【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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405話 旅立ち

「……ハルちゃん」

 

「るるさん」

 

ぎゅっ。

 

るるさんが、手を握ってくる。

 

「――また、お別れなの? また、いつ会えるかも分からないの?」

 

「ごめんなさい。 でも、そんなに遠くない内に……ですよね?」

「ん」

 

無表情で肯定の意思を示すノーネームさん。

 

彼女がそう言うんだから、きっと、今回よりは早く戻れるんだろう。

 

……そういや、戻ったらどうなるんだろ。

 

またダンジョンとかで――願いの泉的なとこ探して、今度こそ元の体に戻れるんだろうか。

 

ていうかあれ、結局何だったのか、ノーネームさんに聞くの忘れたなぁ。

 

というか、それ以前に……せめて普通の人間に戻るのかどうか。

や、この体、お酒には強いし魔法使えるしで良いんだけどさ。

 

あと、かわいいし。

 

今はちょっとだけ女の子らしくなってるから、お風呂とかトイレがなんとなく嬉し――――――――まずいまずいまずい、この体は借り物なんだ借り物、僕は男に戻るんだからこの発想は大変危険。

 

えみさんみたいにならないように。

 

よし。

 

「必ず、帰ってきますから」

「……約束だよ」

「もちろん」

 

「無茶、しないでね」

「状況によります」

 

「……ハルちゃんだもんね」

「嘘はつきたくないですから」

 

ぽつりぽつり。

 

……手のひらにあったかい水滴が落ちてくるのは、気がつかないフリして。

 

【るるちゃん……】

【泣いてる……】

【昨日まではやだやだってだだこねてたけど……】

【分かってるもんね、ハルちゃんたち、人助けに行くって】

 

【るるちゃんたちも行けたらなぁ】

【ワープ先で魔王に出待ちされてたら、ハルちゃんたちみたいな体じゃないと持たないっぽいし】

【だよなぁ】

 

【10日でだいぶ魔力回復したとは言え、ハルちゃんたちもまだ本調子じゃないのに】

【子供たちだけなんだ、一刻でも早く行きたいんだよ】

【ハルちゃんだもんなぁ】

【ああ】

 

【地球のダンジョンでも、誰にも知られないように人助け、いっぱいしてたんだもんなぁ】

【誰にも感謝されないのに、もくもくとたったひとりでな】

【そうだよなぁ、確認できてるだけでも3年以上、たったひとりで】

【ハルちゃん……】

【ハルちゃんは、優しいんだよ】

 

【だからあの子たちも……ね】

【しょうがない、女神様だから】

【人を助けずにはいられないから】

【ハルちゃんの生きる意味だもんね、人助け】

【お酒の次にな!】

【草】

 

【泣いてたのに笑っちゃったじゃねーか!!】

【良いじゃん、この配信だよ?】

【そうだぞ、始原だけのころからずっと変わらないんだ】

 

「……行ってきますね」

「うん」

 

「あっちでスマホ――は」

 

「むり」

「こんせん」

「きけん」

 

「ノーネームさんで無理ならしょうがないですね」

「……うん……」

 

しゅんとしているるるさん。

 

そんな彼女を見ていると、ちょっと胸がじくって痛む。

 

「……コメントとか連絡とか見れませんけど、今度は配信されてるって。 るるさんたちが見てるって、分かってますから」

 

――ぎゅっ。

 

彼女が、体を包んでくる。

 

「……気をつけてね」

「はい」

 

「あの子たち、きっと寂しがってるから、いっぱいこうして抱きしめてあげてね」

「はい」

 

「でも、私たちのこと、忘れないでね」

「忘れません」

 

「絶対?」

「絶対に」

 

「また、」

 

ほどかれる、体。

 

「一緒に……ご飯食べて、お風呂入って、寝て……っ」

 

「はい、また……きっと」

 

唇をぎゅっと絞めて――泣かないように、がんばってるるるさん。

 

涙は止まらないけども、がんばって抑えているんだ。

 

健気な、女の子。

 

すごく、良い子。

 

「はい、また。 戻ったら、また」

 

そっ、と、彼女を押し出す。

 

「……じゃ。 ノーネームさん」

「ん」

 

――ばさっ。

 

僕たちは、いつの間にか復活してた羽を両方に生やす。

 

きゅいぃん。

 

頭の上の輪っかが元気に回っている。

 

「行きましょっか」

 

最後まで繋がれていたるるさんの手を、そっとほどいて――ノーネームさんと繋ぎ直す。

 

「ハルちゃん……」

 

「あ、そうだ。 るるさんたちは戻れるんですか?」

「ん」

 

「いつごろ?」

「そのうち」

 

あいかわらずに曖昧だし必要最小限しか言わないノーネームさん。

 

でも「そのうち」ってことは、迷子捜しに出る僕たちよりは先に戻るんだろう。

 

「……らしいので、また、引っ越したばかりのお家で会いましょう。 大丈夫です、僕は1回寝泊まりした場所はちゃんと覚えてるので」

 

ばさっ。

 

僕たちの羽が、静かに浮力を発生させる。

 

「あのマンション、まだちょっとしか住んでませんから。 近くとか、散歩すらしてませんし」

「うん」

 

「また、買い物に連れてってください」

「うん」

 

「また、服を選んでください」

「うん……っ」

 

「また――一緒にダンジョン、潜りましょう。 配信しましょう」

「うん……うんっ」

 

「ふたりはるるハル――ですから」

 

「……ハルちゃんっ……」

 

【ハルちゃん……】

【こんなときにあのコラボの……】

【覚えてたんだね】

【当たり前だろ  ハルちゃんとるるちゃんの、初めてのだもん】

 

僕たちは、舞う。

 

羽を動かしたとたんに周囲の風が止んで、静かな世界を飛ぶ。

 

【ハルちゃんたちが……】

【るるちゃん……】

【るるちゃん、偉いね】

【えらい】

【そうだよ、また会えるよ】

 

「「「「――――――――!!!!」」」」

 

風が止んでから、かすかに聞こえる。

 

地上で――たくさんの人たちが、見送ってくれてる。

 

「じゃ、僕たち。 ちょっと出かけてきます。 留守をお願いしますね」

 

「おねがい」

 

僕たちは――泣いてるるるさんに、やっぱり泣いてた九島さん、それに悲しそうな笑顔を浮かべているえみさんを、もう1度だけ見て。

 

「じゃ、行こう」

「ん」

 

そうして――今度は僕自身の意思で、旅立った。

 

 

◆◆◆

 

 

ハルちゃんは旅立ちました。 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

 

ちょっと暴れすぎていたのでハルちゃんにはお休みしてもらいます。 そのあいだに――暴れていたときのおはなしをしましょう。

 

 

 

ハルちゃんの書籍版は11/20発売です。 ご興味のある方はプロフィールへお越しくださいませ。

 

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