【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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327話 彼らの見た■■

「ちょっとみなさん、止めてください。 ……止めてくださいってば」

 

【かわいい】

【かわいい】

【赤くなってる!!】

 

【何このかわいいの】

【くしまさぁんだよ】

【くしまさぁん……しゅき……】

【久しぶりのくしまさぁん成分だ、たんと召し上がれ】

 

「……ちほ。 コメントに対して真面目に反応すると大変ですよ」

「は、はい……」

 

普段とは立場が逆転している、えみとちほ。

そんな彼女たちを、憑き物の落ちた顔で眺めている、るる。

 

異常事態にもかかわらず、コメント欄は盛り上がり――そんな様子を見ている老人は、ちょっとだけさみしくなった。

 

「それじゃあ私たち、いつないない先に着くの? ノーネームちゃん。 ……ノーネームちゃん?」

 

ふと思いついたるるが虚空に語りかけるも、反応は無し。

 

「おかしいなぁ……最近のノーネームちゃん、必ずお返事してくれたのに」

 

「もしかしたら凄みがむむむ」

「余計なことを言ってメンタルを不安定にさせないでくださいえみさん先ほどの発言を問いただしますよまた帰ったら連行しますよ」

 

【草】

【くしまさぁんの正論】

【えみちゃんがお口チャック】

【連行……?】

【ああ、ついにやらかしたかえみちゃん……】

【えみちゃん……】

 

【久しぶりに俺たちの知る、るるちゃんだもんなぁ】

【やはりくしまさぁん……くしまさぁんしか勝たん……】

【えみちゃんがえみちゃんになったことでツッコミが1人しか居ないんだ、貴重なくしまさぁんなんだ……】

【草】

 

周囲は漆黒、見えるのはお互いと手持ちの荷物、そしてそれぞれの配信のコメントのみ。

 

そんな状況で話し合うも、コメント欄は何かを隠したままの様子。

 

「だーかーらー! みなさんはなーに隠してるの! 正直に言って!! 今日何があったの!!」

 

【どうせ信じない】

【俺たちは信じてもらえない】

【うう……】

【どうせ俺たちが必死に言ったって、どうせ理解されないんだ……】

【そうだ、あのときもあのときも……】

 

「どうしてそこで闇を放出させてるのリスナーさんたち!?」

 

るるが――実に数ヶ月ぶりに明るい調子のままで話しかけるも、のらりくらりと返答を拒否するコメント欄。

 

「一体何が……――っ!?」

 

「それ」に対し、コンマ秒で反応したのが老人。

 

ふたたびに刃をかざし、「それ」から少女たちを守ろうと――本能で相対していた。

 

「え? な、なに、おじいちゃん」

 

「――これはこれは。 まさか、こんなところで相見えるとはな」

 

じり、と、見えない地面を草履で擦りながら、「それ」から少女たちを守ろうと、さらに前へ進む会長。

 

そうして、3人の呼吸が止まった時間を過ぎ、

 

『――――――――――――GAAAAAAAAAAA!!!!』

 

空間を震わせる咆吼が身を震わせたかと思った瞬間に、漆黒の空間はまばゆい光に阻まれ。

 

「――――――龍。 ドラゴン。 まさか、魔王とやらが……」

 

ぽつりとつぶやかれた言葉。

 

その先には――――――――。

 

【えっ】

【え】

【ドラゴン!?】

【あの……なんか】

【でかくない……?】

【しかも、1体なんかじゃ……】

 

――――――――視界いっぱいを埋め尽くす、圧倒的な質量を持ったドラゴンが――「最低でも数体」。

 

それが光る渦とともに、次々に姿を現した。

 

 

 

 

それは数体どころか数十体、数百体と膨れ上がっていく。

 

次々と光る渦が出現し、そこからとめどなくこちらへ向かってくる。

 

【え、なに、何が起きてるの】

【分からん】

【えっと、真っ黒なのが光って】

【そこからドラゴンが、一気にたくさん】

【これ、ワープアウトってやつなんじゃ……?】

【あのトカゲ、空間とか操ってたからなぁ……】

 

「ワープアウト」。

 

そのワードを拾った老人が、危機感をあらわにする。

 

「……なるほど。 人間という弱者の匂いを嗅ぎつけ、空間を超越してやって来たか。 あのとき、弱体化なされていたハル様の目の前に現れたときのように――魔王軍よ」

 

次から次へと、正面を埋め尽くす光の渦。

 

数々の戦場を乗り越えた老獪の目によると、光の渦だけでもはや千を越えており――それらからは、数秒おきに巨大な姿が出現している。

 

際限なく、限りなく、とめどなく、永遠に。

 

大小様々だが、その「小」でも――恐らくは「魔王」あるいは「トカゲ」、「イモリ」「炭火焼き」「両棲類」「あのどうしようもない人」とさんざんな表現をされたそれらが、まるで後ろから押し出されるかのように留まることなくこちらへ頭を向けて進んでくる。

 

それはまるで塊。

 

ドラゴンという種族が滝のようになった、塊。

 

「か、会長さん……」

「案ずるな。 ――そも、ノーネームちゃんの加護がある」

 

「あの、会長さん……さすがにこの状況で、『ノーネームちゃん』は」

「クレセントちゃんはおとなしくしておれ」

「ぶふっ」

 

【??】

【クレセントちゃん……?】

【またくしまさぁんが吹いてる】

【草】

 

【草生やしてる場合じゃないんですけどー】

【分かる、笑っちゃいけない場面って意識するほどしょうもないことで笑っちゃうの】

【あるある】

【くしまさぁんもそれで笑っちゃうんだもんな!】

 

3人と1人、そして無数のコメント欄が必死に目と頭を巡らすあいだに膨れ上がる、ドラゴンの群れ。

 

それは、ほんの数十秒で――ゆうに万を超える大群へと変貌していた。

 

【もしかして:魔王軍】

【総攻撃?】

【そのようだな……】

【もうだめだ……】

【ハ、ハルちゃん! ハルちゃんが来てくれたら!】

【ノーネームちゃん! ノーネームちゃん!!】

 

 

【不干渉】

 

 

【えっ】

【そんなぁ】

 

「……この状況を、我らだけで、と。 さすがは『我らが母――双神』の片割れよ」

 

【えっ】

【待って  待って】

【じじい、もしかしてノーネームちゃんのこと知ってた!?】

【マジで?】

【いやでも、爺ってば始原よ?】

 

「そうしん?」

「片割れ……?」

「どういうこと、ですか……?」

 

「話は後じゃ。 ……ま、その後に儂は居らんかもしれんが、ひとまずは地球の者どもには周知のことになっているようじゃしな」

 

にっ、と不敵な笑みを浮かべ、獲物を今一度握りしめる老人。

 

彼は、向かってくるドラゴンの群れに対してあまりにも小さすぎる体を向けたまま、静かに刀を――――――――。

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