【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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189話 ドラゴンさんから求婚された

「ふぅっ、ふぅっ……」

 

……完全にバテ始めたな。

 

だめだ、もう腕も上がらない。

 

初級とは言え治癒魔法は伊達じゃない、痛みは全部が熱さに変換されてるから、何とかはなってる。

 

でも、それだって一瞬で治り切るわけじゃないし、ケガした場所はしばらく動かしづらくなるってのは知識で知ってた。

 

……ついでに、まだ治り切ってない両手両脚にお腹は、ひどいことになってるはず。

 

怖いから見ないけど。

 

まぁ動けてるんだ、致命傷じゃないならどうでも良いけどね。

 

動けるうちはまだ大丈夫だって、どっかの本で読んだ。

アドレナリンどばどば出てるだけかもだけどね。

 

「ノーネームさんを倒したときも……結局は、遠距離武器。 それも、時間掛けて調合したり、深いとこで手に入れた弾」

 

この戦い。

僕はこのドラゴンに、1回もまともなダメージを入れられていない。

 

そう、1回も。

 

さっきまでは良い感じだったけども、回復されるんなら無意味だ。

むしろ、体力と魔力で僕が大損だ。

 

……そもそもがでかすぎるんだ。

 

コアがあるはずの頭や胸なんかは、遙か高いところ。

仮に命中させられたとしても、今度はこの厚い鱗に阻まれる。

 

回復を上回るダメージ入れられなくって、ただがむしゃらになるのはただの徒労ってやつだもん。

 

「……がんばったけど、ここまでかなぁ……」

 

ぽつり。

 

僕が意識する前に、僕の口から弱音が漏れる。

 

あー。

 

ちょっと時間置けば気分が戻りそうなんだけどなー。

でも無理だろうなー、モンスター相手だもんなー。

 

……詰んだかな?

 

【えっ】

【ハルちゃん】

【諦めないで】

【きっとなんとか……】

【こういうときこそノーネームちゃん助けろよ!】

【ノーネームちゃん!】

【……いない……】

【こんな肝心なときにいないだなんて、ファン失格だろ!】

 

ま、ダメならダメで最期まであがいてみせるけどね。

そもそも、まだ一応で奥の手はあるんだし。

 

けどほんと、どうしよ。

 

僕の上、スリングショットからじゃ届かない低空で、でっかいドラゴンさんはばっさばっさ。

 

僕の動きを……もう継戦能力の差を理解したはずなのに、それでも慎重に僕の手脚を見ている。

 

「……?」

 

いや。

 

僕の顔を、目を。

 

なんだかさっきからずっと見ているような――

 

『――――――――――――人間の勇者よ』

 

「え?」

 

【誰だ今の】

【何だ?】

【さあ?】

【なんか声っぽい音】

【めっちゃ野太い声】

 

【いや、音だろ?】

【なんか言葉っぽいけど……】

【言葉って何だよ、低い楽器の音じゃね?】

【勇者とか言ってない?】

【いやいや、ドラゴンの鳴き声だろ、どう聞いても】

【ちょ、なんでみんな言うこと違うんだよ】

 

ドラゴンさんが鳴いてる。

 

咆吼じゃないから構えなかったけども……僕の聞き間違い?

疲れすぎて……ちょっと落ち込んだせいで、幻聴聞こえちゃった?

 

そう思うけども、どうやら本当だったらしい。

 

僕を見下ろしていたドラゴンが口を開けて、だから僕は「またブレスが来るからこれで最期かも」って思ったところに、声。

 

『――満身創痍とは言え、我の戯れにここまで生き延びた存在は、貴様が初めてだ。 人間の幼体と侮った非礼を詫びよう』

 

「……ドラゴンさん。 話してるのは、あなた、ですか?」

 

【え?】

【ハルちゃん分かるの!?】

【ほら! やっぱ声じゃんか!】

【すまんすまん】

 

【そういやハルちゃん、外国語も話せたよね】

【モンスター語まで!?】

【ああ、ハルちゃんってば天使だから……】

【ここでその設定出て来るの!?】

【設定言うなよ、ハルちゃんの真の姿だろ】

【お前ら、ハルちゃんのピンチに何てこと言ってるんだ……】

 

……ずしん。

 

僕に話しかけてきたらしいドラゴンさんは、ゆっくりと着地。

 

多分、僕が全力でかかってもすぐには倒せないって理解してるからこその余裕。

 

僕の目の前に、降り立ったモンスター。

それは僕に向かって、頭を下ろしてくる。

 

……食べられる?

