【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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429話 溶けてた僕と子供たちと

「………………………………」

 

――夢から醒めるってのは、無から有に切り替わるのとおんなじだ。

 

なんにもない世界、あるいはひどく泥酔したみたいに善悪すら分からず、ただただ記憶の整理で作り出されている妄想の中で流され続け。

 

――そこから離れて現実に帰ってくるときに、溶け尽くしていた「僕」がもう1回形取られていく。

 

「……くぁ……」

 

……けど、あー。

 

「……あ、あー。 ……どこここ」

 

僕は「物理的に溶けていた」体を作り直し、少しずつ目を開けていく。

 

永遠の空間。

 

魔力の渦。

 

指向性のない有であり無の世界。

けども満たされている方の空間。

 

あれだ、真空と真逆の方向のやつ。

 

「……あー、僕、どんくらい溶けてたんだろ……くぁぁぁ……」

 

僕は「明るいと良いな」って思って、頭の上と背中に光源を設置する。

 

真っ暗だった世界が、ちょっぴりだけ明るくなった。

 

「……そっか、女神スタイル……そうだったねぇ……ねむ……」

 

頭の上には丸い金色の輪っか、背中には白と黒の翼。

 

「やば、溶けてるじゃん……まぁいいや、そのうち復活するでしょ」

 

どうやら僕「たち」は溶けちゃってたらしい。

 

魔力だからね、こういうとこだと溶けちゃうんだよなぁ僕たちみたいなのは。

 

いろいろと便利な代償として、魔力が枯渇するとこうなっちゃうっていうね。

メリットはデメリット、デメリットはメリットだからしょうがない。

 

「で……あー、ぜんっぜん思い出せない……」

 

寝る前に、何してたのか。

 

ここまで溶けるのは久しぶりだったもんだから、それが丸っきり思い出せない。

 

「……とりあえずで魔力貯めないとなぁ……どっか手っ取り早く魔力の塊もらえないかなぁ……」

 

全てが有って無い空間だから、時間さえ掛ければ僕自身は完全に成形できる。

 

けども、今は記憶すら溶けてるけども何か大切な用事があって、んでまとまった量の魔力がなきゃいけなかった気がする。

 

「んー、どうしよ……適当なとこ降りる……?」

 

理想は魔力を閉じ込めるシステム――ダンジョンって呼ばれてるんだっけ――なんだけど、そこに出るにはある程度の量の魔力で戦闘力がないと出た瞬間にぱくりんちょでまた溶けちゃってって悪循環。

 

「……ダンジョンはなしなし。 万が一大気中で霧散しちゃったら、意識が戻るのすら数千年とかかかっちゃうし……ん?」

 

「………………………………あるてー」

「あるあー!!」

「のーむ! のーむ!!」

 

「……ああ、僕たちのことか」

 

遠くから聞こえてくるその声でしばらく首をひねってた僕は、ようやっとその呼び名に合点が行った。

 

「ずいぶん古い名前……どっかで管理してた世界の子かなぁ……」

 

することもないし、とりあえず行ってみよう。

 

まだ肉眼とかじゃ見えないだろうけどさ、こう、近くに居るだけでなんか違うでしょ?

 

 

 

 

「………………………………あ、思い出した。 この子たち、あの子たちだ」

 

意味になってない言葉が口から出る。

 

問題はない、だって僕自身は理解してるんだから。

あくまで理解したって意識をはっきりさせてるだけ。

 

「きゃー! 落ちる! 落ちるぅぅぅぅぅ!! あっはははは!!」

 

「お前楽しんでないでさっさと攻撃しろ攻撃!」

「わぁぁぁん!! おねえちゃぁぁぁん!!」

 

おー、びーびー泣いてる子が居る。

 

その一方でめっちゃ笑ってる子と、めっちゃ怒ってる子が居る。

 

何かこう……独特の感性と美学と技術のつぎはぎで形成された、謎の乗り物に乗っているのは5人の子供たち。

 

「わ、わたくしたちが落ち続けていて風も強く、さらに矢が地面に落ちていきませんっ……ま、魔法で対処を!」

 

「もうっ! どうしてこのタッチパネル、奥のほうのシステムがとんでもなく分かりにくいんですか!! これだからもう美食の国とかジャガイモの国のシステムってば古いんですからぁ!!」

 

赤髪の子が楽しそうに叫びながら、黒髪の姉弟……かな?……は必死で。

 

銀髪の子たちはそれなりに冷静だけども……あー。

 

うん、記憶が戻った。

 

「あっちの僕たち」の子たちだったね、君たち。

 

魔力で位相を制御してるらしいけども、初歩的すぎるエンジンのせいで、この乱気流ならぬ乱魔流の中じゃあ紙飛行機くらいにしか落ちるのを制御できていないらしい謎の物体。

 

そこに乗って居るのは5人の子供たち。

 

――その回りには、

 

「うへぇ……これ、どっかの魔王さんの軍隊かぁ……や、倒しても良いんだけど大丈夫かなぁ……」

 

その周囲に群がろうとして――それでもそこそこの射撃スキルでの矢をちくちく刺されたり、魔法でちくちくやられたりするもんだから近づくのをためらっているらしいドラゴンさんたちが居た。

 

そこそこの強さはあるらしいけども、それはしょせん「そのまま食べると口の中とか喉とか痛めるからやだなぁ、どうしよっかなぁ」程度の躊躇しか生み出さないレベル差。

 

存在の差って残酷だね。

 

「君たちどこの所属なんだろうね……倒しちゃったら絶対報復に来るからさ、規模によってはすっっっごくめんどくさいんだよなぁ、自称魔王さんたちってば要するに縄張り争いしてるヤンキーさんたちだし……」

 

うーん。

 

謎の物体Xで下降を続けている子供たちに合わせて僕も落ちながら思考する。

 

……や、助ける以前に……僕、今のままじゃ1回こいつら半壊させる攻撃したら溶けちゃうっぽいんだけど。

 

かといって、見捨てる選択肢はないし……どうしよ。

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