ガンダムビルドフォーディーズ   作:さんこのれい

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05 Daten-A

ネーナ・トリニティ。武力介入による戦争根絶を掲げたソレスタルビーイングの別働隊チームトリニティの一人。有毒の擬似GN粒子を用いたスローネシリーズを駆り、ガンダムチームとは違った方法で目的へアプローチをしている。

 

性格は残虐かつ幼稚な人格破綻者。そしてチームトリニティを指揮するアレハンドロ・コーナーはソレスタルビーイングの背信者。故にガンダムチームの破滅をもたらす。

 

ネーナは任務中に見かけた結婚式場に自分が不愉快になったと言う理由だけでビームライフルを撃ち込み一般人を虐殺したのだ。この騒動は世界中に知れ渡り、ソレスタルビーイングの危険性を世に知らしめることになった。

 

その後アレハンドロ・コーナーによってもたらされた技術により擬似GN粒子を持つGN-X(ジンクス)が開発量産され、GN粒子のアドバンテージを失ったガンダムチームは壊滅した。

 

それ以外にも主人公、刹那・F・セイエイとヒロイン、マリナ・イスマイールの間に割って入るような、全ての行動が視聴者に不快感を与えるよう機能している、同情の余地が無い外道。

その様から刹那・F・セイエイからはその様を見られてこう言われている。

貴様はガンダムではない、と。

 

 

「でもそれってあの人と関係ないですよね?」

マユは話を全ては理解できていない。それでも知り合いが悪く言われていればそれを否定したいと言う気持ちもあり何とか言葉を出そうとして悪手を踏んだ。

そもそも反論をすること自体が悪手だとどうして気付けるのか。年齢が一回り二回りも違う幼女からの反論、それも不可抗力とはいえ真っ向からの否定にカスガは激怒した。必ず、あの邪智暴虐の存在は取り除かねばならぬという決意が彼女にはあった。

 

 

「関係ある!」

 

まさに怒号の見本のような叫びと机に叩きつけられた手が生み出す振動に反論が殺される。

 

アカツキと対峙した時以上の怒り、客観的に見れば悪意がマユも感じ取れた。それが共通の敵ではなく知り合いに向けられているという事実が堪えようのない嫌悪感を湧き出させる。

 

「禁忌肢って知ってる?」

 

突然の問い。当然知る由もない答え。禁忌肢などと言う言葉も大学、それも医師国家試験を受ける一握りの人間にしか聞き馴染みのない言葉だ。マユが知るはずがない。

 

禁忌肢、それは文字通り与えられた選択肢の中からよりにもよって禁忌を選ぶ事であり、その行動そのものが論外。

他がどれだけ優れていようがそれを選べば評価に値されない。全てが否定される。

 

「ガンダム00を愛する者としてネーナ・トリニティは絶対に許してはいけない存在なのよ。普通に見ていればあんなものを好きになるはずがない。ガンダム00はそうできているの」

 

心の引っ掛かりのまま同じ反論を繰り返す。ネーナ・トリニティがそうであったとしてもネーナがそう言われる理由にはならない。一度言ってしまったからにはそれを貫き通すしかない。

 

「格好まで似せて真似しているなんて論外も論外!何も知らない声豚か、下半身でモノを考えるチンポ野郎か、そうでなければ自分も人を殺してみたいと思ってる犯罪者予備軍だけ。まぁどれも似たような社会的に生きていちゃいけないものよ」

 

「嫌われて然るべきキャラクターがわからないくらい程度の読解力しかなくて倫理もないならアニメなんて見るべきじゃないわ。そんな奴がいるからオタクアンチどもがつけあがるんだから」

 

生きていてはいけない。その言葉は他人事だからこそ受ける衝撃は少なく、他人事だからこそ冷静な分析ができた。最近ガンプラバトルに触れるようになってからよく聞く言葉だ。

 

シン・アスカは死ね。兄とあの世で仲良くしていろ。最近何かと死を望まれていた。これはそれと同じか。

 

