【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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153話 僕が知り合う前の、るるさんたち

「……やっぱり。 直前に結晶化したモンスターの跡があったからそうだとは思っていたけれど、すぐ前に別のパーティー居たのね……」

 

先ほどまで「彼」のいた場所。

そこには少女が数人。

 

皆、配信のカメラに向かっていろいろと話しながら思い思いに話している。

 

その先頭に立っているのは、深い色の長い髪を持つ、切れ長の目をした少女。

 

三日月えみ――愛称は「えみお母さん」。

 

【残念】

【撮れ高が……】

【まあまあ、その分深く潜れるって】

 

「……そうですね、ここは100階層まであるらしいですし、中ボス戦がなくて良かったって思っておきましょう」

 

「はーい、えみちゃんままー」

「私はママじゃありません」

「じゃあえみお母さーん」

「だから……もう、モンスターは居ないとしたって……」

 

中ボスが倒されて残念がるコメントに反応した彼女へ、少女たちが……その双丘に向かって飛びついてきて、顔をうずめて甘えている。

 

「んー、いつでも柔らかーい」

「ふかふかー」

「私のお母さんもこれだけあったら……」

 

「もう……装備越しだから硬いでしょうに」

 

【●REC】

【でかい】

【ここに百合空間が存在している】

【良い……】

【ああ……】

 

(まぁ、この程度ならそこまで恥ずかしくないから良いけれど)

 

「で。みんなはまだ行けるわよね?」

 

「はーい」

「そう、ならこのまま先に進みましょう」

 

【はーい】

【ままー】

【安心安定のえみママ】

 

コメント欄にマネージャーからのGOサインが出たのを確認し、ひと息つくついでに周囲を眺める……三日月えみ。

 

「けどさー、ままー」

「……せめて私の名前を呼んで頂戴……」

 

「良いじゃーん。 でさでさ? それなりの私たちでも結構ぎりぎりなダンジョンなのにさー、しかも私たちはその人たちが狩り残したモンスターしか倒してないのにさ?」

 

「そうだよねぇ。 しかも足跡的にペアかトリオでしょ?」

「めっちゃ少人数だよね。 うちらの10人でも少ないのに」

「ほとんど戦闘跡が無いからめっちゃ余裕で倒してるもんね」

 

「それに早くない? 私たち、追いつけてないんだよ?」

「早いね。 えみママがソロで全力してるときくらい」

「ねー」

 

【確かに】

【最低でもえみちゃんたちと同レベルのパーティーか】

【なんでもいい……この百合空間を破壊しないなら……】

【もしそうじゃなかったら……】

【落ち着け】

【百合原理主義者たちが怖すぎる】

【いつもの】

 

「誰かソロチャレンジしてるのかな?」

「ん―……そんな配信ないなぁ……」

「この階層だと、もうえみちゃんクラスじゃないと難しいはずなんだけどねぇ……ソロとか」

 

(やっぱり該当するパーティーは居ないわね……「そんなに強いんなら今度、コラボでも」って思ったんだけども。 ああでも、男性パーティーなら無理ね)

 

胸を代わる代わるふかふかとされながら――鎧とは言え横は皮でできているからそこが狙い目らしく、コメントと一緒にふかふかしている――慣れた手つきで代わる代わるに差し出されてくる頭を撫でつつも、彼女自身も現在の配信タイトルをひととおり見て「ふう」とため息。

 

【ふぅ……】

【ふぅ……】

【お前ら……ふぅ……】

 

(これがセクハラだと思えなくなったのは、良いことなのかしらねぇ……)

 

アイドル業をして失った何かを意識しながら、まだ治癒魔法を受けている「彼女」へ、ちらりと視線をやった。

 

彼女の回復を待つあいだ……もう一度、胸に抱きつかれたままでタブレットを操作してダンジョン協会や配信、その他の情報まで見てこのダンジョンに潜っている可能性のあるパーティーをざっと見てみるも、やはり存在しない「先行者」。

 

(非公開勢なのかしら。 足跡もほとんど無いし、モンスターの暴れた跡も少ない……近距離で一撃か、あるいは遠距離で……)

 

――なお、スライドしていった最後に一瞬だけ「配信」としか名前のない、サムネイルすらなく同接は10人だけの個人画面もあったが――残念ながら彼女たちは大手事務所所属で上位に慣れすぎていて、それを知覚することもなく画面を閉じてしまう。

