【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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410話 「私たちが『女神さま』と出会う前のこと」 5

「ダメだ。 これ以上、下の階層だと1匹相手で束になっても敵わねぇ」

 

「う、うん……ぼくたちでも逃げ切れるか分からないよね……」

「だな。 みんなそろそろ限界だし、安全な場所でもありゃ良いが……」

 

ぼくたちがここに来てから何日か。

 

昼も夜も分からない洞窟の中だから、今がどっちかなんて分からない。

 

ただ、交代で短く眠るのを10回は繰り返した――と思う。

ぼく、物覚え悪いから間違ってるかもしれないけど。

 

「そうですね……わたくしたちの魔力も、回復が追いつかなくなっています」

「来たばかりのころは、ほとんど使っていませんでした、けど……」

 

お姫様たちの魔法も、さっきのはかなり弱くなってた。

魔法での攻撃も、だんだんと光が薄くなってる気がする。

 

「MPの回復ね……初日は満タンに近かったのが、今は底を尽きかけてる……? ゲームだと睡眠とかで回復するけど、ここじゃまともに寝れてないし……」

 

キャシーお姉ちゃんは……また変なこと言ってるけど、きっとすごい頭で何か分析してるんだってお姉ちゃんが言ってた。

 

「それに、――――――――……」

 

「わり、ビビー。 もっかい言ってくれ。 まただ」

 

――そして、これだ。

 

「昨日あたりから、断続的にお互いの言葉が分からなくなってる……翻訳魔法自体も使用に応じて減衰するの? それとも上の階層には電波みたいに届くけど下に行くとダメ? 吹き抜けの近くでこれだし……これ、引き返さないと検証は……」

 

キャシーお姉ちゃんの言ってることは、たとえ翻訳魔法があってもさっぱりだけど、とにかくお互いの言葉が分からなくなりつつあるみたい。

 

状況は、どんどん悪くなってる。

 

――ぼくたちは、出口を探そうとした。

 

けど、最初のところはどことも繋がってなくって、下に続く階段だけがあった。

 

なんで洞窟に階段があるのかって聞いたけど「ダンジョンとはそういうものです。 原理は不明ですが、石造りの階段や通路、わたくしたち人間の使用する道具や食料が落ちていることもあります」ってお姫様が言ってた。

 

行くところもないからって下へ下へ――下へ。

 

魔物と戦うと、綺麗な宝石に加えていろいろ落としてくれるけど、それでも。

 

「……あの軍勢、近くなってる」

 

「んー、まだ大丈夫みたい。 さっきも石投げて反応確かめたけど、まだ索敵範囲外みたいよ」

 

ぼくが崖から下を覗いてたら、ぶつぶつ言ってたキャシーお姉ちゃんの顔が隣にある。

 

「わ、わっ……」

 

「いい加減慣れてよ、アレクちゃん」

「だ、だって、ぼく、怖がりだから……」

 

そんな彼女は、最初のころの印象が消えて、今やお姉ちゃんみたいに元気な女の子になっている。

 

「そうだぞキャシー。 アレクは臆病だから、お前みたいに漏らしちまうんだぞ」

「バ、バカ! あれは忘れてって!!」

 

「お前の下着、あのとき洗ったのあたしっての覚えてるか?」

「~~~忘れる!! 良い!?」

 

「あ、あのっ、おふたりとも……モンスターたちに声が」

 

「大丈夫よビビー、言ったでしょ、索敵範囲外だから……ほら、気づいてないって。 で、良い? 忘れる!!」

「はいはい、わーったよ」

 

僕の左右でお姉ちゃんたちが……ひやひやするくらい大声で話してる。

 

「……すごいですね、アレクさんのおねえさま」

「ううん、リリーさんのお姉ちゃんもすごいよ」

 

そっとぼくの服を引っ張ってくれたリリーさんと抜け出す。

 

「……でも、わたし……その、まだ、不思議なんです」

「不思議? 何が?」

 

いつももじもじしてる、今は白髪に戻ってる彼女。

肌も雪みたいに白いから、照れるとすぐに真っ赤になるんだ。

 

「……アレクさんたちの世界では……その。 だ、男性と女性が、逆だなんて……」

 

「ぼくたちも不思議だよ。 男の人は子供を育てて、女の人が狩りするっていうのがぼくたちの部族だったから」

 

何日か前、大きめの水場を見つけたぼくたちは、服と体を洗うことにした。

 

なぜかぼくを見ながら急にもじもじしてたビビーお姉ちゃんとリリーさん、キャシーお姉ちゃん。

 

だけどさっさと服脱いだお姉ちゃんに、雑に服を脱がされたぼくを見て――そしてお姉ちゃんを見て、またぼくを見て、すごくびっくりしてたっけ。

 

「わたしたち、最初はアリスさんが女性だと――いえ、その、アレクさんたち的には男性だと……あ、あれ……?」

 

「よく分からないし、お姉ちゃんも気にしてないからだいじょうぶだよ」

 

とは言っても、部族の掟で「5歳を過ぎたら男と女は一緒に水浴びとかしちゃダメ」ってあるから、ぼくたちは3人と離れて洗って、服が乾くまでも離れてたんだけどね。

 

「――おーい、アレク、リリー」

 

「こちらに狭い通路が……――――――――探索してみましょうという話で……」

 

「あ、お姉ちゃんたちが呼んでる」

 

「ごめんなさい、――――――――……でも大体分かりますから大丈夫です」

 

あ、また話してることが分からなくなってる。

 

でも大丈夫だよね。

 

女神?アルテさま?だっけ?のおかげで、お互いの名前とかどこから来たとか分かってるんだもん。

 

たとえこれから先分からなくなっても、そこからもういちど、言葉を覚え合えば良いんだもん。

 

けど、女神様かぁ。

 

……食料は、よく分からない食べものがときどき手に入るだけ。

 

飲み水も、洞窟の隅の水場か広い湖に辿り着かないと飲めない。

 

そして、魔物は強い。

 

1刻に何匹とも戦ってたら、お姉ちゃんたちでもすぐに疲れる。

 

――せめて、死ぬ前に。

 

お姫様によると、すっごく綺麗で優しいって言う、女神様。

 

アルテさま。

 

1度で良いから、会ってみたいなぁ……。

 

 

◆◆◆

 

 

ハルちゃんの書籍版は11/20発売です。 ご興味のある方はプロフィールへお越しくださいませ。

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