【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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411話 「わたしたちが『女神さま』と出会ったときのこと」

「うぅ……こわいです……」

「リリーは無理しなくても良いのですよ?」

 

わたしたちは、狭い通路を発見しました。

 

そこは子供の私たちがなんとか通れるサイズの、坑道のような場所。

そしてなぜか――モンスターが、寄りつかない場所。

 

キャシーさまは「ここはきっとセーフエリアって場所よ! だからここならみんなで寝ても食べられたりしないわ! ……ゲーム的にはたぶん……」とおっしゃっていました。

 

実際に何回か寝ましたけど、そのあいだにモンスターと顔を合わせることはありませんでした。

 

「ただなぁ、あん中じゃ水しかないからなぁ。 まぁ見張り要らずで安心できるってだけでありがたいんだけどよ」

 

「でもお姉ちゃん、――――――――……」

 

アリスさまがおっしゃるように、あの中は安全な代わりに食料も道具も手に入りません。

 

ですので、みなさんの調子が揃ったとき、せーふえりあを上って上に出てモンスターを狩るという形にしています。

 

安心して寝られるようになって、おねえさまの魔法も回復してきましたし、わたしのそれも少し使いやすくなって来た気がします。

 

……ただ。

 

「やっぱりここはダンジョン……ゲームで言うダンジョンね。 けど――――――――だし、私はともかく、戦える誰か1人でもカゼとか引いたりケガしたりしたら、その時点で……」

 

言葉は――通じない時間の方が、多くなって来つつあります。

 

やはり、キャシーさまのおっしゃるとおり、翻訳魔法は――アルアさまの恩寵なのでしょうか。

 

わたしたちがこちらへ逃げてきたあの石碑から遠ざかるほどに。

 

……そうしますと、わたしたち。

 

遠い世界へ、みなさんを捨てて逃げたわたしたちのことでさえ――慈悲深い女神さまは、わたしたちを――今でも、守ってくださろうとしている。

 

きっと、そうなのだと――わたしは、思いたいのです。

 

 

 

 

「……まただ」

 

「さながらSFとかファンタジーでの兵士の輸送ね」

 

吹き抜けの下――大広間。

 

そちらでは、また――数時間に1回の、モンスターの転移が始まっています。

 

整列し、身じろぎもせずに待機しているモンスター――いえ、魔王軍。

 

彼らは、わたしたちから見て奥のほうからゆっくりと並んで歩いてきて、縦も横も――公練度の兵士のように並びます。

 

そして時間が来ると最前列に転移魔法が展開され――100を超えるワープゲートへ、順に入っていきます。

 

「あれ、どこへ行ってるんだろ……」

 

「決まってるだろ。 魔王軍だ。 縄張り広げるために、別の魔物か――人間を攻めてるんだよ」

 

――ここが、どのような世界なのかなんて、分かりません。

 

けど、もしここの上にもたくさんの人々が居て、彼らもまたこの軍勢に襲われているとしたら。

 

そう思うと、震えが止まりません。

 

「ダンジョンには魔力があるってのが王道だし、ここで魔力補充させながら待機させてる? それとも――――――――、――――――――……」

 

――キャシーさまは、ご立派です。

 

なんでも、王の存在しない平民だけの国、その田舎育ちのただの子供――だとご自分でおっしゃっていたのに、わたしと同じように怖がりながらも次々と仮説を立てていらっしゃいます。

 

「食料の方は、あとどのくらい持ちそうですか?」

 

「2日ってとこか。 けどタオルとかランタンとか鍋とかはいくらあっても良いんだし、昨日みたいに布団見つけたらもっと暮らしやすくなる。 やっぱ今日も……」

 

おねえさまとアリスさまは、わたしたち5人の生活を支えてくださっています。

 

魔法に長けているおねえさまに、脚が速くて鳥のように舞うアリスさまたち。

 

……それに比べて、わたしは。

 

わたしは、何もできていないのです。

 

そうです。

 

わたしは、平和なときからずっと、すべての人からお世話をされているだけの存在で――――――――

 

「……? 何、でしょうか」

 

「リ、リリー? あ、危ないよ……?」

 

隣に居たアレクさまの声も耳に入らず、わたしは「その存在」を認識しました。

 

「ものすごく大きくて、あたたかくて、優しい光……アルア、さま……?」

 

「――――リリー、下がって!」

「っ、全員後ろに下がれぇ!?」

 

ぐいっと後ろから手を引かれます。

 

けど、わたしの目は――遙か上空で光り輝く、その御方を見ました。

 

「――人!?」

 

「羽が生えてるのか……!?」

 

「綺麗……」

 

「精霊!? エルフ!? え、ちょっと待って、私、今、ファンタジーもファンタジー見てる!?」

 

「あ……も、モンスターたちが……!」

 

視線を下に移したわたしの目の前を――羽を生やしたモンスターが。

 

「っ!? 空飛ぶ魔物とか居たのかよ……!」

 

「さ、下がらないと! あの精霊とか天使とかっぽいのに今はくぎ付けだけど、それが終わったらあいつら、こっちにも飛んでくるかも……!」

 

「……いいえ。 問題、ないようです」

 

無数のモンスターが、その御方に向けて飛び立ち突撃。

 

けれど彼らは――ただ彼らを見たその御方の目線だけで、ただ振り下ろした御手により――叩き、落とされました。

 

「……すげぇ」

「わぁ……」

 

「アルア、様……なの、でしょうか……?」

 

口々にため息を漏らすみなさん。

 

――どすどすどすっ。

 

モンスターたちが、地に堕ちていきます。

 

「……女神、さま」

 

気がついたら、わたしは――教会でのお祈りと、同じ姿勢を取っていました。

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