 

「……うぅ……」

 

「るるちゃん大丈夫?」

「さっき思いっ切りすっ転んでたけど」

「あ、カメラ、いつもみたいにとっさに上向けたからぱんつ見えてないよるるちゃん!」

「るるちゃんの乙女は私たちが守る!」

 

【ああああああ】

【なんてことを!】

【ひどい】

 

「やだー、男の人ってえっちー」

「すけべー」

「へんたーい」

 

【\1000】

【\5000】

【せめて……せめてるるちゃんの色と柄を……!】

 

「残念でしたー。 今日のるるちゃんはスパッツでしたー」

「というかスカートの日はもはや義務だよね」

「じゃないと毎回マネージャーさんのカットインが大変だし」

 

「あははっ、カットインって!」

「だって、るるちゃん居るときは10秒以上遅延させないと……ねぇ?」

「るるちゃんのおぱんつとかはもちろん、るるちゃんが転ぶついでに手が引っかかってスカートずり落とされて私たちのも……ねぇ?」

 

【ああああああ】

【どうして……どうして……】

【見たい】

【見せて】

【ちら見せで良いから!!】

 

「ダメですー、るるちゃんも私たちも乙女なんですー」

 

三日月えみの所属する事務所は、全体的にこういう雰囲気だ。

 

「できるだけ普段らしく、視聴者には同級生として話しかける」「少しのセクハラなら同級生らしくあしらってくれる」コンセプトで急成長した――もちろんレベルも――パーティー。

 

そうしてコメント欄とじゃれ合う少女たちを横目に……先ほど盛大に罠に引っかかって転び、恥ずかしさと痛みでうずくまっていたために……気まずくて声をかけていなかったえみは、ようやく上を向いた深谷るるへ手を伸ばす。

 

「……るる……大丈夫ですか?」

「うん……えみちゃん、ごめんね」

 

「いえ。 あなたが気をつけているのはみんなが知っていますから。 ね?」

 

「ねー」

「るるちゃんってばほんと、なんにもないところですっ転ぶもんねぇ」

「もう慣れた」

「むしろ『そろそろかな?』って分かるようになったよね!」

「るるちゃんが転ぶのって、ほとんど安全なときだしー」

 

「ダンジョンの中だと、中級者になってないとHP的に危ない罠とか飛んでくるよねー」

「だいたいえみちゃんがガードしてくれるけど」

「きゃー♥ えみお姉さまー♥」

「お母さんとお姉さま、どっちが良い?」

「うーむ、甲乙付けがたい」

 

【たしかに】

【ファンクラブでも意見が分かれているもんな】

【えみちゃんによしよしされたい点では一致してるけどな】

 

「ねー!」

「というわけでるるちゃんのことはえみちゃんに任せればオッケー」

「つまり?」

「私たちだからるるちゃんは無害なのだ」

「そうそう!」

 

「あ、あはは……」

 

【さすが不幸体質】

【最初はキャラ作りかって疑ってたやつも、1回通しで攻略配信観たら「すん……」ってなるもんな】

【でも大きなケガしないから安心して見てられるな】

【けなげなるるちゃんが好き】

【分かる】

 

パーティーメンバーたちとコメントの掛け合いを眺めつつ、少し気まずそうなるるのことを見る、えみ。

 

(初期は……特に女性のコメントで荒れていたものだけど、さすがにこの頃は落ち着いてきたわね)

 

不幸体質。

 

本当に何もないところで転んだり――何もしなくとも天井から何かが降って来るという形で「軽い不幸」が訪れる少女。

 

深谷るる。

 

(やっぱり、無理を言ってこの子をパーティーに引き込んだのは正解だったわね……少なくとも前のようには怖れられないないもの)

 

「いつもの『呪い様』でしょう? みんな分かっているもの……ほら、捕まって」

 

「ありがとー……いてて」

 

「るるちゃーん、おしりさすったげる!」

「え、いらな……く、くすぐったいよぅ」

「ほれほれー、触診だー!」

 

【●REC】

【百合の気配が濃くなって参りました】

【これもう百合配信だよ!】

【いつもじゃね?】

【そうだった】

 

 

「彼」が数分前まで居た空間で繰り広げられる、高校生たちのひと幕。

 

何度かニアミスしながらもお互いに意識せずに過ごし。

 

やがて、そのうちの2人と「彼」が出会うまで――あと、11ヶ月。

 

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