【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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494話 僕の奥底に沈んでる記憶 その2

「るるちゃんきらい!」

 

幼い子供たちの甲高い――遠慮なんてない、真っ直ぐすぎる気持ちが「るるちゃん」に向けて放たれる。

 

「そうよ! この前なんて、るるちゃんのお母さんが大ケガしたんでしょ!?」

 

「お父さんもだって!」

「こわーっ」

 

「るるちゃんははんけい5メートルに近づいちゃいけませーん!」

 

ああ、子供らしい意地悪。

 

でもきっと、そうするだけの理由が……この子たちなりの理由が、あるんだろう。

 

「そ、それは……先生は、偶然、だって……」

 

「――ちゃんも――ちゃんも、――くんも! 先月だけで3人もケガしたし、――先生はこの前入院したの! まだ分からないの!?」

 

その女の子は――手を振りほどいたその子は、半分泣きながら怒っている。

 

「近づかないで! ……私も、るるちゃんと一緒に居るだけで嫌われちゃってるんだから!」

 

「……そ、んな……」

 

「………………………………」

 

――バスが、来た。

 

何度か声をかけようと迷っていたらしい同級生の女子も、振り返り振り返り――ごみごみしたバスへ、体を押し込めていく。

 

「………………………………」

 

そうだ。

 

僕たちに、できることなんてない。

 

たまたま車両故障で振り替え輸送になって、たまたまバス停の近くでたまたま通学路に居た小学生たちのケンカを聞いてしまった。

 

ただ、それだけだ。

 

歳も違う、生活圏も違う、知り合いでもなければ――僕は、同性ですらない。

 

なにもかも、完全に他人だ。

 

ここで仲裁に入るなんて、したってただの欺瞞だし――この子たちが今日、登校中の一時しのぎでしかない。

 

確かに、気分は悪い。

 

子供のケンカを、しかも後味悪い系のを見ちゃったんだ。

 

しかも今日はいつも通り早く出たのに、早くてもHRぎりぎりだ。

普段通りじゃない、嫌な朝なんだ。

 

「乗りますか?」

 

振り返ると、バスの運転手さんが僕を見ている。

 

「さっ、行こっ!」

「う、うん……」

 

「ごめんね、るるちゃん……でも……」

「『のろいさま』は、こわいもん……」

 

「……ぐすっ……ぐすっ……るる……るるはぁ……」

 

「………………………………」

 

………………………………。

 

……僕は。

 

「………………………………いえ、行ってください」

 

ぷしゅうう。

 

バスの扉が閉まる。

 

「――――――――――……」

 

最後まで声をかけようか迷っていたその女子と、一瞬だけ目が合う。

 

「………………………………」

 

彼女が、何かを言っている。

 

けどもそれは、ぶろろろと動き出したエンジン音と閉まったドアとでかき消される。

 

だから僕は――苦手だって知ってるからこそ、ちょっと大げさに作り笑いを浮かべる。

 

でもきっと、変な笑い方なんだろうな。

 

僕たち本の虫とかってのは、人とのコミュニケーションが苦手だから。

 

でも。

 

「……るる、わるくないもん……るるがわるいんじゃ……るるのせいじゃ……っ」

 

――さすがに。

 

集団登校の子たちから見捨てられ、スカートを握りしめながら下を向いて泣いてる子を、そのまま放置できるほど。

 

できるほど――僕は、強くないんだ。

 

 

 

 

「……そっか。みんな、ケガしちゃうんだ」

 

「うん……」

 

「るるさ――るるちゃん自身も、いつもケガしてるんだ」

 

「うん……」

 

僕は――生まれて初めて、自主的に遅刻することにした。

 

特に優れたところがないからこそ毎日登校の皆勤賞……は大丈夫だけども、それでも遅刻が体調不良以外で「0」から「1」へと、無から有へ変わる。

 

あーあ。

 

通信簿で「真面目ではありますね。それだけですが」っていう評価をもらうためだけの時間厳守を――初めて、自主的に、自発的に、自意識的に、破った。

 

「『呪い様?』」

 

「うん……」

 

「そっか」

 

僕は、その子――るるちゃんと一緒に、人の行き交う駅前に置いてあるベンチで――なけなしのお小遣いを使わないで買ったお菓子を味わう。

 

知らない女の子、小学生の子を引き留めるのはちょっといろいろと抵抗があったし、今でもある。

 

けども、

 

「優しいねぇ。これ、一緒に食べてね」――そう、お菓子を買おうときに、目の前にあるお店でおばさんが――廃棄か、それとも自分のアルバイト代でから引かれる子供向けのお菓子を手に、言ってくれた。

 

あのおばさんがまだレジに立って――ヒマなときは生暖かい目でこっちを見ているからちょっと恥ずかしいけども、万が一ヘンタイさん扱いされそうになったとしても、きっと擁護してくれる。

 

今どきは中学2年の男子だったとしても痴漢で捕まる時代なんだ。

男の価値は男女平等社会では低いんだ。

 

けども今は大丈夫だし、もしそうじゃなかったとしても……弱い僕は、こうせずにはいられなかっただろうし。

 

だから僕は安心して――泣きながらも一生懸命ほおばってるその子の横に、座っていられるんだ。

 

「……はるは、学校、良いの……?」

 

「今日はちょっと学校がめんどくさいんだ。不良さんなんだ」

「そう……」

 

しゃくりあげながらも、もう涙は止まっている女の子――るるちゃん。

 

ただの、小学生。

ただの、低学年。

 

そんな子が――平凡で平穏な僕とは違って「呪い様」とか呼ばれるくらいの「何か」に取り憑かれている。

 

らしい。

 

「呪いなんてそんな非科学的な」――なんてことを言わないだけの常識はあるし、そんなのは慰めにもならないのはさすがの僕でも分かる。

 

「……怖かったら、るるから離れた方が」

 

「大丈夫。僕、幽霊さんとか怖くないから」

 

「……ほんと?」

「うん」

 

さっきから何度も隣り合う腰を――手と足を使ってずりずりとベンチを横に移動するたびに、僕がよっこいしょと移動。

 

あ、ちゃんとるるちゃんに嫌じゃないかとは聞いたから大丈夫。

 

まぁ本気で嫌だったら逃げてただろうし……違うよね?

 

一応は普通の範囲内の顔のはずだし、昨日もお風呂に入って今朝も顔を洗ったし、服はお母さんが洗ってくれてるから臭くはないはずだし。

 

僕にやましい気持ちは欠片もないからね。

僕は、僕より知的な女の人が好みなんだ。

 

しかもこんなに小さな子になんて、1ミリも感じないから大丈夫。

 

なにより僕は、そんなどうでも良すぎることよりもわくわくしたり知的好奇心をくすぐられる本の方が好きなんだ。

 

ちなみに、こんな感じのことを言ってあげたとき、「……それはそれで……」って複雑そうな顔をしてたのは、さすがは女の子――僕たち男より早熟なんだなって思った。

 

僕が小学校低学年のとき?

 

図書室の本を両手に離さなくってお母さんと先生に怒られてたけど?

 

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