【書籍化決定】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。 ~レンジャースキルで「ヘッドショット系幼女」って呼ばれたりダンジョンの秘密に囚われたりする配信~   作:あずももも

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203話 魔王さんへの説得

『……折角……我が見初め、加減をしてやったと言うに……!』

 

「もう、終わりにしませんか。 僕のことは諦めてください」

 

ドラゴンさん……魔王さんの、コア。

 

最初の2つは、不意打ちで破壊。

 

そこからは、警戒されたけどもがくっと力が落ちてたもんだから、僕の狙撃は外れず。

 

……そうして、残るコアは1つ。

 

頭にある、最後の1個だけ。

 

「――僕、まだ……人を好きになるとか恋するとか。 そういうの、分からないんですよ」

 

多分、ここから急に不意打ちされても、何とかなるレベルに弱ってる魔王さん。

 

そんな彼の前で、僕とノーネームさんが静かに浮かぶ。

 

「僕、本が大好きなんです。 たくさん読んでるんです。 でも、まだ人のことを……本の中の人たちみたいに心ときめくとか、苦しくなるとか。 その人のことしか考えられなくなるとか、好きで好きでどうしようもなくなるとか。 そういう感情……僕は、まだ、知らないんです」

 

ゆっくりと、諭すように、怒りを鎮めるように。

 

「……力が正義な世界のことも、理解はできます。 力尽くで女の人を……って言うのも、まあ、生物の摂理と生理では理解しているんです。 どうしようもない感情と衝動と状況なんだって。 そういう場面じゃ、しょうがないことなんだって」

 

僕は、彼女どころか好きな人も――初恋もまだな、男だ。

 

だけども、その概念は理解できる。

だって、物語の多くは「その感情と衝動」が突き動かしているから。

 

それを読んでどきどきして楽しんで、泣くこともできる。

それが、知性って言うもの。

 

「でも、残念ながら僕は、あなたのそれを――君のそれを、受け入れられない。 僕は君のことをなんにも知らないし、そもそも僕は僕の世界を人質に取られたからしょうがなくって、力がなかったからしょうがなく君の物になろうって言ったんです」

 

……怒ってるよね。

 

1回は「僕のこと好きにして良いよ」って言ったのに、今さらだもんね。

 

ごめんね。

でも、無理なものは無理なんだ。

 

もしこれが……ここに居る「僕」が「僕じゃない存在」で、「本物の女の子」で。

 

力がある相手……ヤンキーさんとかぐいぐい行く系な人とか、壁ドンとかする系の男にきゅんってなるタイプだったら……こうして連れて行かれて何十年も子供産む日々ってのも、そこまでヤじゃなかったかもしれない。

 

それに、女の人は権力のある男が好きらしい。

ならきっと、自分が魔王のお嫁さん、女王になれるんならそれなりに良い気分だろう。

 

でも僕は、ここに居る僕の意識は、男なんだ。

 

普通の、どこにでもいる、特に目立つこともない、ただの男。

普通に、ごく普通に……多分、普通の女の子が好きになるだろう男。

 

ただ、君が注目した相手の中身は、男との繁殖対象じゃなかった。

ただ、それだけなんだ。

 

「でも、今の僕は……その肉体の君よりも、強い。 多分、今の君なら、ノーネームさんでも倒せます」

 

そういえばノーネームさん、コアは5つあるんだね。

 

前のより増えてる気がする……まぁいいや、ノーネームさんは攻撃的じゃないし、僕とか人間を力尽くでってタイプじゃないし。

 

いたずらはするけどね。

 

つまり、ドラゴンとしての強さの関係――ノーネームさんと魔王さんだけでも、5対1になってるんだ。

 

そこに、機動力と遠距離攻撃力がかなりのものになってる僕がいる。

 

もう、覆し得ない状況だ。

 

「だから、諦めてください。 ……そんなにたくさんの世界があるんだったら、そもそも人間の僕なんかじゃなくって、同族のドラゴンさんたちの雌が。 君の強さに惹かれて子供産みたいって思うような子が、たくさん居るはずです。 ドラゴンさんの見た目的にかわいい子だって、いっぱい居るんでしょ?」

 

ドラゴンさんの美醜感覚的にも、多分同族の雌の方がかわいいって感じるはず。

 

ならさ、人間なんてゲテモノじゃなく……多分人間から見てのケモナーさんとかそういうのなんだろうし……素直に同族と繁栄しててよ。

 

……まぁ種族の違う僕に子供を、それも、こんな人間の幼女の体に、その……男のを突っ込んで産ませるんだから、きっと魔法か何かで異種族でもなんとかできるんだろうけどさ……そんな苦労、おんなじ種族ならないでしょ?

 

「そこで他のドラゴンさんたちとかモンスターさんたちに崇められながら、立派な魔王さんしてれば良いんです。 僕みたいに……たとえ連れてかれても心の中じゃ『早く帰りたい』ってしか思えないような相手なんて、ただの気の迷いなんですよ」

 

『………………………………』

 

静かな魔王さん。

 

多分、戦闘力を失って、さっきまでとは立場が逆転して。

予備とは言え、自分が負けるって可能性で、ちょっとは頭が冷えてて。

 

僕の言うことを……ちょっとでも理解してくれてると良いな。

 

【怒濤のハルちゃん】

【ハルちゃんの、いつも通りなテンションでの説得】

【ハルちゃん、こんなに長文話せたんだね……】

【お前、ハルちゃんのこと何だと思ってたの?】

【ハルちゃん、たまに何分か話すことあったろ!  全部ダンジョンとかご本とかお酒の解説を、早口でだったけど】

【草】

 

【しかしこれで行けるのか?】

【分からん】

【これまでの内容から、力こそ正義だろう世界のドラゴンなら「参りました」しそうだけど……】

【あんだけウッキウキでハルちゃんのことお嫁さおろろろろろ】

【草】

【そっとしておいてやれ……さっきのNTRで壊された末路だ……】

 


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