【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「ノーネームちゃんがノーネームきゅんにぃぃぃぃ!?」
「姉御、うるさいよ」
「ショタコンはどうでもいいけど静かにしてね」
「いやいや! だってほら! あの子供たちもギャン泣きしてる!!」
「あ、そうそう、言い忘れてたけどねぇ」
「いや、だから!」
荒ぶる姉御を見てにこにこと話を聞いていたマダムが、ぽつりと言う。
「そういやテレビの方は、ただのプロレスだからね」
「だから ………………………………は?」
「縮んでしまったノーネームちゃんの方がよほどに大切だわさね」
「まさかあの映像が、両方とも役者だとは誰も思いませんからね」
「え? ……は?」
気楽すぎるその声から発せられる爆弾発言に、思考ごと固まる姉御。
「あと、あとでここ来るからね、あの子たち」
「は? あの子……たち? え?」
叩きつけられた情報で動けない姉御。
「……ノーネームきゅんたちは大丈夫そうだけど……え?」
「僕たちの仲間の女王は分かるけど……」
「たちってことは、別の誰かも来るの?」
はーい、と手を上げて素直に質問する学生たちへほほえむマザー。
「ええ。 ……この始原の立ち上げからずっと、外れて行動してた子がね」
姉御は――錆びついたロボットのように、ぎぎぎと首を回す。
「……まだあんの?」
「ええ」
「あとどんくらい……?」
「たくさん」
「……もーいやー……」
どさり。
ショタっ子を愛でるためだけに動いていた彼女は――一般人には抱えきれない情報量に、意識を手放したくなった。
◇
広大な爆心地。
かつて「500階層ダンジョン」の存在した、今は存在しない荒野。
地面には巨大な穴、その周りにはクレーター。
さらにその周囲は広く柵で覆われ、一般人の立ち入りは許可されていない。
『あの日も、このような晴天だったのでしょうか』
銀髪の少女が、上を見ながら語りかける。
『わたくしの愛する妹が――』
それに相対しているのは、胃痛を押しとどめている合衆国のトップ。
もちろんSPや軍人は周囲に控えているが、それ以外は報道陣以外誰1人存在しない空間。
『わが合衆国は、先の――「no name」と呼称される異界の大精霊を脅威と誤認し――……』
◇
「――という筋書きですね。 世界も、合衆国も、そしてあの女王様も納得する宣言――という建前です」
「おーおー、がんばってるねぇ」
「そりゃあ、そういうシナリオだからねぇ」
それを、地下の主モニターで眺めている始原たち。
「ていうかちょっと!? あの、ハルきゅんの配信!! ノーネームきゅん!!」
「姉御……さすがに胸膨らんでる女の子のこと、男の娘扱いするのは失礼よ……? ハルちゃんは中身男の人だからまだしも……」
「マナーがなってないね、マナーが。 大人なのに」
「神なら両方揃っててもおかしくないでしょうが!! あと今は縮んでる! しかも女神って否定してない! つまりは実質男の娘!!」
「すごいねぇ……姉御君でなければできない発言だねぇ」
その次に大きいモニターでは、今まさに落下し続ける暗闇で懸命に戦うノーネームと子供たちの姿。
さらにその次のモニターでは――異世界の首都(仮)の大神殿(仮)の大聖女(決定)るるたちが、配信画面から消失して大騒ぎになっている町の光景。
「ええ、まさに激動ですね」
「ちょっ!? そんなのんきに!」
「――焦ることはありません」
その声に――この場に居る始原以外の声に、ぎょっと顔を上げる姉御。
「その姿」に、思考が止まる彼女。
「……って、アンタ……だって……ほら! テレビ! そこに! 爆心地前で!」
「彼女」を視認し、モニターと入り口とを交互に見ながら口をぱくぱくとしているショタコンは、つい先ほど見てテンションの上がった「ノーネームきゅん」のことなどすっぽ抜け。
「ええ。 そちらは代理の方ですから。 もう一方と同じく」
『聖域へ足を踏み入れることをお許しください』
そうして、ぬっと入ってきたのは――
「だっ!? だだだだだだだ!!?」
『本物の方の大統領さんこんにちはー』
『新開発の胃薬要る? マジで楽になるよ』
『はは……あなたたちは変わりませんね』
全世界生中継、全世界視聴率ダントツトップ(異世界配信を除く)、恐らく今最も世界で見られているだろう人間、そのツートップが――なぜか、この地下に居た。
「あの! あたしアメリカ語ナチュラルだと分かんないんだけど!!」
「姉御ちゃんはそれで良いんだよ。 飴ちゃん要るかい?」
「今そんなの出してる余裕ある!?」
「そのおじさんはただの付き添いだから気にしなくて良いのに」
「ですね。 ここに入場できないSPさんたちの代理です」
「……はぁ?」
「は」と「あ」と「ま」を足したような発音をした姉御に、一同が沸く。
『それよりも、時間がございません。 閣下?』
『ええ。 ……こちらへどうぞ、我が娘よ』
かつ。
足音が、さらに1組。
『お邪魔します――いえ』
彼女は、燃えるような赤髪を撫でつけながら一礼したあとに、
「お邪魔するわね! ……こ、この国の言葉、ちゃんと発音できてる……?」
「……え? ……ファ、ファーストファミリーの……!?」
「お、姉御ちゃん、よく知ってるね」
「そして、もうひとつの顔が」
姉御を除く全員が、ノーネームに守られ戦っている子供たちを見上げる。
「………………………………へ? え?」
その子供たちを守るノーネームが、白髪の少女を黒い光で包んでいる。
「ここからが」
「ええ、ここからね」
新顔の少女たち――かつては8歳と9歳だった少女たちは、今や立派に育っていて。
「……がんばってね、リリー」
「がんばんなさいよ、アリス、アレク」
2人は、かつてのように手を繋ぎ、つぶやくようにして祈る。
「「あの御方を、無事に連れ戻すために」」
その画面の先には――もうひとり。
かつての赤髪の彼女と銀髪の彼女が、それぞれ別の場所で――2人ずつ、同時に存在していた。
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