「いい事を思い付いた。次のターゲットはあいつにしましょう。私とあなたで、あの性悪女を殺してやるのよ」

そう思っていたのに、首を横には触れなかった。

断れば何をされるかわからない恐怖を感じていたからだ。今ここで蛮勇を振るえなかったからこそ、マユはネーナを誘き出す役割を押し付けられた。

 


 

ネーナを誘き出し、やってきたネーナをカスガ達と一緒に叩きのめして再起不能にする。

それが作戦だ。誘き出す役割は知り合いであるマユ以外にはできない。

 

つまり自分が動けばネーナが危険な目に遭う。自分がアカツキにされたような事か、それとも想像もつかないくらいもっと酷い事なのか。マユが想像できるラインで起こり得る事ですらその引き金が自分の行動であるという事実に嫌悪する。

 

しかし断れるほどの強さはマユにはない。あの時のカスガの表情は、まるで家族をネーナに殺されたかのような憎悪は、あのまま思い通りにいかなければその悪意をマユにすら向けかねなかった。マユにとってカスガには恩義があるからこそ尚更だ。

 

やらなければいけない言い訳を用意する。電話をかける要件は無くはない。そして、もし万が一ネーナがいなくなったら、ウタダは一人になる。

電話帳アプリをタップしネーナの携帯へと繋ぐ。出るなという感情と出てくれという感情がうなじを指圧する。

 

「もしもしーエリオじゃなくてアタシに電話なんて初めてじゃん?どうしたの?」

出た。

それだけで中途半端な覚悟がもみくちゃにされる。

何を言うか、どう言うかも考えていない。しどろもどろな言葉を、温かい目で見られている中、無理やり組み立てた言葉を自棄気味に放り出す。

 

「ネーナさんはどうしてそんな格好をしているの?」

 

口元に当てられた電話だからこそ、息を呑むのが電話越しに伝わる。

余計な事を言うつもりは一切なく、ただ確認したいからこそ沈黙が訪れた。

 

「エリオがね、ネーナの事好きなの」

僅かな溜息の後聞こえたその答えはマユには刺激が強すぎた。

 

情報と倫理観が混ざり合い灰色になる空間の中で理性が踠く。辛うじて出した言葉はさらなる疑問の投げかけ。泥の底まで潜り込むに等しい行為でも止められない。義務感と非現実な一縷の希望がマユの口を動かしている。

 

「元々ね、アタシはガンダムなんて興味無かったんだ。アニメなんて見るより友達と遊んでたいしプラモデルなんかにお金使うくらいならおしゃれしたい」

 

「でもエリオと出会って好きになっちゃった。相手にも自分の事を好きになって欲しいと思ったら、マユちゃんならどうする?」

困惑の中言葉を捻り出し辛うじてわからないとだけ伝える。

 

「相手の好きなものになったらアタシの事を好きになってくれるって思ったの。だからアタシはネーナ・トリニティになるって決めたんだ」

「その為に髪を染め直してお化粧も変えた。喋り方もちょっと変えた。エリオにおねだりして、スローネドライのガンプラを買ってもらって一緒に組み立てた。その後は一生懸命ガンプラバトルの練習した」

 

恐怖すら感じていた。マユには全く無かった発想。そこまでするかという衝撃、そして永遠にあると錯覚していたものを奪い去る何かが現実になって現れた事に。えも知れぬその感覚は危機感に似ていた。

 

「そんな感じ」

しかし心のどこかで親近感も覚えていた。例えガンダムを知らずとも、それに興味を持った経緯に似たようなものを感じる。

 

兄の事が好きだったからこそマユが結果的に手に取ったものがデスティニーだったように、ウタダがネーナ・トリニティの事を好いていたからこそネーナが選んだものがネーナ・トリニティであり今の容姿でありスローネドライだったに過ぎない。

 