 

「僕はおいしくないですよ。 ほねほねですから」

 

胃袋がちっちゃいから全然太れない体なんだ。

 

僕を食べるなら、おいしいものばっかりにして1年くらいしなきゃ食べ応えないと思うよ?

 

『……ふっ。 人間などを食する趣味はない。 だが、勇者よ』

 

ぶわっと臭い息が僕に吹きかけられる。

 

……あー、これ、ほんと動物園の動物とかのやつ。

 

って言うかドラゴンさん、ほんとに君、僕に話しかけてきてる?

 

『――「その体」に成ろうとも我に抗い、歴代勇者の生存時間を越えてもなお生き延びている、類い希な能力。 そして』

 

ぶわっと鼻からの臭い息が、僕の髪の毛をはためかせ。

 

『――どこの国かは知らぬが、さすがは魔力を煮詰めた王族の雌……我から見ても美しいと感じるその髪、その目よ』

 

「?」

 

王族?

 

何言ってるの?

 

……ってそうだった……僕、幼女になって、初めて見たらドキってする程度にはかわいいんだった。

 

すっごく整ってる顔つきって言うか、それだけじゃない何かを感じるもんね。

 

うんうん、分かる。

僕だって最初のころはどきどきしてたもん。

 

髪の毛もものすごくきらきらしてる金髪だし、お目々だって深い蒼だし。

 

あ、僕的にはまつげが金色なのが特に、

 

『貴様――――――――――――』

 

「!」

 

ドラゴンさんの手が――短いけど長い爪のあるそれが、いつの間にかに僕に向けられていて、「あ、手のひらから魔法撃たれたらおしまいだな」って気が付いて。

 

両脚に力を込めようとしたその瞬間――しゅんっと、僕をあったかい感覚が包んで。

 

……あれ、これって……。

 

「……ケガが?」

 

さっきまで……無意識にひょこひょこしてた脚が、へっちゃらになってる。

 

お腹も、服は避けてて真っ赤だけども……おへそとその周りが綺麗な肌色。

 

中身のピンクとかうげーって感じじゃない……や、怖かったから見てなかったけどね。

 

肩も腕も痛くないし、なんならむしろ調子が良い感じ。

 

……これって。

 

【おへそ】

【おへそ!】

【ハルちゃんのおへそぺろぺろ……ないないされない……】

【草】

【お前、こんなときに……】

 

【でもハルちゃん!?】

【ハルちゃんが立ってる!】

【え? 治してくれたの?】

【でもさっきまで攻撃されてて】

 

【けどハルちゃん、誰とお話ししてるの……?】

【まさかドラゴン!?】

【それこそまさかだろ】

【ノーネームちゃんっていう前例があるぞ】

【そうだった】

【1体居るんだから2体居てもおかしくはない……のか……?】

【言葉が通じるなら、なんとか……!】

 

【俺たちには分からんがハルちゃんは話してるっぽいし、もしかしたら……!】

 

警戒は解かない。

 

だって、この流れ的に「じゃあ仕切り直しで全力で戦おうぞ」とか言い出しそうだし。

 

ノーネームさんならそんな感じにしそうだし。

 

――でも、このドラゴンさんはノーネームさんじゃないから、そうじゃなかったらしい。

 

『人間の幼体――小娘』

「……なんでしょう」

 

ぐるるる、ってでっかい顔が近づいてくる。

 

……人間はまずいから食べないって言ってたけども、本当かな。

 

『異なる世界の貴様。 我の妃となれ』

 

あー。

 

そういやお伽話のドラゴンさんって、なぜか異種族の人間を……しかもお姫様とかを攫ってお嫁さんにするのが定番だよねぇ……。

 

……え。

 

ってことは、僕。

 

……ドラゴンさんのお嫁さんにさせられちゃう……?

 

男なのに……?

 

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