【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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20章 11年前と始原のはじまりin大和の国
493話 僕の奥底に沈んでる記憶 その1


「晴海! 食べているときに本読むのはやめなさいっていつも――」

 

「? これは僕が買った本だから汚しても良いと思うけど」

「そういう意味じゃなくてお行儀の話!」

 

「でもお母さんはテレビ観て食べてるけど」

「テレビは良いの!」

 

「………………………………」

 

僕はぱたりと本を閉じ、お母さんの癇癪が始まる前にごはんに集中することにした。

 

「学校でもそうやってるの? そんなんだからおかしな子って思われて友達が」

「お昼は普通に食べてるし、僕はただにぎやかすぎる人が苦手」

 

「そんな屁理屈ばっかり言ってるから友達が居ないんでしょ!」

 

そんなことないやい。

 

友達は居るよ。

少ないし、みんなぽつぽつとしかしゃべらないけど。

 

でも、脳内で文句を言うだけにした。

 

「………………………………」

 

僕はごはんの味を堪能することに集中することに決めた。

 

「だいたい恥ずかしがってないでそろそろ美容院に……――くんだって、この前会ったら垢抜けて女の子にモテそうな良い子に……」

 

恥ずかしがってなんかないやい。

 

単純にお金がもったいないし、どうせ顔が平凡なんだから無意味だって知ってるんだい。

 

そんな文句を、ごはん粒と一緒に飲み込む。

 

「………………………………」

 

お母さんの言うことに反論したらもっとめんどくさいことになる。

 

そういうことを、中学も2年になる僕は学習した。

さすがにこの歳にもなれば、僕だって理解できる世界の真理だ。

 

「まあまあ、晴海は頭の回転が速すぎるから朝から怒らなくても」

「あなたこそ、小学校のころに外で遊んであげないから……」

 

――「しまったな」。

 

お母さんのご機嫌がそのまま移行するのを知ったお父さんが――一瞬だけちらりとそんな顔をする。

 

「晴海。女の人には口答えしちゃいけないよ。……何? 男女平等なのにどうしてって? 人の浅知恵なんて生物学的な本能には意味もないんだ。男はただ、じっと耐えるだけさ……古今東西、未来永劫ね……」って、そのあとに疲れた顔をするお父さんから学んだんだ。

 

男って大変だね。

女の人ってお得だね。

 

僕も女の子として……いや、人間関係めんどくさそうだし、このままダサい男のままで良いや。

 

 

 

 

平和すぎる世界。

 

剣と魔法の世界でもなく、超能力があるわけでもなく。

 

誰と誰が――少なくとも僕の周りで戦っているわけでもなく、それに巻き込まれることもない。

 

そういうのは妄想の中だけ。

 

「そうならないかな」って妄想するだけ。

「そうはならない」って知ってるからこそ楽しい妄想なんだ。

 

そんな、平和な世界。

将来が決まり切って退屈すぎる世界。

 

そのせいでちょっと息苦しいけども、そのおかげで「平和」っていうなによりも大切な環境を得ている世界。

 

それは、僕にとっては大変に居心地の良いもの。

 

これが外敵っていうのがあった時代なら、男は問答無用で体を鍛えさせられ、理不尽な体育会系たちの下で辛い学生時代を過ごさなければならなかった。

 

そうしたら間違いなく僕は不幸だったはずで、1日じゅう本なんて読んでらんない。

 

だからひとりぼっちで居られる僕は幸福だ。

 

こうして――「なんで友達みんなが持ってるのに欲しいって言わないの! 仲間はずれになっちゃうでしょ!」って、お母さんがある日突然にぷりぷりしながら買ってくれたスマホで、本――電子書籍まで読める。

 

そのときに「この数万円で本を……」って言いかけたらすっごい顔してたから、この魅力的な提案はさすがにやめておいたけども。

 

毎日容赦なく意味のないチャットを飛ばしてきて、それですぐに返さないと怒られるけども。

 

母は強し、女は強し。

男は弱し、息子は弱し。

 

まぁいいよね、図書館に行けばいくらでも本が読めるし借りられるから。

しいていえば毎日持ち帰るのが重いくらいだし。

 

そういう生活してても怒られない――怒られるけれども止められるほどじゃないんだから、僕は幸せだ。

 

いくら鍛えてないからとは言っても、本を限界まで借りて帰る程度の力はある。

 

ちょっと背伸びをすれば、本棚の1番上の本も取れる。

 

一応は男だからね。

今年の身体測定でも男子の平均に近いくらいだったんだ。

 

全てにおいて平均値――より下の、目立たないからこそ、特に干渉されない男だから。

 

そんな朝の通学時間は僕にとって素敵な時間。

 

だってさ、移動中に本が読めるとか嬉しくない?

 

だから僕は、電車でいつも一緒になったりならなかったりする顔見知りの生徒とも、目が会わない限りには知らんぷりをする。

 

まぁ相手だって特段におもしろい話もできない、なにもないメガネ男子なんて相手にしたくはないだろうし。

 

お互いに付かず離れず。

それがお互いの幸せなんだ。

 

 

 

 

「む……」

 

止まった電車の中で幸せだった僕は、振り替え輸送って言葉で幸せじゃなくなった。

 

不幸せだ。

 

不幸だ。

 

僕はくさくさした。

 

僕がいちばん嫌いなのは、僕の時間を奪われることなんだ。

 

「――駅へはこの先のバスで……」

 

とりあえずで同じ制服の男女についてったら、どうやらそういうことらしい。

 

僕は、とぼとぼと歩き出す。

 

バスかぁ……バスは好きじゃないんだよなぁ。

 

電車よりも安定性がないから本を読むのもひと苦労だし……混みすぎたらぼーっと押し潰されないようにつり革に掴まるしかないからヒマだし疲れるし。

 

あと、電車なら酔わないけどもバスだと荒れた道とか荒っぽい運転手さんだととたんに酔うし。

 

そうして駅からちょっと歩いたところにあるバス停――どうやら近距離のバスも一緒に走っているらしい――そこにたどり着いた僕が、ふと、「その子たち」に目を留める。

 

「あの、――ちゃん……」

 

「やだ!」

 

ぺちんっ。

 

「………………………………」

 

黄色い帽子、赤いランドセルに黄色い布な低学年の女の子たちが――グループで登校している中、ひとりがつまはじきにされている。

 

子供って残酷だよね。

 

中学生にもなると――少なくともうちの学校は落ちついてるから――目に見えた仲間はずれはない。

 

いや、女子とか部活をしている人たちのあいだではあるのかもしれないけども、少なくとも教室でぼーっとしてて分かるレベルのものはない。

 

でも、子供は……素直すぎるから。

 

仲間はずれにされている子だって、特段に変なわけじゃ――いや、むしろ一般的には「すごくかわいい」部類なんだろう。

 

けども――人間関係は、美醜だけで決まるものじゃないわけで。

 

「――るるちゃんの近くに居ると、ケガするもん!」

 

「……っ」

 

その声に同調する女の子たち。

 

それに胸をチクリと痛めるも、関係がない以上関わりになることもできず、通り過ぎるしかない周囲の大人たち。

 

………………………………ふむ、なるほど。

 

どうやら涙をうるうるさせてる子の周りで複数のケガ人が、出た。

 

それと子供らしいケンカとで爆発しちゃった。

 

きっと、そういうものなんだろう。

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