自分とネーナに何の違いがあるのだろうか。そして、兄がもし違うガンダムが好きだったならどうなっていたのだろう、もし兄がキラ・ヤマトの事が好きだったならどうなっていたのだろうと一瞬湧き出た思考は具体的に表現され心に残る時間を与えられることはなく溶けた。

 

「何かあったの?」

思考を表現する前にネーナも遠慮無く刺してきたからだ。

今まで聞かなかった事、マユが知らないはずの事を聞いてきたのだから当然だ。急に投げかけられた質問はマユに何かあったから、それもネガティブな出来事があったからだろうとネーナは正しく判断した。

 

「今は、ちょっと。今度、また会えない?ウタダさんと三人で」

「いいよ。いつにする?」

二つ返事だった。

 


 

「ああ、臭い臭い。人殺しの臭いが臭くてしょうがない。あんたのことよ。ネーナ・トリニティ」

 

二人に最近できた小さな友人は知らない男女を連れて現れた。女がそう口上を垂れれば男がくっさくっさと同調しながらこちらをにやにやと眺めている。

 

「えっと、何か、用ですか?サザミヤちゃんとはどういう…?」

「マユちゃんは私達の同志。その売女をブッ殺しに来たの」

「いやそんなこと言う人達とガンプラバトルする気ないんで」

「あら可哀想なマユちゃん。向こうはマユちゃんのことをお友達だなんてぜぇんぜん思ってなかったのね!やっぱりネーナなんて好きな奴は性根まで腐っているの!」

 

マユの両肩に手が置かれるのを見てウタダも流石に危機感を感じた。断り続けたら最悪マユに何かする。女の、カスガの目はそういう目だった。

 

「ガンプラバトルしましょう?どっちが正しいか、戦争だ」

金を出せとか言ってきているわけではない。ただガンプラで遊ぶだけだ。

それでも、こんな形でこの子とバトルしたくなかった。そう呟いたのをマユはっきり聞いてしまった。

 

カスガの標的はネーナだけだ。ウタダがいなくてもこの場は成立した。それでもここに呼んだのは、ウタダの気持ちを確認したかったからだ。

 

彼は、自分を敵に回してでもネーナの味方であり続ける。

カスガはネーナを潰すのを止めない。

それを見聞きしてしまったからにはもう、一つの迷いも無くなった。カスガの手を払い、距離を取る。

 

「カスガさんすいません。わたしは、こっちにつきます」

目を見て話せと教えられているが今はカスガの顔を見る気はなかった。人が人に向けるべきではないあの悪意の目で見られていると認識したくなかったからだ。

 

「は?」

それでも聴覚が明確に伝えてくる。苛立ちと憎悪。状況の理解が追いついていないが故に最高速ではないものの、このまま話を進めていればあっという間に全力になるのは目に見えている。

 

「色々良くしてもらったのにすいません。でももう嫌です」

「なんで今?」

「今だからです。わたしは二人と戦えません」

 

「まるでアスランね。キラと戦いたくないから裏切りますーって?そうやってあと何回裏切るんでしょうね?」

「遊ぶだけなんだからメンバーの組み合わせなんてどーでもいいだろ。でもまぁこれでこっちは三人そっちは二人?これでやる?それとももう一人呼ぶ?」

寄ってきたマユを体の後ろに隠したウタダが睨み付けられている。

カスガは発言しない。人を呼ぶから待っていろ、という発言の情けなさをわかっているからカスガは黙っている。自分達から喧嘩をふっかけた上で予想外の出来事で数的に不利になった上での発言なのだから尚更だ。それはプライドが許せない。

 

「先に筐体入って待ってる」

その間に逃げる。鍵はかかっていないがあの目線を少しでも遮られるなら筐体も立派な避難壕だった。

 


 

灰色の、鉄色の箱の中飛び交う整備員。どこも変わらないその光景だが今までとは少し違う。心なしか風景が少し青みがかって明るく見える。

 

ここは戦艦ディーヴァ。ガンダムAGEにおける主人公の母艦だ。

 

