【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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328話 「魔王軍本体<ドラゴン>」進撃

「――いえ、違います。 これは、私たちに被害を及ぼしません」

 

「……ちほ、ちゃん?」

 

そっと、老人の腕に手を置いたちほが、前に出る。

 

その腕には、「救護班」の腕章が輝く。

 

「ハルさんが魔王さんと戦ったときのことを、覚えていますか」

「え、ええ……」

 

「あのとき、ハルさんはどんな状態でしたか」

「えっと、しゃぼん玉みたいな球の中に……もしかして!」

 

ばっと振りかえる、るる。

 

――その横を――――彼女たちなど存在しないように素通りしていく、ドラゴンの群れの先鋒。

 

「ほんとだ……じゃあ、今の不干渉って……」

「……やれやれ、儂も老いたの」

 

ふたたびに刃を収め、ほうと息をつく会長。

 

【どゆこと?】

【あれだ、あのときは魔王……おのれトカゲ!】

【草】

【あの炭火焼きがハルちゃん守ってたろ? ノーネームちゃんとイモリの戦いから】

【あー】

 

「さっき、思ったんです。 この足場、ちょっと湾曲してるって」

 

ちほが、見えない足元をゆっくりと歩く。

 

「……ほんとだ」

「気が付かなかったわ……」

 

「……ふむ。 半径10メートル、20メートル。 そのくらいかの」

「ハルさんのときは2メートルほどでしたから、随分と大きいですね」

 

【その違いは?】

【ノーネームちゃんと両棲類の実力の差だな!】

【草】

【あの、ノーネームちゃんがドラゴンっ娘ならノーネームちゃんも……】

【今は人間だしいいじゃん】

 

「……え?」

「ノーネームさんが……人間?」

 

【あっ】

【やっべ】

【あーあ】

【まぁ隠し切れないよね】

【これでもみんな必死で隠してるんだけどなぁ】

 

4人の前を――漆黒の空間を、その巨体を一瞬で通過していく龍の軍。

 

それを尻目に、4人は知りたがった。

 

「――安全であるなら、まずは聞かせてもらおうかの」

 

「ええ。 私たちがないないされてから何ぶふっ」

 

「………………………………」

「………………………………」

「………………………………」

 

「……どのくらいが、経っているのかを」

 

【草】

【もしかして:くしまさぁん、簡単に笑っちゃう】

【マジ?】

【どうやらマジらしい】

【くしまさぁんかわいい】

 

 

 

 

「……ハルちゃんが、何千歳……」

「ノーネームさんも……」

 

「異世界の、超巨大で超強力なダンジョンの横に、地下都市……」

「数百、数千年前の地下巨大都市に、2人の石碑が……」

 

正気を疑いたくなる情報に絶句するしかなかった3人に、ひとことも発しない1人。

 

しかし、その真横を――1秒で数十数百という速さで通り過ぎていく巨体を見ているうちに、スケール感がマヒした一同はどうにかしてその情報を飲み込んだ。

 

「……然るに、儂らはその世界へと向かって追った途中なのじゃな」

 

【多分】

【ないない先があそこなら】

【でも、あんな世界にないないされた一般人は……】

【ああ……】

 

「まだ、ノーネームさんに連れて行かれた人々を……ハルさん以外に確認したわけではないのですよね? では、それは現段階では考慮には入れつつも、可能性のひとつとして留めておくべきです」

 

【くしまさぁん……】

【くしまさぁんは頭脳担当】

【女神……】

【え? ハルちゃんと同じだって?】

 

【え……それはちょっと……】

【あんまりにも……】

【困るかなぁって……】

【うん……】

【さすがに無いかなぁって……】

 

【ちょっとおっきくなってもあの調子のハルちゃんと、くしまさぁんを同列にするだなんて……そんなひどいこと、俺たちにはできないよ……】

 

【草】

【ひでぇ】

【ひどいけど正論で草】

【ハ、ハルちゃんはあれが長所だから……】

 

「……ふふっ」

 

コメントの流れを見て、思わず笑い出した、るる。

 

「ハルちゃん、変わらないんだね」

 

彼女の目じりには、涙が浮かんでいる。

 

「こんなに離れてても、ハルちゃんはハルちゃんなんだ」

 

「……るる」

「るるさん……」

 

――久しぶりに、本当に久しぶりに。

 

心の底からの笑いで漏れた、涙だった。

 

それを見た老人も、数年来の友人も、最近できた友人も。

 

コメント欄に書き込む視聴者たちも――それを、見なかったことにした。

 

【あのトカゲの群れ、どこ向かってんの?】

【さぁ……?】

【魔王軍の侵攻ならって思ったけど……】

【でも、ワープアウト?したんだろ? じゃあ目的地が近いはずで】

 

「確かにそうじゃの。 儂らの目の前で異空間から現れた」

「ということは、彼らの先に何かがあるとしか……」

 

「……み、みなさんっ! 下! 真下を見てください!」

 

不意に叫び出す、ちほの声に反応する一同。

 

先ほどまでは他のどの方角とも同じように漆黒でしかなかった足元の、はるか先。

 

そこには――。

 

「……地球!?」

「惑星ではあるの……ないない先があれかのう?」

 

「そんなことを言っている場合ですか!?」

「でもえみちゃん、私たち、ノーネームちゃんに守られてるんだよ? この中に。 動こうったって動けないよ?」

 

【地球?】

【分からん】

【小さすぎて見えない】

【配信じゃ、ただのドットだしなぁ】

 

ドラゴンたちは、ゆっくりとした――とっくに数十万に膨れ上がった群れとしてのサイズゆえにそう見えるのかもしれないが――隊列を組み、小さく光る青い球体へと向かっていく。

 

透明な球体の中で守られている4人には、目もくれずに。

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