【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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320話 双神な僕たち

「……なにこれ」

 

気の向くままに運転をしていたら、遠くにすっごくでかい建物を発見。

 

それに近づいてみたんだけども……でかいな、これ。

 

【これ……】

【ああ……】

【え? え?】

【気を確かに】

 

【でも……ゑ?】

【なぁにこれぇ……なぁにこれぇ……】

【ハルちゃんが落ち着いてるのだけが救い】

【ほんとそれ】

【ハルちゃん自身が静かだからなんとかなるんだよな、これ……】

 

でっかい建物。

いや、でっかい石碑。

 

それが、僕たちの前にある。

 

周りのビルたちと張り合うようにすっごく下からすっごく上までそそり立っていて、さらに横幅が異様に長い――まさに石碑、または墓石。

 

多分、ありんこになってお墓に行ったらこんな感じになるんだろうなって感じ。

 

他のビルみたいに奇っ怪な形にはなっていなくって、純粋にでんとそびえているだけの存在。

 

ただの石、ただの塊。

 

恐らくは――この町で最も目立つであろう構造物。

 

下をよく見てみると、この周りはかなり広く空いていて――多分、これを眺めたりお祈りするための広場なんだろう。

 

その広場は、石碑の左右と裏側はそこまで広くなく、正面と思しき面に……恐らくはこのビルと同じくらいの広さに、縦長な空き地になっている。

 

そして――。

 

【マジ?】

【マジだ】

【まさかな……】

【なんかちょっと怖くなってきた】

【俺も】

 

【これはあれだ、かつての呪い様呼びだったノーネームちゃんが実在するって知ったとき以来だわ】

【俺は、ハルちゃんが10年前にやんちゃしてたって知ったときだわ】

 

【私はハルちゃんにお胸が……うぅ……】

【草】

【姉御ォ!】

【いちいち台無しにしてくるんじゃねぇ姉御ぉ!】

【姉御が救いになるとは……】

 

【<URL>?】

【しっしっ】

【草】

【これが癒やしか……】

 

ふぃぃぃぃん。

 

僕たちは、その石碑の真正面から結構離れ、全体が見渡せる距離にまで下がる。

 

とても薄暗い空間だけども、今はイスさんのライトで――そこに描かれている「それ」が、この上なくはっきりと照らし出されていて。

 

『ある!』

『あるあ……』

『のうむ!』

『のーむ、――』

 

――そこには。

 

「――ノーネームさんと……僕?」

 

羽を生やして。

 

頭の上に輪っかがあって。

 

ひらひらの布でできた服を着ていて。

 

サンダルを履いていて。

 

服は真っ白と真っ黒で。

 

髪の毛も真っ白と真っ黒で。

 

でも、同じくらいの大きさで。

 

そんな姿をした女の子2人が――手を結んで、こちらを見ている。

 

そんな、特大過ぎる壁画が――この町の地面から天井までを貫く石碑に、いくらか風化しているとはいってもどこも欠けたりすることなく、僕たちに視線を送っていた。

 

「……ノーネームさん?」

 

「ふたり」

 

ぎゅっ。

 

ノーネームさんが、壁画を再現するかのように僕の手を取って繋いで、真横に立ってくる。

 

『あるあ……!』

『あるて……あるて……』

『のうむ・――』

『のむ、ある・・――』

 

後ろを振り返ると――全員で、イスさんの床に這いつくばってる子供たち。

 

【子供たちも知っちゃったかぁ】

【まぁ、これ見れば分かるよね】

 

【え? ハルちゃんとノーネームって、この町の……】

【主神だったのか】

【双子の神様……】

【金と黒の対になってるもんなぁ】

 

【双神な主神なのね】

【ハルちゃんノーネームちゃん教?】

【マジでそうだったとは】

【え? え?】

 

【どうしよう、冗談とか思いつきで言ってたのがことごとく現実になってきて、震えてきた】

 

「………………………………」

 

それは、どう見てもノーネームさんと僕。

 

それも、今の姿のだ。

 

……なんで?

 

なんで、「つい最近になったばっかりの体で、数百年前、何千年前らしい壁画に僕たちが描いてある」んだ?

 

なんで?

 

どうして?

 

未来予知?

 

いや、でも、僕たちがここに来ることなんて。

 

「――――――……っ」

 

頭をぴっと通り過ぎるのは、不思議な光景。

 

幾何学的な空間。

 

真っ白な空間。

 

そこで、僕はだらだらとしている。

 

そこで、僕は誰かと話している。

 

それは、ときどき不思議な物体。

 

それは、ときどきノーネームさん。

 

僕たちは、そこで、何年も何十年も何百年も何千年も何万年も――――――

 

「……懐かしいなぁ」

 

ぽつり。

 

僕が思うはずのない言葉が、口から勝手に紡がれる。

 

「なつい」

 

「懐かしいですか?」

「なつい」

 

「すっごく前なのに?」

「なつい」

 

「僕たち。 ――随分久しぶりに、会ったんですね」

「なつい」

 

【ノーネームかわいいいいいい】

【かわいいいいいいいいいいいいい】

【え? 待って、ノーネームちゃん「なつい」って言った??】

【なにこのかわいいの】

【多分、できるだけ発音の少ない語彙を選んだだけなんだろうが……】

 

【それよりも……】

【ああ……】

【あの、予想してなかった展開なんですけど】

【大丈夫、今日だけで世界観なんて何回も書き換わってるから】

【なぁにこれぇ……なぁにこれぇ……】

 

【もしもし始原?】

 

【ノーコメントで】

 

【草】

【知ってたのかお前ら……】

【もう何でもありね、始原って……】

 

巨大な石碑の中の、僕たち。

 

双子の神様を模したそれは、作られてからものすごい時間が経ってもなお。

 

「この世界が滅びてから」も、なお。

 

その信仰するべき人たちを失ってからも、なお。

 

唯一の遺産として――ちょっと寂しそうに、佇んでいた。

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