「じゃああの人がサザミヤちゃんにダブルオースカイを渡した人なんだ?」

状況確認の問いに頷いた。

こうなったからには全てを説明した方がいい。その思いで事情を全て話した。

 

何故デスティニーを手に取ったのか、アカツキに何もかもを否定されて泣いていたところをネットに晒されたこと、その後カスガと出会いダブルオースカイを渡されてアカツキにリベンジを果たしたこと。そしてあの日の別れ際に再度声をかけられた事。

 

時間はたっぷりあった。しかし二人はそれをただ聞くだけだった。説明が終わった後もその話ではなく目の前の戦闘の話に流れる。

 

「トランザムを相手にしたことはある?相手は多分、っていうか絶対やってくる」

その問いには首を振った。自分で使った事はあっても相手にした事はない。しかしあの恐ろしい力がこちらに向かってくるとするならどうすればいいのだろうか。

 

「触った事があるから感覚はわかると思うけど。あとは対策…俺達は強化モード無いから粒子切れ狙いで時間稼ぐしかないか」

「粒子切れ?」

「トランザムって機体を動かす粒子を無理矢理使って動くからずっとそのままでいると粒子が無くなっちゃうの。そうなったら全力で動くのは難しい」

 

「ネーナさんはトランザムできないの?」

「うん。スローネドライのGNドライヴは擬似だし作中の初期型だからね」

「じゃあ、トランザムが来たら私が止めた方がいい?」

「できる?」

「結構この機体で戦ってきたから多分出来る。トランザム中の感覚は好きだよ」

じゃあおねがい。その一言を皮切りに沈黙が訪れる。

 

「ごめんなさい。こんな事に巻き込みたくなかった」

「いいよ別に。最初に首突っ込んだのはこっちだし」

そうなってしまえば話を戻すしかなくなる。

ウタダまで巻き込んでしまったが、それしか打開策を思い付かなかった。ウタダの気持ちを知れなければカスガの味方であり続けていただろう。

 

それに対しての返事。あの日あの時あの場所で二人に会わなかったら、見知らぬ三人のままだったなら自分はどうなっていたのだろうか。兄のデスティニーが完全に破壊されてそれで終わりだったのだろうか。それとも結局カスガと会って、この二人のガンプラを破壊しようとするのだろうか。

 

「でも、この戦いが終わったら、ちょっと話そう」

一区切り、一呼吸置いた後エマージェンシーが鳴り響き出す。相手の準備が終わり、戦いが始まる。

カタパルトに脚部がロックされる感覚を合図に、各々がガンプラバトル開始のスイッチを入れていく。

 

「AGE1はウタダ・エリオで行きます!」

「ネーナ・トリニティ、スローネドライ行くよ!」

「サザミヤ・マユ!ダブルオースカイ!行きます!」

 

カタパルトから射出された三機はそのまま空を飛ぶ、かに見えたがAGE1だけが下に引きずられ視界から消えた。

鉄がぶつかり駆動する音が鳴り響きAGE1が地面に着陸する。AGE1がその首を前に向けると、映ったものは天まで伸びる柱。

 

「軌道エレベーター…しかもブレイク・ピラー事件の真っ最中。二人とも落下物に気を付けて」

 

全高5万kmにも達する人類史上最大の構造物、軌道エレベーター『アフリカタワー』。

太陽発電衛星からエネルギーを送る目的で建造されたそれはガンダム00、西暦世界の建造物だ。それが今は攻撃に晒され、破片が地へ降り注いでいる。

 

AGE1のレーダーに敵機が映りロックオンの警告が鳴る。ロックオン元をメインカメラで映し出したウタダはそこに映り込んだものに訝しんだ。

 

「バンシィ?何でバンシィ?」

そこにいたのは金のアンテナを備えた黒いガンダム。RX-0ユニコーンガンダム二号機、通称バンシィ。可能性の獣の片割れ、一角獣の対となる獅子。

これは宇宙世紀のモビルスーツであり西暦のモビルスーツではない。つまりガンダム00にはいないモビルスーツだ。

 

