【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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407話 「私たちが『女神さま』と出会う前のこと」 2

「魔王から逃げ続け幾千年を保ったこの国も、どうやらこれまでのようだ」

 

お父様が、わたくしたちにおっしゃった。

 

「だが、せめてもの抵抗とし――滅びの刻のために初代から幾千年、転移陣を国中に張り巡らせてあるのは教えたね」

 

お父様。

 

ソレイユ王国の、王様。

 

「国民へは、すでにそれらを使い逃げるようにという――我が王家からの、最後の命を出した。 同時に、望んで残った兵士たちには、命ある限り、国民――元国民を逃せともね」

 

ずぅん。

 

お城が、揺れる。

 

「魔王め、最期の別れくらい……大丈夫かい? ヴィヴィア」

「はい、お父様」

 

「リリーも大丈夫かな?」

「は、はい……」

 

揺れが収まるまでわたくしたちを抱きしめてくださったお父様が、静かに腕を解かれる。

 

わたくしと、妹のリリー。

 

このお城に残った、最後の王族。

 

「転移陣の行き先は、誰にも分からない。 場合によっては――魔界に繋がっていることも、あるだろう。 残念ながら、私たち人間の魔法は魔族の模倣だからね」

 

バルコニーからは、美しかった町のあちらこちらで上がる煙に、遠くに点々と魔王軍の姿。

 

「だが、それでも私たちはできうることをすべてした。 幾千年、皆で協力して、今日まで王国を――人類を、栄えさせた。 それぞれの転移陣へも、可能な限りに兵士や冒険者を均等に配分した」

 

魔王軍、襲来。

 

それらは、もう――王都の中心、このお城へ向かってきている。

 

「この玉座の下は、聖域への地下通路になっている。 とても長い道だし、ずっと暗くて怖いと思うが」

 

「お父様。 わたくしは、ソレイユ王国、第1王女。 ヴィヴィアン・ソレイユです」

 

「わ、わたしは、だ、第2王女……エリザベス・ソレイユです……」

 

「――うん、自慢の娘たちだ」

 

お父様は、静かにわたくしたちの頭を――最後に、優しく撫でてくださる。

 

「……お父様は?」

 

「王たる者はね。 別の王に、城を無傷で明け渡すことは――できないんだよ」

 

「……おとう、さまぁっ……!」

「リリー。 お姉様の言うことを、よく聞くんだよ」

 

謁見の間。

 

玉座の前には、近衛兵を始めとしてお父様と最期を共にされる方々が並ばれていて――わたくしたちを、優しい目で眺めていて。

 

「……お行き。 神のご加護があらんことを」

 

「「「姫様の、ご無事を」」」

 

「……っ、行きますよ、リリー」

「ぐすっ……はいっ……」

 

――そうしてわたくしたちは、最後まで守られながら逃げました。

 

持たされたランタンと、お水に食料。

 

暗い洞窟を、何回か寝て起きて――何回か泣きじゃくる妹を慰めて、そのうちに一緒に泣いてしまったりして。

 

何度か地下まで届いた衝撃や、轟音に、気がつかないフリをして。

 

「……ここが」

 

「せい、いき……」

 

そこは、緑のまぶしい森の中でした。

 

「ここに、何があるの……?」

 

「お父様は、わたくしたちに逃げろとおっしゃいました。 ですからこちらにも、転移陣が……」

 

さく、さく。

 

魔王軍が総攻撃を仕掛けてきてから数ヶ月のあいだ、感じることのなかった解放感。

 

皆を見捨てた罪悪感。

 

――リリーを守らなければという義務感。

 

それらに突き動かされたわたくしは、洞窟から出たままに手を引いて歩き続け、

 

「……これ……教会にある……」

「ええ」

 

――旧いはずなのに、まったく欠けることなく静かに佇んでいる、巨大な石碑の前に辿り着きました。

 

「わたくしたちの祖先を、かつて、魔の世界から逃してくださった戦女神様」

 

「あるあ――さま」

 

守護神アルア様。

 

羽を生やした人の御姿、頭上には光の輪、そして片手は自然に下ろし、もう片方の手は真横に広げ――なぜか途中で途切れている御姿。

 

「どうか、わたくしたちをお導きください」

「わ、わっ……おみちびき、ください……」

 

石碑の偉大さに圧倒されたのか、聖域の神聖さからか。

 

わたくしは、自然に膝をついて祈りを捧げていました。

 

「………………………………」

「………………………………」

 

さぁぁぁ。

 

緑が、吹き抜けて。

 

そして、何も起きないのかと顔を上げたわたくしの前には――

 

「……洞窟」

「でも、明るい……」

 

――ダンジョンが、広がっていました。

 

 

 

 

「ファイヤーボール!」

「ア、アイスアロー!」

 

ダンジョンということは、モンスターが居るということ。

 

「……けれど、わたくしたちの初級魔法でも倒せますから」

「ま、魔王軍……じゃ、ない……?」

 

「アルア様のご加護……転移陣での場所でしたら、少なくともそうでないとは……思いたいですけどねっ!」

 

モンスターたちが、嫌な声を上げながら倒れていく。

 

けれど、

 

「……宝石……?」

「結晶化……聖域や神気の高い場所でしか起こらない現象……」

 

醜悪なモンスターたちは、次々と血飛沫を上げ――ずに光の粒子となり、こつんと床に落ちるのは、結晶化したモンスターの残骸。

 

「ダンジョンはダンジョンでも、アルア様の影響下にあるのでしょう」

 

――女神様が、どこかで見てくださっている。

 

わたくしたちに、生きろと命じてくださっている。

 

「お父様や皆様のためにも、リリー? わたくしたちは」

 

「――あっち! 誰かの泣いてる声!」

「あ、ちょっと、リリー!?」

 

普段からずっと、今日だってずっと、わたくしの手を握りしめて1歩後ろから着いてきていたリリー。

 

何日ぶりかに人の声を聞いたのか、手をほどいて走り出していきます。

 

「――この程度なら、わたくしたちでも数人なら守って移動できる……」

 

――持てる者の、義務。

 

王国の皆さんか、それとも転移先の世界の方かは存じません。

 

けれども――

 

「――わたくしは、ソレイユ王国」

 

体内の魔力量を測りながら、妹を追いかけるわたくし。

 

「――第1王女、ヴィヴィアン・ソレイユですからっ」

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