【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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213話 始原会議Ⅷ

「――どうしてハルきゅんがああなるって教えてくれなかったの!!! 知ってたら……知ってたらぁぁぁ……」

 

地下室で絶叫した後、崩れ落ちる姉御。

彼女の悲痛さは……誰もが目を逸らすもの。

 

「あんたたち!! あんたたちはハルきゅんが助かるってとこまで知ってたんでしょぉぉ! ならハルきゅんが……ハルきゅんが女の子みたいになっちゃうってのも知ってたんでしょぉぉぉぉもうやだぁぁぁ!!!」

 

現在、深谷るると三日月えみ、九島ちほは「様子の変わったダンジョン」配信のために不在。

 

残るは「会長」に「部長」、「社長」に「マザー」、そして「イスさん」制作者らしい少年少女の6名。

 

「えぐっ……なんで……どうしてぇ……ハルきゅんは元々文学少年上がりの喰い時の若手社員でぇ……写真見たらもったいないくらいの逸材でぇ……ちっちゃくなってもそれはそれで、ぱっと見ショタだからこそ推せたのにぃ……」

 

「姉御が心底落ち込んでる」

「あっはは、大人のくせに本気で泣いててなっさけなーい」

 

「あのままの幼女だったらショタっぽくて可愛くて……男の子に戻ったとしても、それはそれで可愛いから狙ってたのにぃ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」

 

何日も籠もりきりで、もはやジャージ姿のラフな格好。

髪だって後ろで結ぶだけ。

 

そんな彼女が、地面で駄々をこねて悲嘆に暮れている。

 

「ごらんよ、しかも私欲まみれだよ」

「大人の女ってこっわーい」

 

それを取り囲んで眺める一同という図は……地獄だった。

 

「こら、止めなさい。 ……君たちも、そのうち彼女みたいに期待を裏切られて落ち込むときが来るんですよ」

 

「ほっときなさいな。 ああやって煽るも青春、落ち込むも青春、煽られるもまた青春さね」

 

配信画面で動きが少なくなったのもあり、工作で張り付いていて固まった体を解すために立ち上がって……地面に伏す姉御の周囲に集まる面々。

 

「姉御ちゃんよ」

「……会長のじじい……」

 

そこへ立つ会長。

 

「……ハルちゃんのためなら、一時的に死んだばーさんを前にしてでも応援するのがファンだぞい」

「AEDの機械手に持って何言ってんのよ……てか臨死体験とかしてたの……」

 

先ほど配信中に尊さでぶっ倒れ、数十秒鼓動の止まっていた老人が仁王立ちしている。

 

ちなみにAEDのパッドはすでに装着済みという覚悟の決まりようだ。

 

「いやいや、このタイミングで死ぬのは勘弁してくださいよ会長……ハルちゃんのことが解決しない限り、ダンジョン協会どころか政府ですら大混乱ですよ……まだ国連軍も駐留してますし……さっき、本当に肝が冷えたんですからね……?」

 

「警察の偉いおっさん……アンタも大変ね……」

 

「まぁ気にするな、姉御さん。 いや、するなと言うのも無理があるけど……ねぇ?」

「ああ。 『ハルちゃんは、私たちの元に戻って来るときには、またいつもの姿に戻っている』。 これは確定された未来さね」

 

「あああああもう、ちくしょー……あ、マジ? あー良かったわー、これでこれからもハルきゅんのこと推し続けられるわー。 あ、ところでその情報私のサーバーで共有しちゃダメ? あ、ダメなの? しゃあない、とりあえず良い感じにごまかしてとくわー」

 

「ハルが、また幼女に戻って帰って来る」――そう聞いたと思ったら、けろりとして席に戻っていく姉御。

 

先ほどまで、店で「やだやだあれ買ってくれなきゃやだ」と地面で泣き叫ぶ子供のようなことをしていた女性が、今やしゃきしゃきとしている。

 

「……アレで良いんだ……」

「うん……あの人たちの行動原理はよく分からないね……」

 

そんな彼女を、異生物を眺める目で追う年下の2人。

 

「……君たちはそのままで居てね……」

 

「私たち、大人になってもああはならないわ」

「うん、アレはさすがに無いよね……」

 

完全に自分の趣味に生きる20代OLの姿を見た学生たちは……改めて「真人間になろう」と誓った。

 

「あ、そういえばあとの2人。 なんか……えーっと、今流行りのトラ……トラ……」

「トランスジェンダー?」

 

「そ。 その男女……いや、女男? いやいやどっちも居たっけ……あの2人、全然来ないじゃない」

 

自分が立てたサーバー内での阿鼻叫喚を――先ほどの彼女のような――収めようとチャットしかけた彼女が、ふと思い出して問う。

 

ここに居るのは、7人。

 

初期「始原」の10人の内、現在行方不明の「プリンセス」に海外に居るという「クイーン」、そして今の2人を除く6人しか集まっていないのだ。

 

「その2人も、アンタたちみたいにハルちゃんに首ったけなんでしょ? 海外のはともかく何で来ないの? 推し変? 処す?」

 

「いんや、あの子たちも並外れてハルちゃんが好きさね」

「そうそう、クイーンと並んで人生捧げるレベルの推し活してるし」

 

思い思いに席に座り直し、各所への連絡やネットでの工作、情報収集を再開した始原たちが、ぽつりぽつりと言う。

 

「じゃあ何で?」

 

「あー。 会長、良いですか?」

「良いじゃろ。 姉御ちゃんももう一心同体よ」

 

「あ、そ? なら教えたげるけど……実はあの2人、無理やり突入してきた合衆国軍よりも深く潜ってたのね」

「そうそう、『そのために鍛えた』って言ってたし」

 

「……え?」

 

振り向いた姉御の先では、かたかたとキーボードを叩きながら、何でもないように少年少女が言う。

 

「で、退避勧告も聞かなかったもんだから」

「ミサイルで消えちゃった」

 

「そうなの、あの爆発のとき――――――は?」

 

「尊い犠牲だったね……」

「まぁあそこで変えられる運命ってのに賭けてた子たちだからねぇ……止められなかったんだよ」

 

「は? え?」

 

「2人のバイタルも連絡も途切れています。 プリンセスのように、その直前で転送された記録が残っているのならともかく、それが無いので」

「死亡扱いじゃな。 一応」

 

「は? ……何でアンタたち……」

 

――そんなに冷静なの。

 

そう言おうとした姉御のモニターの前に、ぽんっとメッセージが浮かぶ。

 

「これ、めっちゃ長いけどがんばって読んで。 そしたら多分分かるよ」

 

「……これ、何……? 英語……?」

 

英語で……スクロールしても全然先が見えない、長すぎる文章。

 

それを見た姉御は英語アレルギーを発症しかけるが、

 

「それが……まぁ、『予言の書』ってやつかな」

 

「ハルが戻って来るという根拠、しかも幼女になってショタとして推せる姿になって」――そう知った彼女の目の色は変わった。

 

 

◆◆◆

 

 

次回から新章です。

 

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