「しかもノルンじゃない方!」

バンシィには特徴的な二つの兵装が存在する。言及されたバンシィノルンはビームマグナムとシールドを備えたオーソドックスな武装構成。

ノルンではないバンシィはユニコーンガンダム専用装備であるアームドアーマーBS及びVNを備えた変則的な武装構成だ。独り言の合間にアームドアーマーBSが唸り、AGE1が数秒前まで居た箇所をビームが貫く。

 

「ネーナを狙うんじゃないの?」

「スローネドライなんていつでも倒せる。お前を倒した後、原作通りダルマにして殺してやる」

「あー…そういう事かい!」

 

考察して納得に至った答えを解説する必要など一切ない。代わりにドッズライフルの精密射撃をくれてやるが、見えない壁にぶつかり、捻じ曲がり、逸れていった。

 

「Iフィールドにそんなものが効くわけがないでしょう?」

Iフィールド。ミノフスキー粒子を操作する事で同じくミノフスキー粒子によって作られたビームの弾丸を防ぐ機能。宇宙世紀故の技術であり宇宙世紀故に有効である技術だが、異なる世界が混ざり合うガンプラバトルにおいてはミノフスキー粒子由来でないあらゆるビームも防ぐバリアとしてそこに在る。しかしそれでもある違和感がウタダに貼り付いて消えなかった。

 

「貫通力のあるドッズライフルなんだけどな?」

「だから何?あげごときがユニコーンに勝てるとでも?銀魂にすら見向きもされないお前らが」

「お前はガンダムではない!ガンダムどころか頑侍(ガンサム)ですらない!パチモンにすらなれないお前は一体何にならなれるのかしら!?…あっ!産業廃棄物!!」

「ねー…そういうのよさない?」

「何で?効いちゃって辛いから?」

「いや…もうそれでいいよ」

「ッハハ!!論破!論破!!」

 

完全勝利の雄叫びと共に突き上げられる拳が如く振り上げられたアームドアーマーVNがAGE1の装甲を引き裂かんと襲いかかる。

ブーストすら吹かさず、どしどしと足音を立てて向かってくるバンシィの動きと攻撃の線を見切るのは容易い事で、AGE1はあっさりと攻撃をかわした。

 

ドッズライフルが通じない以上接近戦に持ち込むしかない。幸いこちらにはこういう場面でビームサーベル以上に信頼できるシグルブレイドがある。接近戦におけるマイフェイバリットであるが相手がアームドアーマーVNである以上分が悪い。

 

シグルブレイドを叩き込むチャンスは限られているが明確だ。ある一言と、その一瞬を待ち続ける。それはアレがそうであるならば必ず来るはずだ。

 

「トランザム!」

 

その言葉を聞き、機体が赤黒く輝くのを見た一瞬で中途半端に吹かしていたブーストに火を入れる為にペダルを思い切り踏み込んだ。

視線とは逆の方向に、機体が引っ張られるように後ろへ飛んでいく。赤黒く光った爪が残像を切り裂いたのは僅か2秒ほど後だ。

 

「あっぶねぇ!」

大迫力で掠める爪の迫力に飲まれる。予想できていたにも関わらずギリギリだった。

 

「避けるな!」

「避けるに決まってんだろ!ていうか何がIフィールドだ!ノルンじゃないバンシィにIフィールドは無え!」

 

その判断が生死を分けた。

ユニコーンガンダムのIフィールド機能はシールドに備わっている。だからこそシールドを持たないバンシィにはIフィールドは無い。

 

であればライフルを弾いたあれはIフィールドではない別の何かだ。そこから相手の趣味趣向を照らし合わせればあれがGNフィールドだという結論に至れる。

則ちGN粒子を生成するドライヴを搭載している事になりトランザム発動の可能性が大いに出てくる。恐らくガンダムハルートあたりの腰パーツを使ってフレームの一部をGNドライヴそのものにしているのだろう。

