【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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278話 【ダンジョン協会会長、セルフないないの儀】2

【でもさ、セルフないないの儀する協会会長に話戻すとさ】

 

【草】

【やめて、おなかいたい】

【じゃあやめない】

【もっとないないいう】

【おれ おまえ ないない いう】

【草】

【止めろぉ!!】

 

【なぁんで国連加盟国全部が出席する緊急会合の中継で、ここまで盛り上がってるのぉ……?】

【ハルちゃんの話題だから……かな?】

【それともセルフないない】

【やめて、セルフないない笑っちゃう】

【インパクトだけならハルちゃん自身より上回る可能性も】

【もうそれでいいや】

【草】

 

【まさかのトップが直接責任取る、しかも命がけっていうので、ほとんどの一般人からはめっちゃ同情されてるからプラスだな】

 

【じじい……】

【爺さんやべえな……】

【まぁ10年前を最前線で戦い抜いた功労者って言うし】

【つまりは爺さんの体でモンスターと切った張ったを……】

【割とガチで英雄なやつ】

【お、出てきた】

 

カメラが映しているのは、ダンジョン協会の施設――ではなく、国会議事堂、そのど真ん中。

 

国会議員でもないはずの老人が、すでに席の埋まっている議場の政治家たちからの目を注がれながら、ゆるりと歩みを進める。

 

こつ、こつ。

 

使い古された――「10年前の戦闘で使用したそのままの状態の」装備で全身を固めた老人。

 

ブーツにすね当てにひざ当て……そこから上も、関節の裏面以外はすべてを防御できる装備が、鈍い光沢を放っている。

 

獲物は、ただ一振りの日本刀。

 

それを無造作に鞘に収め、気取るでもなく佩き、自然体で壇上へ向かう老人。

 

ばさりと「モンスターの返り血で染まっている」マントをたなびかせながらゆっくりと、しかし強い足取りで歩く姿に――彼と同世代の議員たちでさえ、畏敬の念を覚えざるを得ない様子だ。

 

【かっけぇ……】

【爺さん……】

【これが老兵か……】

【そうだよ、この爺さんが英雄って……】

【そうだよな、あの当時で活躍したからこそ今の席があるんだもんな】

 

【でも……そんな爺さんがまさかの始原で……】

【ハルちゃんで尊死しかけてただなんて……】

【ハルちゃんのかわいさでAED使っただなんて……】

【始原として「ハルちゃん」とかコメントしてただなんて……】

【草】

 

【今良いところだったろ!!!】

【だって思い出しちゃったんだもん……】

【この爺さんが、ハルちゃんで悶えて心臓止まったのか……】

【だからやめて!!】

【もーめちゃくちゃだよ】

 

――こつ。

 

老人は、静かに――最もカメラ映りの良い場に立つと議員たちを一望。

 

ざわついていた声が、完全に止まる。

 

各国のコメント欄も、この瞬間ばかりは――ぴたりと停止した。

 

「――改めて、儂がダンジョン協会会長の老いぼれよ。 議長へ許可は取った。 故に、好きに話させてもらう。 良いな?」

 

――しん。

 

議場に、彼の声以外は発せられていない。

議場に、彼の衣擦れ以外の音は発せられていない。

 

「……さて、簡潔に言おう。 事の次第は、前回の会見で語ったのでな」

 

彼の目は、特別に入ることを許可されている数十の外国のカメラたちに向けられる。

 

「今回儂は、通称『no name』による『nai-nai』、または無差別大量誘拐――その責任を取るついでに、儂自身も誘拐をされ、その先で何が起きているのかを――この目と」

 

ぶぉん。

 

彼が手を動かすと、周りに展開する数機のドローン型カメラ。

 

「『no name』――『名無し』との交渉の結果、他ならぬ『no name』による中継の元、全ての人にその情報を共有することを可能とした」

 

壇上に、老人が居る。

 

彼の周囲を漂っている配信用カメラ。

それらが――『nai-nai』された先からも、届くと言う。

 

地球の外の映像が、『Haru』以外の新たなものが――もたらされる。

 

その発言に凍り付く、同時通訳で内容を知らされた外国人記者たち。

 

彼らは、思う。

 

――そこまでは聞いていない。

 

――『nai-nai』してくる『no name』に、どうやってコンタクトを?

 

――どうのような交渉を?

 

――これは、もしかしなくとも地球外生命体との公式なファーストコンタクト――あるいは、自分が生きている内で最大のスクープなのではないか。

 

その想いに、彼の責任を追及しようとしか考えていなかった記者たちは、自国で命じられた使命も忘れ――カメラのピントを合わせるだけしかできなくなり。

 

「よって、これから儂が。 他ならぬ……いや、かの少女――『ハル』の所属する事務所を包括している協会のトップである儂が」

 

こつ。

 

彼の靴が、大理石を叩く。

 

「10年ぶりに戦装束に身を包み、征ってくる。 そこがどのような地であるか、そこへ誘拐された人たちがどうなっているかを――伝えるために。 我らの大切な人たちの、ありのままを映すために」

 

口を閉ざす老人。

 

そこで声を上げるどころか、身じろぎをできる人間は――存在していない。

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