【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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454話 みんなを、説得

「――聞いてください」

 

僕は、みんなの前――上を、けれどもそこまで高くないところをあえて飛んで見せて、あえて……なんかそれっぽいエフェクトって思ったら頭の輪っかとか羽とかが勝手に輝いてくれていて。

 

「ひっ……」

「お、お怒りに……!?」

 

ちょっと怖がらせちゃったけど……あ、ノーネームさんノーネームさん、君がおんなじことやると真っ黒な光でもっと怖がらせちゃうよ?

 

まぁいいや、静かになってくれたし。

 

そんなことよりも、みんなに言わなきゃね。

 

「魔王軍――あのモンスターたちを連れてきてる親玉さんは、しつこいんです。 とっても、しっつこいんです。 ぎとぎとの油汚れよりもしつこいんです」

 

何回も何回も「子供産め」って言ってくるストーカーさんなんだ。

 

悪いけど僕、中身が男だからそういうのはちょっと……男だからそういう気持ちは理解できなくもないけどさぁ……。

 

【草】

【草】

【ああ、しつこいよなぁ】

【あのオオトカゲはなぁ】

【ハルちゃん、もう何回も撃退してるもんねぇ】

【でもたぶんまた来るてっいう】

 

【ハルちゃんを手に入れるためなら何だってしそうだし、できるだけの力はあるからなぁ】

【肝心のハルちゃんが強すぎるから何とかなってるけど、たくさんの人を人質に取られたら怖いしなぁ】

【ノーネームちゃんのないないがなければ、地球ですら数十億も……】

 

「――僕たちは、いろんな人たちから聞いてきました。 魔王さんたちに攻め滅ぼされた、あるいはなんとかがんばってるけど被害も大きい、たくさんの世界のことを。 ここだけ、じゃないんです」

 

そうだ。

 

僕たちがここに来たからって、しょせんは1個人――今の僕自身が人間かそれ以外の何かかはとりあえず置いておくとして――だし、いくら力はあっても体もちっちゃいし、眠気には勝てないし、お酒がなくなったらやる気がなくなる。

 

それに、あのワープで――この世界のあちこちに出没しているんなら、たとえ僕たちがここでがんばっていても――そのうちに、各地を滅ぼした彼らに、囲い込まれる。

 

あっちの世界でやったみたいな派手な攻撃は、今は良くて1回2回程度だろう。

 

魔力が尽きたらその時点で負けだ。

 

最悪はノーネームさんがないないってのをしてくれて、手の届く範囲の人たちくらいは助けられるだろうけども……それ以外の人たちは無理かもしれない。

 

……そもそも、それをし続けてるみたいなノーネームさんは、明らかに弱ってる。

 

たぶんそれにつられてだろう、僕もなんだかしぼんでるし。

 

魔力もスキルも何もかもが落ちてる。

その実感があるから節約してるんだ。

 

そうだ。

 

「僕たちは、万能じゃない。 いつまでも、何もかもを助けるなんて……できないんです」

 

【ハルちゃん……?】

【偽ハルちゃんも消えちゃってるもんなぁ】

【偽?ノーネームちゃんも……】

【きえないで】

 

だから。

 

「ですから。 あなたたちが自力で乗り越えられるように、お手伝いはします。 けども」

 

「ん」

 

ふと横を向くと目が合って、こくりと頷いているノーネームさん。

 

「きっとみんな、できるなら自分たちであのしつこいのたちを追っ払いたいはずです。 ――なんにも知らなくって、なんにもできなくって、神様にただ祈るだけしかできない時代の人たちじゃ、ないんですから」

 

「……ハルちゃん……」

 

下で、また泣きそうになってる、るるさん。

 

ごめんね。

 

君のこと、何回も泣かせちゃってるね。

 

「……そうだ。 俺、ちっこいのだったけど、モンスター倒せたんだぞ」

「私も……屋根から落としたレンガで!」

 

「きゅ、急なことだったけど、みんなやれることはやったんだ」

「ああ……」

 

「この町の、旧市街の外のことすら分からないけど……少なくとも助けてもらうまでの時間、私たちは私たちだけで凌いだのよ!」

 

「そうだぜ……たとえ女神様に助けられなかったとしても、1匹くらいは道連れにできたはずだ!」

「決死隊の話してたところだったもんな、さっきまで!」

 

ぽつり、ぽつり。

 

人々が、自分がしてきたことを思い出す。

 

「人間の、人類のすごいところって、そういう団結力じゃないですか」

 

ざわつき始めたところで、もう1回話しかける。

 

今度はもう、みんな、ちゃんと聞いてくれている。

 

「生物としては――裸の状態じゃ、個人じゃ、敵対的な小動物にすら大ケガを負わされる。 走るのだって他の動物に比べたら遅いし、燃費が悪いし、無駄に頭が良いせいで、恐怖だけで勝てるはずの相手に負けることすら、ある」

 

【ハルちゃんにけちょんけちょんにされる快かんんんんん】

【ふぅぅぅぅぅぅ】

【えぇ……】

 

「――でも、この世界で1番に繁栄していて。 他の世界でも、さっきみなさんが戦ったモンスターたちが居てもなんとかやってけてるのは、人類なんです。 言葉を交わして、連携できるから。 どんな種族でも、それができるなら、それが人間なんです」

 

ううん、たとえ言葉は通じなくっても、お互いに意志を汲んで一緒に戦ったりできる。

 

それは――あの地下のダンジョンで、お互いにしゃべれなかった子供たちと僕たちが立証しているんだから。

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