 

ビームを弾くそれをIフィールドと誤認したが最後、トランザムによる加速を可能性から排除してしまう。

そうしてアームドアーマーVNの攻撃に慣れて来たところにトランザム発動でタイミングをずらされ致命の一撃が直撃する。

 

恐ろしい不意打ちではあるが本当にやりたい事はそれではないだろう。恐らくだがあれはバンシィであってバンシィではない。あれはレグナントだ。

 

大型可変モビルアーマーレグナント。ソレスタルビーイング壊滅後に台頭した独立治安維持部隊アロウズが開発した機体であり、次世代ガンダム複数機を相手取れるほどの強大な力を持つ。

 

しかしレグナントは現状キット化されていないが故に搭乗したいのであればプラ板やパテを組み合わせて作らなければならず、そのハードルはあまりにも高い。

だから妥協した結果のバンシィだ。武装やパイロットの心理が似ていてかつキットが出ている宇宙世紀のバンシィに目を付け、西暦の技術でカスタムする事で擬似レグナントとしているのだ。

 

であれば今それに乗っているカスガは、ルイス・ハレヴィだ。

レグナントのパイロットであり、ネーナ・トリニティに最も人生を狂わされた人物。親戚の結婚式に参加した彼女はネーナ・トリニティの個人的な襲撃によって家族を皆殺しにされた。彼女自身も左手を失い、再生治療も受けられない身体となってしまった。

 

その事でガンダムを強く憎んだ彼女はアロウズに入隊。レグナントに搭乗してスローネドライごとネーナ・トリニティを殺害した。

 

それを思い返し、ガンプラバトルの事だけではないここに至るまでの全てが繋がる。

あの異様な悪意。こいつは、本気で今ここにいるネーナに殺意を持っている。

何故ならこいつはルイス・ハレヴィだからだ。

或いはネーナを殺す為にルイス・ハレヴィになったのか。

何にせよ殺される側からしたら同じ事だ。あのバンシィ・レグナントはここで破壊しなければネーナが危ない。

 

しかし戦術がわかってしまえばやることも見えてくる。

粒子切れまでひたすら引きに徹するのだ。敵の切り札がアームドアーマーVNというわかりやすい武器である以上、切り詰めれば突っ込んで振り下ろす以外の戦法はない。

 

粒子切れという時間制限がかかることによる焦りと超スピードがもたらす視野の狭窄はトランザムの明確な弱点だ。焦れば焦るほど視野は更に狭まり、動きが更に単調になる。GN粒子の消耗はGNフィールドの展開で更に激しくなる。

 

トランザムによる性能強化とアームドアーマーVNの恐ろしい破壊力というプレッシャーに打ち勝てばあとは容易い。粒子が切れればドッズライフルが通るし当初の予定通りシグルブレイドを叩き込んでもいい。

 

そう思い上がった。

明らかに距離が届かないと思われた爪の合間から煌めく線が装甲に触れ、電流が走る。

 

「海ヘビ!!」

「エグナーウィップだ!2度と間違えるなくそが!!」

バンシィの腕の甲、本来であればビームサーベルが搭載されている箇所がエグナーウィップに換装されていた。

高圧電流を流す兵装は装甲を貫通し、モビルスーツの機器とパイロットに直接攻撃を仕掛ける事で動きを止める。それは距離を取り続けるAGE1の足止め目的には十分すぎる性能を持っていた。

 

赤黒く光るバンシィが左腕を振り下ろし、左右に分かれた二つの双爪がAGE1の両肩を捉えた。




UA2000越え、誠にありがとうございます。
1000達成が03-B投稿時だった事を思い返すと閲覧してくださっている方が増えているのかなと感じ、とても嬉しく思います。

感想を送って頂いている方には特に感謝申し上げます。他人の意見や考えを拝見できるのは新しい気付きや新しいアプローチにも繋がる、本当に貴重な機会になっております。
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