【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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299話 僕は、やっぱり人を守るんだ

空中で僕を取り囲んでいるのは、女の子の上半身をした鳥のモンスターたち。

 

女の子の顔、女の子の上半身に鳥の体。

その顔も体も羽で覆われてるけども、違和感はすごい。

 

……ちょっと戦いにくいモンスターが出てきた。

 

「……前のボスと同じように、ちゃんと地上戦力と航空戦力かぁ……気合入ってるねぇ。 僕が入り口から出た途端に上空から急降下で先制攻撃ってのも歯ごたえがあるし」

 

【草】

【冷静な戦力分析からの歯ごたえ感実況】

【これは猛者のセリフ……】

【ハルちゃんだもんな!】

 

見下ろしてみると、歩兵たちが僕に槍をハリネズミみたいに構えてる、槍衾。

 

その身長は――さっきの感じだと多分今の僕より低いけども、槍ってのは長いもので、多分3メートルくらいはあるんじゃないかな。

 

そして、僕と同じくらいの背丈で、ホバリングしながら付かず離れずの位置からじっと見てくる慎重な鳥さんたち。

 

それらが僕を、ぐるりと囲んでいる。

 

「……本気だね、君たち」

 

まるで、僕対策をしてきたみたいな布陣。

 

……ううん、そうじゃないか。

 

「効率的な……ううん、ある程度の知性があって、ずぅっと戦争ばっかしてたら、こういう風に進化するよね」

 

はたして目の前のモンスターたちが「モンスター」なのか、僕には分からない。

 

ひょっとしたら実は知的生命体で、この世界の種族で。

この世界の種族は、何かしらの理由でダンジョンに住んでて。

 

むしろ、人間の方が「モンスター」/異種族で。

 

そんな可能性すら、ある。

 

だって、ダンジョンの環境は「モンスターたちに、あまりにも都合が良いから」。

 

「………………………………」

 

でも。

 

「ごめんね」

 

僕は、光の矢をつがえる。

 

「僕は、人間の味方なんだ。 僕によく似ていて、僕と似た考えをして、僕と似た感情を持ってて」

 

そんな僕へ――ちらりと見ると、槍衾から光る、矢の先端。

 

――ロングボウ。

 

和弓みたいに、長距離に特化した武装。

 

なるほど、上空対策も完璧だ。

「おんなじ布陣のモンスター同士で戦争するなら」ちょうど良いね。

 

僕は、構わずに矢を引いていく。

 

「人間の社会は、居心地が良くって。 僕が、最初に出会った種族で」

 

【えっ】

【ハルちゃん!?】

【最初に会ったって】

【じゃあやっぱりハルちゃんは……】

【異世界の、天界の女神様……?】

【とうとう確定してしまったか……】

 

人間。

 

それは、僕が生まれ育った世界の構成要素。

 

その人間っていう種族は、ひとことで言うと愚かで脆い種族。

 

ほんの3日お水がなければ死ぬし、30日食べものを見つけられなくても死ぬ。

 

そうでなくてもビタミンが自前で製造できなくって、光を浴びないとわずかなそれもなくなって。

 

1万年と少しくらい前に言語を獲得して、急に賢くなって――でも体は追いついてないから、あちこち不具合ばっかりで。

 

それはもう、僕みたいに子供のころに本読んでたらメガネが必要になるくらいに。

 

頭が良いクセに、感情に振り回されて。

意味のない権力闘争とマウントばっかりして。

 

3人以上集まったと思ったら、いじめたり、けなしたり、排除したり――はては戦争をしたり。

 

そんな、どうしようもない種族。

それが、僕の属する人間だ。

 

感情。

本能。

 

いろいろと、多分は原始時代からほとんど変わってない、おかしなところばっかりなのにムダに頭ばっかり良い種族。

 

昔の神話とかを読んでも「ああ、当時はそういう価値観だったんだな」って納得できるほどには連続性のある、ダメダメさ加減。

 

「………………………………」

 

でも。

 

それでも、僕は、人間が、好きだ。

 

愚かだからこそ、愛おしい。

まるでそれは、飼い猫とか飼い犬のように、欠点こそがかわいく思えるもの。

 

……僕自身は、まだ、恋とか愛とかは分からないし、もしかしたら一生分からないかもしれないけども。

 

それでも、家族とか友達とか――つい最近に知り合った、るるさんとかえみさんとか九島さんとかリリさんとか、仲の良い人たちのことは、好きだ。

 

言葉すら通じなくても、こっちに来て仲良くなった子供たちも好きだ。

 

もし、その人たちと世界とを引き換えにされたら――僕なら迷わず、その人たちを選ぶ。

 

それはきっと、愚かな選択。

多分、僕ならそうするだろう選択。

 

――でも、今の僕には、不思議な力がある。

 

あとついでにかわいい女の子になってる。

 

だから、この体ならきっと、その人たちと仲の良い人たち、その仲の良い人たちと仲の良い人たち……って繋げていったら、やがては全世界に住んでる人間たちを、護れる。

 

だから、僕はやっぱり人間っていう種族を選ぶんだ。

 

だから――たとえ人間の方が悪かったとしても、侵略者だったとしても、後世で人間の、僕の罪が裁かれたとしても――僕は、人間の側に立つんだ。

 

だって、好きだから。

 

それは、理屈じゃないんだ。

 

それに、さ。

 

「動物さんだって温泉に入ったりするけど、動物さんたちは自分で温泉を掘り当てて整備なんかできないし」

 

きりりりりり。

 

魔力を吸い上げる音。

 

「人間さん以外で、いくらでも時間を潰せる本だなんて書けないし」

 

準備が揃ったのか、いっせいに放たれる矢。

僕の上下左右から一斉に飛びかかってくる気配。

 

「――なにより、あんなにおいしいお酒なんて、作れないもん。 やっぱり守らなくっちゃ――ねっ!」

 

【草】

【えぇ……】

【もしかして:ハルちゃんが人間守る理由はおしゃけ】

【ああ……】

 

【奉納だ! お酒を奉納しろ!】

【宛先は!?】

【えみちゃんとこと爺さんとこにありったけだ!】

【草】

【良い迷惑すぎて草】

 

【お酒を奉納とか完全に神様扱いで草】

【まぁここまで来たら「ダンジョンの女神」でも良いよねぇ……】

【魔王から地球を守ってくれる女神だぞ!】

【ヘタすると10年前に地球守った実績あるもんな!】

【ハルちゃん……いや、ハル様……】

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