する限り無限に在り続ける正義の怒りを悪魔にぶつけていく。

最初のガンダムが始まった当時そう謳われていたように。

「生意気なんだよォ!クソアニメがでしゃばるなど!!」

 

何故その場でそう言い放ったのか。何故よりによってその言葉を選んでしまったのか。

それは彼の無意識、愛が成した奇跡だった。無意識に言葉として出る程何度も何度も聞いてきたのだろう。その愛は対峙する者は幻覚すら見せた。

 

ガンダムSEED、その初陣。ストライクガンダムと対峙するジン。そのパイロットであるミゲル・アイマンの姿をAGE-1のパイロットははっきりと見てしまった。

 

それはインフィニットジャスティスのパイロットが確かに、間違いなく、ガンダムSEEDを愛していることの証明。その愛が成し遂げた奇跡だった。

だからこそ、彼は鼻で笑った。

 

しかしその一瞬の油断がまずかった。彼はその一瞬ミゲル・アイマンではあったがミゲル・アイマンそのものではない。

彼の本質はアスラン・ザラだ。AGE-1は彼の天才的な戦闘センスを甘く見た。

 

三下同然の叫びを聞きある種の勝ちを確信した次の瞬間にはモビルスーツを明らかに凌駕した大きさの何かが戦場を横切りながらインフィニットジャスティスの後ろに滑り込んで来る。

大きな二本の剣を左右に携えたそれはインフィニットジャスティスを挟み込み、蟹が獲物を捕食するようにその中心で機体がずぶりと接続する。

 

「は…ミーティアだってぇ!?」

 

AGE-1が素っ頓狂な驚愕の声を上げた。考えなしに飛び込んだバトルとはいえ、藪をつついて蛇を出すとはまさにこの事。もっとも出て来たものは蛇などという可愛いものではない。それは彗星だ。

 

AGE-1の支援機AMEMBOとは比較にならない程の巨大な砲台でありジャスティス専用の支援機、それがミーティア。

超大型支援機とドッキングしたインフィニットジャスティスは機械の化け物としてそこに君臨した。

 

「甘く見るんじゃねぇ!あのクソ犯罪者をブッ殺す為にちゃんと用意してきてんだよ!!」

「まずはテメェらをブッ殺してやる!!あのゴミクズはその次だ!!!」

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