【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
……たしん。
前に続いていた細い空間が途切れ、広い空間になるために反響する足音の質が変わる。
明るくなっている足元。
あと数歩で、ボス部屋だ。
「……これが中ボスじゃなかったら……正直、次の中ボスかボス部屋には、今の僕じゃ無理かな」
「反撃を食らわない、いつもの隠密遠距離スタイルじゃ」っていう意味でね。
僕は、痛くないし怖くない戦いがしたいんだ。
他の人たちみたいに、前線で剣と盾使って切った張ったはやだもん。
臆病者こそが長生きするんだ。
びびりすぎなくらいでちょうど良いよね。
【えぇ……】
【今のハルちゃんでやばいって】
【そんなにやばいのか……】
【やばい(語彙消失】
【やばい(ハルちゃんの索敵スキルでの正確な戦力差】
【なぁにこれぇ……なぁにこれぇ……】
「………………………………」
ま。
なるようになるでしょ。
……たしん。
最後の段の下、地面へ足が着く。
その瞬間に、ぱっと明るくなる部屋。
「「「――――――ウォォォォォォォ――!!!!!!」」」
「……っ!」
びりびりびり、って鼓膜を震わせる音――声、雄叫び。
映画館でうるさすぎる効果音とか、興味本位で行ってみたうるさい飲み屋とかレベルの騒音。
【!?】
【ひぇぇ】
【なぁにこれぇ……】
【 】
【 】
【 】
【 】
【 】
【 】
【あの、これぇ……】
【こんな数……】
【10年前でも……】
【もうだめだ……】
【もうおしまいだ……】
ぱっと明るくなった、広すぎる空間。
そこには。
「……最低でも1万……もっとかな」
このダンジョンに来たばっかのとき。
ふらふらしてたとき。
あのときにぼんやりと見た、地面を埋め尽くす軍勢。
それが、今――僕の目線より、ちょっとだけ上に広がっている。
【こわすぎる】
【あ、一緒に見てた家族がリストバンドで転送されたわ】
【うちも】
【草】
【まぁこの光景見たら、心拍数とか脳波も乱れるわな……】
【マジでやりやがった!?】
【いや、だって、ダンジョン協会からさ、危機が去るまで24時間着けてろって……】
【救護班の詰め所が大変なとこになってそう】
【かわいそう】
【ま、まあ、救急医療で民間がパンクするよりは……】
【救護班さんたちも分かってるから大丈夫でしょ、多分……】
ざっざっざっ。
何の音かと思ったら、それは、彼らの手にしている槍が地面に叩きつけられる音。
――昔の戦いでは、敵の戦意をくじくために武器や声で音を出したりしていたらしい。
そんなどうでも良い知識が、こんな時に浮かんでくる。
【わー、かわいいわんわん】
【にゃんにゃんもいるー】
【かわいそうに……】
【わんわんはコボルト……にゃんにゃんはケットシーか……?】
【二足歩行、しかも鎧とか着けて武器を持ってる犬とか猫っぽいの……】
【こんなの、ダンジョンに居たっけぇ……?】
【居ないな】
【居るはずがない】
【そもそもダンジョンで出現するモンスターの大半は現実の動物モチーフであって、キメラとか除けばここまで異質なのは……】
【こんなのはあくまでもゲームとかマンガの世界での存在だったはず……なんだが……】
【まぁいつかは出てくるって言われてたけどなぁ……】
【ああ……】
【ゲームみたいなシステム、ゲームみたいなモンスターの出てくるダンジョン なら、進んだらこうなるってな……】
【その亜人種?が、みんな武装して立ってて……】
【全員が隊列組んで、ハルちゃんお出迎え……?】
【ハルちゃん逃げてー! 超逃げてー!?】
【そうだよ、上の階から穴空けてちくちくやるのが正解だって!】
【さすがに無理だって!】
「とうとう組織だったモンスターの軍……つまりは、これが魔王軍ってことかなぁ」
僕の目の前には、1万……と、その半分くらいは居そうな軍隊。
前線――僕の目の前の歩兵が、長い槍を片手に、まだだんだんって地面に叩きつけて思い思いに唸っている。
「うーっ!」とか「ふーっ!」とか……怒ってるときの犬とか猫みたいに。
その後ろには、ひとまわり体格のおっきい犬とか猫……とか、兎とかいろんな動物が、2足歩行になって装備を着けていて。
どう見ても前線指揮官から後方指揮官まで。
「……軍隊の相手とか。 すごいお出迎えだね」
ふぅ、と、彼らの威嚇に負けないよう、わざとゆっくりと息を吐いて、わざとのんきにしゃべる。
こういうのが緊張を解くのに大切なんだって。
まだぺーぺーだったころの僕が、ダンジョンに潜る前に読み漁ってた本からの知識だ。
【マジで全軍って感じだ】
【だな】
【もしかして:魔王軍】
【もしかして:ハルちゃんの降臨から警戒して待機してた】
【だろうなぁ……】
【じゃあなんで上がって来なかったの?】
【ダンジョンだからな、モンスターの数が増えすぎて溢れるまでは、どうやってもモンスターたちはセーフゾーンの階段とか越えられないんだよ】
【でも、これどう見ても】
【数千……万、行くかもなぁ】
【ハルちゃんが1万は、って言ってたし、それ以上だな】
【まあ、ハルちゃん降臨のときにもこれくらいは居たし……】
【でもあのときは、こんなモンスターたちは……】
【じゃあ、やっぱり……】
……いつまでも気迫で負けてはいられない。
僕は、ばさっと羽を広げ、ばさんと勢いよく上に――――――。
「クァァァァァ!!」
「!?」
とっさに回避行動。
数十の気配が、真上から――雨より速く降ってくる。
僕はほとんど無意識で、上下左右を索敵スキル頼りに最も安全な経路で――降ってくる攻撃を、何とかでかわす。
ひたすらくるくるひゅんひゅん身体をよじって、探知スキルが伝えて来る危険信号を全部やり過ごして、ようやく整う息。
「……ふぅ……ひやっとしたぁ……」
――入り口から20、30メートル上空で、ひと息ついた僕。
その「正面」には――。
【ハーピー……?】
【だよな?】
【女の子の顔に女の子のおっぱぱぱぱぱぱ】
【草】
【ノーネームちゃん!!! 今はノーカンでしょ!!】
【ないないするヒマがあったら子供たち守りなさい!】
【草】
【今いいとこ! 緊張の場面だったの!!】
【ノーネームちゃん……お前……】