【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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159話 「ハルちゃん」を失った世界の1ヶ月 その2

「ハルちゃんの回線は生きておるな?」

「はい……切断されている『プリンセス』のものとは違い、真っ暗でこそありますが確実に」

 

暗い地下室内。

 

仮眠を取った「始原」の一同は情報収集に当たっていた。

 

「ならば問題は無いじゃろ。 それよりも今は、これより先の最大の障害となる合衆国への工作を強めんと」

「ですね。 マザーの工作も強引に突破する一派が存在したということは、今後も脅威になり続けますから」

 

「……あのー。 その……みんなはハルきゅんのこと、心配じゃないの……? あんだけストーカーしてたのに」

 

そこへ朝シャンを済ませてきた姉御が合流。

 

この場には、元から居なかった3人とクレセント、もとい三日月えみ以外の全員が揃っており、順番にシャワーや食事を摂ることにしている。

 

だが、昨夜までの焦燥感に比べ、あまりにも落ち着きすぎている始原の一同を見た彼女……新参の彼女には、その落差が理解できない様子。

 

「? ハルちゃんなら問題ないでしょ?」

「そうよ、ハルちゃんなのよ」

 

「いやー、だからさぁ……」

 

姉御の問に「?」を浮かべている、彼女が以外の全員。

 

「……………………………………?」

「……………………………………?」

 

「いや、いくらハルきゅんでもさ、2回目のアレは……だってまた合衆国が暴走したって……」

 

「――ああ、そうでしたね。 失礼、失念していました。 あなたは新しく加わったばかりなのでした」

「あ、メガネのおっさん」

 

説明をしようとかちゃりとメガネを光らせた彼は、ちょっと落ち込んだ。

 

「……あなたはまだ『クイーン』とは顔を合わせていませんでしたね」

「ん? あー、そんなのも居るって言ってたっけ」

 

「クイーン知らないのか……会ったらびっくりするね」

「今から楽しみにしてなさい!」

 

「そういうお前たちもびっくりしてたけどねぇ」

「マザー! 昔のこと持ち出さない!」

 

(私以外が全員知ってる……確か外国勢の残りだったわよね)

 

改めて、ここの全員が数年前からハル「きゅん」ウォッチをしていた事実を思い出す彼女。

 

「いや、案外びっくりしないかもね。 私もそういうのには疎かったから」

「おっさ……社長さん」

 

「……お願いだからその呼び方止めてね? 男は傷つきやすいからね? うん、特に君みたいな若い子に……若い子に……」

「あー、ごめんなさい。 おっさんって呼ぶと喜ぶ社員しかいなかったからさぁ」

 

自分の年齢を客観視して落ち込む中年男性の肩を叩いて励まそうとするも、あまり効果はなく。

 

「で、この子にも教えるかい? クイーンの正体」

 

それをほほえましい目で見ていた老女が、皆に問う。

 

「いや、そのうち直接来るじゃろうからそのときで」

「ですね。 その方がきっと、この後の展開的に驚きます」

「えーっと……あ、なるほど」

「つくづくアレ、すごいのよね……」

 

「?」

 

勝手に全員で納得され、疑問符しか浮かばない姉御。

 

(……コイツらの表情……いたずら隠してるガキそっくり……)

 

「とは言え、そっちよりもアレの方を伝えた方が良いのでは?」

「そうさね、アレの存在を知っておけば姉御ちゃんもハルちゃんが安全だって分かるさ」

 

「……アレ、ですか?」

 

「ここまでその通りだもん。 もうアレは正確だって断定して良い頃合いだよね」

「そうね……正直今でも信じられないけど、その通りになってるし」

 

「がきんちょたち、だからアレって――」

 

「――――『ハルちゃんがあの配信で華麗なデビューをして、昨日のあれで姿を消す』――そこまでを『3年前の時点で言い当てた』文書のことだよ、姉御」

 

「……………………………………は?」

 

散々もったいつけられてイラッとしていたところに、とんでもない言葉を聞かされて……理解できてしまい、フリーズする彼女。

 

「……………………………………?」

 

「あー、そうなるよねー」

「分かる分かるー」

 

「そうかい? 私は信じてたけどなぁ」

「今どきは子供の方がこういうのを、って思ってたけどねぇ」

 

(ハルきゅんのデビュー……つまりはあの配信。 いや……「その前にたまたま私が過疎配信に目ぇ引かれて入って、ちょっとして私が書き込んだあのときに、私に『登録しとけ』って言ってたのは、まさか」)

 

「ああ、精度はそこまでではありませんでしたから、姉御のことどころか私たちの細かいところまでも記載されていませんよ。 あくまで『ハルちゃん視点で、あの日にるるちゃんを助けてから昨日にるるちゃんを助けるまでのこと』だけです」

 

「……えっと……?」

 

「まーまー、とりあえずは……そうねぇ、『ダンジョン関係で得たスキル』でそういうのが分かる人物が書き記してたのがあるの。 で、私たちはそれを譲り受けたってわけ」

 

「すべてのできごとのうち、ほんの一部でしたからね。 しかも、内容は昨夜のあの場面まで」

 

「……あんたたち、それは一体」

 

「――大丈夫じゃよ、姉御ちゃん」

 

カツン、と杖をひと付き、会長が言う。

 

「『この後――いつになるかは分からんが、ハルちゃんは必ず帰って来る。 無傷で……いや、むしろ前よりも一層に可愛らしく、強くなって』」

 

「……信じて、良いのね?」

「ええ。 そうでなければ私たち始原は。 始原は……」

 

はたと止まるメガネ、もとい部長。

 

「もうおしまいだ……」

「ああ……」

「ハルちゃん……」

「ハルちゃんがいない世界なんて……」

「推しのいない世界なんてゴミよ、ゴミ」

「済まん、心臓の薬を……」

「爺、アタシにもくれ……」

「不老長寿の研究……もう良いよね……」

「ハルちゃんの居ない世界なんて、長生きしても……」

 

「……そこまで?」

 

「もしハル『きゅん』が無事で戻って来なかったら」という想像だけで一気に阿鼻叫喚となる室内。

 

それを見た彼女は、同時に「アレ」――「まるで未来を見てきた誰かが書いたようなそれ」の実在を、これ以上なく実感したのだった。

 

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